混沌の解読はスズランの香りの声で -2-
どうも霞先生は思ったより面倒くさいタイプのようだった。
今私は、私の人生の中で由来が見つけられないくらいの関心を受けている。
「先生、やります!」
「何を······?」
霞先生は、ぼうぜんとした目で私を見つめた。
いいえ、先生。 今もっと荒唐無稽なのは私です。
「相談です 相談······」
「おぉ!本当? マジで?」
「しきりにそうされると私やりたくなくなりますよ?」
「いや、本当にしてくれるとは思わなかったよ。」
霞先生の目が輝き始めた。
「じゃ一応今日は部員を募集しよう。 一人では自律サークル活動ができないから。 放課後に特別なことないよね?」
「ありませんね。」
「よし。じゃあ部員の募集は先生がやってくれるから、今はとりあえず教室に行こう。」
かすみ先生と教室に入った。
教室の中では、あちこちで集まって、笑顔で騒いでいた。
席に入って座るまで、関心をくれたり先に挨拶をしたりする友達はいなかった。
訳もなく感じられると寂しさの方がもっと親しみを感じそうだ。
私の席には他の友達と騒いでいるある女の子が座っていた。
「あの······」
「あ、ごめんごめん。」
彼女は謝って席をはずした。
気が強そうな子だった。
飾ることに気を使うというのが派手なイヤリングと爪が見せてくれるようだった。
人 が言う「ギャル」というものだろうか。
私が席に着くと、霞先生は話し出した。
大したことのない、学校生活に関する色々な情報だった。
そうして昨日と変わらない朝会の時間が終わったようだった。
「あ、そして、去年までいた相談教師が今年でうちの学校を離れることになりました。」
「ええ??本当ですか??」
「あの先生、たまに私たちにお菓子もくれたじゃん。」
「私、相談してみたけど、すごく面白い人だったの。」
「なんか寂しいな······」
あちこちから残念な気持ちを表す一言が聞こえてきた。
会ったことはないけど、かなりいい人のようだった。
「そして、新しく相談教室の空席を埋めてくれる人はなんと! うちのクラスの心紀さんが担当することになりました!」
······?
何か非常に間違っているようだった。
教室は一瞬沈黙に包まれていたが、私の頭の中は混乱との摩擦でどんな時より騒がしかった。
刹那の沈黙の後、頭の騒音と教室の友達の声が混ざり始めて、その瞬間の私は頭をつかまれるしかなかった。
「本当ですか?!」
「心紀さん、すごい!」
「私あの子と一度も話したことないね······」
「私も。」
クラスメイトたちの興奮のこもった好奇心に押されて困っていたとき、霞先生は私のことを気遣ってくれたのか、みんなの視線を自分に向けた。
「さぁさぁ、あんまり一度に質問するとみのりちゃんが困るから、知りたいことは後で個人的に聞いて、相談教室は自律サークルの形で運営される予定です。部員が一人ではいけないので、相談教室の掃除と片付けを手伝ってくれる部員が必要ですが、できる人はいますか?」
教室は再び沈黙に包まれた。
私以外のみんなは顔を上げてお互いの顔色をうかがっていた。
「先生、私がしたいです!」
両目がぱっちりと開いた。
一瞬、私は私の耳を疑った。
「よし。じゃ、ユキちゃん以外にもっとやりたい人は?」
······
「もういないようですから後にでもしたい人は別に言ってください。 それでは今日一日も頑張りましょう!」
霞先生が出て行って、クラスのみんなは各自の日常に戻った。
私の名前が1、2回は聞こえたりもしたが、私という人や相談教室に大きな関心を持つ人はいないようだった。
朝からショックを受けた精神を落ち着かせている途中、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「心紀さん!」
「ん······?」
「心紀さんだよね······?私、白銀ユキ。ユキって呼んでね。これからよろしく!」
「あ、うん。よろしく。」
ユキが差し出した手をぎこちなく取りながら答えた。
「みんな席に座りましょう。」
「あ!もう1時間目なんだ。」
ユキはすばやく席に戻った。
本当にあんなに先に手を出して挨拶してくる友達がいるんだなと思った。
1時間目が終わって、ユキはすぐ私のところにやってきた。
「あの, 私は何を手伝ってあげればいいかな。」
「一応今日は時間の多い昼休みと放課後を活用して相談教室整理からしようと思う。」
「じゃ、それまでに相談教室ってベールに包まれた部屋になるんだね!」
「ベールに包まれたと表現すればいいのか分からないけど···ユキちゃんは行ったことないの?」
「私は悩みなどはあまりないよ。」
確かにユキは悩みとか心配とかは距離があるように見えた。
「みのりんは?」
「みのりん······?」
「心紀ちゃんだから、みのりん! 可愛くない?」
「そう呼ばれるのは初めてだね。」
「みのりんは悩みないの?」
「······」
体の傷なら誰にでも同じように見えるが、心の傷はそうではない。
他人の心に共感する形態は皆それぞれだからだ。
「言いにくいことなら、言わなくても大丈夫よ。」
「······うん、ありがとう。」
些細なことだけど暖かい配慮だった。
休み時間ごとにユキは私のところにやってきた。
初対面の人との会話を上手にやっていくのが私には不思議なばかりだった。
そうやって昼休みが近づいてきた。
私がコンビニで買ってきたサンドイッチを食べ終わった頃、ユキはいつにも増してきらめく目で私のところにやってきた。
「よし! それでは相談教室にレッツゴー!」
私たちは遠足に行くのではないと言いたかったが、ただユキの明るい姿に苦笑するだけだった。
ユキと私は相談教室に入った。
相談教室は整理が必要そうには見えなかった。
本棚にはさまざまな心理学や社会学に関する本が並べられていた。
それほど広くない教室の中央には、向かい合って座れる机が2組ついていた。
このほかにも浄水器、本棚の反対側の棚には様々なボードゲームが置かれていた。
「別に整理するものはなさそうだから、机と棚のほこりだけしょくしよう。 私は本棚を預かるから、ユキちゃんはボードゲームのある棚を預かってくれ。」
「ユキでいいよ。」
「あ、うん······ユキ。」
ユキは返事もなくわたしを見上げて微笑んだ。
『ユキの笑顔はとてもきれいだね。』言いたかったけど何か恥ずかしかった。
私とユキは静かにほこりを拭いていた。
「みのりん?終わったの?」
「あ、うん。ほとんど終わったよ。」
正直相談教師もなしに生徒が運営する相談教室に来る人がいるかと思ったが、ちゃんとしなければユキの情熱に失礼なことのようだった。
掃除を終えて、無事に残った授業を仕上げた。
「今日から始まるんですか?」
授業がすべて終わった後、すぐ職員室に向かった。
「今日は初日だから帰って休んで、明日から昼休みと放課後6時半まで相談教室にいればいいよ。私のために時間を空けるとかじゃないよね?」
「どうせ家ですることもないです。」
「やー。正直すぐにしてくれるとは思わなかった。 本当にありがとう!」
「誰かに感謝を受けたのも久しぶりですね。」
「おまえは年が何歳なのにもうそういうふうに話してるんだよ······」
「では、お先に失礼します。」
「はい。」
霞先生のささやかな感謝もまた、むなしい私の心の片隅に落ち着いた小さな光のように感じられた。
職員室の外でユキが待っていた。
「楽しみだよね?」
「なにが?」
「みのりんが友達の悩みを解決する素敵な姿が!」
「え······」
ユキは他人にも自分自身に接するように肯定的なようだった。
ユキの純粋な期待は, 私には負担になったりもした。
「······どうしたの?」
「うん?」
「顔色がすごく悪いみたいだけど、どこか痛いの?」
「······いや、大丈夫。」
「······?」
「ただ······ 私がうまくできるかどうかがわからなくてさ。 初対面の人に接するのも下手だし、本人の問題も解決できないのに、他人の問題を解決することが可能かどうか分からないな。」
相談しなければならない人が今にも相談を受けなければならないような姿ばかり見せて、なんとなく情けないと思った。
「心紀ならできるよ。」
「······?」
「うむ······まだ心紀に会ったばかりだけど、心紀ならできると思う。」
「······うん、ありがとう。」
「では、また明日!」
ユキはもう一度ほほえみながらわき道で歩いた。
ユキの白いおかっぱに夕焼けが照らされた姿は、まるで一輪の花のようだった。
反対側に回り、私も家に帰ろうとした瞬間、
「みのりんー!」
遠くからユキの声が聞こえてきた。
振り向くと、ユキが私のほうに走ってきていた。
「どうしたの?」
「連絡先交換しようって言い忘れてた!」
「ありがとう~!」
ユキはまた一目散に走り去った。
日が暮れて昇る月の中に走っていくようだった。
瞬間、視界が曇って頭が痛くなるのが感じられた。
「くそ······!」
頭を抱えたままよろよろしながら家に走り出した。
夢中で家のドアを開けて入ったあと、水道の水をコップに受け、部屋の机の上にある薬筒をふるう手で取って薬を払い落として、水と一緒に口の中に打ち込んだ。
足の力が抜けて、そのまま床に倒れるように座り込んでベッドにもたれた。
最近になって、抗うつ剤の禁断症状が現れる頻度がさらに多くなった。
「一日も続かなかったのにこんなざまはないでしょ······」
意味のない身の上の嘆きを漏らしながら頭を抱えた。
ある程度落ち着いた後、熱いお湯に身を任せた。
風呂上がりに、さっき飲まなかった睡眠薬を服用した。
睡眠薬は一日を振り返る暇も与えずに、すぐに私のまぶたを重くした。
ただ暖かい涙が流れ出てくるという感覚だけが感じられて、眠りについた。
本格的に相談教室教室で働くようになった初日が始まった。
昼休みになって、相談教室で本を読みながら待っている私にノックの音が聞こえてきた。
「どんな用件で相談教室に来たの?」
「あ······あの、それが······」
「何があったのか、言いにくいことかな?」
「······」
揺れる瞳から、気楽に口を開くことはできないが助けを求める姿が鮮明に見えた。
私は縮こまっている体を後ろからかばってやった。
「大丈夫。私を信じて。」




