光皇連の実状
皇都レブナでは緊急的な軍事会議が開かれていた。ただし、会議とはいってもカザイン光皇の王座前に、全員が俯きひれ伏すという異様な光景である。
「……とまあ、偵察は失敗に終わりました」
ハニエム皇連軍総統からの報告。この場には連軍を代表する者たちやカザイン光皇に忠誠を誓う星院家がいたけれど、彼らは視線を合わせることすら許されず下を向いたままだ。
「ハニエム、貴様は太陽人が臆病であると話していなかったか? それがどうだ? 此度は光皇路を抜けて来ただけでなく、光皇路の艦隊が全滅だと? この失態をどう償うつもりだ?」
口調はまだ穏やかであったが、光皇が怒り心頭であるのは誰もが理解した。報告に偽りがあっただなんて、受け入れられるはずがないのだ。
「申し訳ございません。編成は戦死したパザッキ連士長の独断でありましたから。彼は光皇路を誰よりも知る者でした。従いまして私は任せておったのです。ですが、その彼も光皇の元へと還りました。力及ばず申し訳ございません……」
「太陽人が新たな基地を建造したとの話は事実なのか? 悠長にしておる暇はないだろう? 貴様は即座にレブナを発ち光皇路へと向かうがよい」
「お待ちください! 私は連軍の総指揮を司っております。編成から戦術まで一切合切を! カザイン光皇を煩わせるつもりは一切ございません! どうか今一度、名誉挽回の機会をお与えください!」
ハニエムはどうにかして光皇路行きを回避しようと思うも、カザイン光皇は首を振るだけでそれを却下とした。
「以降は自立機の生産を止めろ。有人機のみを生産し、戦線へ投入せよ。陣頭指揮はハニエムに一任する。推進型アルバが完成したのだろう? 貴様が乗艦し、光皇路で指揮を執れ。いち早くエザルバイワを局地司令官とできるように行動してゆくのだ。もう二度と弁明など口にするな!」
強く命じられハニエムは了承するしかなかった。ここまで光皇の命令に素直に応じてきた彼も今回ばかりは不満を覚えている。
以降はカザイン光皇の独壇場となった。無理難題を押し付けるだけであり、誰もが困惑している。
早々に退出を命じられたハニエム。足取り重く部下と共に司令室へと向かう。
「総統、やはり我々は光皇路に?」
「グアン、仕方なかろう? 老いぼれていようと光皇なのだ。そろそろ潮時かもしれん」
不穏な話を始めるハニエムは小さく溜め息をついた。光皇に尽くした何十年という期間。自己保身のためではあったけれど、彼としてはでき得る限りのことをしたのだ。だというのに現状は左遷にも似た通告を受ける羽目に。
「それでしたら吉報とも言える話題がございます……」
グアンはハニエムの右腕であり、カザイン光皇に対するデリナの位置付けに近い人物であった。
「どうやらへーゼン星院家が造反する準備をしているそうです……」
定かではない情報であったけれど、グアンは知り得たことをハニエムに伝えた。
少し考えるようにしたハニエムだが、小さく頷いている。
「そういえばへーゼン星院家にはまだ皇子がいるな?」
「はい、リィズ・へーゼン第二皇子はレブナに幽閉されることなく逃げ延びたと聞いております」
「ならば調査しておけ。もうカザイン光皇家は終わりだ。エザルバイワは私が処分しよう」
「仰せの通りに。ハニエム様であれば光皇連を必ずや救ってくれると確信しております。速やかに調査し、お伝え致しますので……」
悪意のある笑みを浮かべながらハニエムは頷いた。優秀な部下を持ったと満足そうである。
「調査と並行して光皇選の準備を始めろ。情報戦は得意であろう? カザインに与する星院家を揺さぶってやるだけでいい。言わずとも分かっているな?」
「もちろんでございます。確かカザイン光皇は体調が優れておらぬご様子でしたね?」
「ああ、その通りだ。残念だが体力的な問題があられる……」
厳戒態勢を敷く皇都レブナだが、暗躍する陰があった。内部に不穏な動きを見せる者がいるなど光皇であっても考えなかったことだろう。
薄暗い通路に二人の笑い声が響いていた……。
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