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Solomon's Gate  作者: さかもり
第四章 母なる星 
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決意

 辺境惑星ガリアの軌道上に浮かぶ幾つかのアルバ群。避難期間中は最低限の人員すら配置されていなかったのだが、今では一億近い人数が居住している。その全てが惑星ゼクスより連れ出されたリグルナム星院家の領民であり、連軍による監視から逃れていた。


「それで皇都レブナの戦力は如何ほどなんだ?」


 ベゼラが聞いた。彼は連軍に不信感を抱いており、銀河間戦争に得るものはないと結論づけている。加えて政権を握るカザイン光皇を玉座より引き摺り降ろす必要があるとも。


「大戦に出撃した兵は主にリグルナム家とヘーゼン家の私兵ですからね。カザイン光皇家は少しも私兵を出しておりません。大編隊を組んだ前回の戦いもゼクスの民を付け焼き刃的に訓練したパイロットでしたし……」


 マルキスが答えた。カザイン光皇の狙いは明らかであったが、光皇の命令であれば、星院家は出兵させるしかない。結果としてレブナに攻め入る戦力を失っていた。


「それではこの機密文書を公開するのは可能か?」


「可能でありますが、リスクしかありません。ゼクスには決起するだけの力は残っていませんし、協力を得られそうなヘーゼン星院家もこちらと同じような状況です。我らの活動に皇家が気付くなどあってはなりません。テグル皇爵や奥様、それにソレイラ様までもがレブナに幽閉されておりますから……」


 問題は人質であった。もしもベゼラが生きていると分かり、反乱を企てているのが見つかってしまえば囚われているテグル皇爵を始め、星院家の全員が罰せられてしまうだろう。


 ベゼラは長い息を吐く。常に先手を打っていたのはカザイン光皇である。他の星院家は出遅れた格好であって、完全に騙されていたのだ。気付けば身動きできない状況となっている。


「マルキス、架空の識別番号を入手できるか?」


 何やら穏やかではない話をベゼラが始めた。識別番号は全臣民に割り振られているもので、それには生まれから学業成績まで全ての個人データが紐付けされている。


 マルキスは眉根を寄せた。不可解なベゼラの話に。


「殿下、何をなさるおつもりです……?」

「良いから答えろ。用意できるのかできないのか?」


 命令されては答えぬわけにはならない。やや不満げな顔をしつつも、マルキスは頷いている。


「できなくはありません。環境悪化が著しいゼクスでは行方不明者が大勢出ています。ですので都合の良い認識番号は簡単に見つかるでしょう。管理AIのデータベースに干渉できれば、手を加えることも可能です……」


「ならば上手くやってくれ。名前も身分も任せる。どうせ私はいないはずの人間。全てを受け入れるつもりだ……」


 ベゼラの覚悟はマルキスにも理解できた。しかし、国を背負うはずの彼が身を落とすことになるなんて我慢ならない。


「何をなさるおつもりでしょうか? 理由に納得するまで了承はできかねます……」


 恐る恐る聞く。偽の識別番号を用意させるのはなぜか。これから決起しようという彼が、どうして身分を偽るのかと。


 小さく笑みを浮かべたのはベゼラである。しかし、察しの悪さを笑ったわけではない。


「太陽人と接触する――――」


 マルキスは絶句していた。どう考えれば、そのような結論に至るのか分からない。明らかに敵対している彼らと接触するなど危険極まりない行動である。


「正気ですか? 相手は異星人ですよ?」


「反乱を起こせるほど兵がいないのだ。機密文書にはずっと和平を申し出ていた記録がある。きっと発表されたような好戦的生命体ではない。兵力が足りないのであれば、彼らの協力を取り付けるだけ。光皇路とガリアの両面から光皇家を追い込んでいく……」


 凛とした表情をするベゼラにマルキスは決意を見ていた。だが、本当にできるのかどうか不明だ。彼は光皇民に残された最後の希望。危険な任務に就くべき人ではない。


「何もベゼラ殿下が直接動かずとも……」


「私が動かずしてどうする? 上層部は私が死んだと考えているし、民間に私を知る者は少ない。それに太陽人への誠意でもある。必ずや説得しなければならんのだ。他人の手に委ねるつもりはない」


 どうやら決意のほどは変わらないらしい。溜め息を漏らすマルキスには頑固な皇子様を説得する材料がなかった。


「しかし、どうやって光皇路を越えるのです? あそこにはまだ艦隊が配置されたままですよ?」


「だから識別番号を用意するのだ。私は再び連軍へと入る。光皇路に配備されるや、戦闘機を奪い光皇路を越えるつもりだ……」


 ベゼラの計画は誰かになりすまし兵士になること。隙を見て光皇路を突破するつもりのようである。


「本気ですか?」

「冗談なら良かったのだがな。マルキス、太陽人の言語について調べてくれ。彼らの通信網についても……」


 一刻も早く動き出さねばならない。家族や臣民のため。光皇連の未来をベゼラは担っている。


 準備に取りかかるのかベゼラは部屋を出て行く。迷いなど彼には少しもなかった。大勢を救うためであるのならば、身の危険など些細な問題であると……。

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