戦争の裏側
皇都レブナにあるカザイン光皇の居城。豪華絢爛な一室に二つの影があった。
一人はカザイン光皇であり、跪くのはハニエム皇連軍総統である。
「ハニエムよ、それで次戦はいつになる? ゼクスの民を生かすのには金がかかりすぎる。早う数を減らせ……」
星院家の領民は運良くアルバに移住できた者もいるが、基本的にゼクスを居住地としていた人民は惑星に閉じ込められたままである。既に移住要請も却下されており、アルバから届く支援物資がなければ、彼らは生き残ることすら叶わない。
「そうは仰られても、まだ戦力が整っておりません。自立機だけでなく有人機も前回に及ばぬ数であります。必ず勝利せよと仰るのでしたら時期尚早かと……」
色よい返事はなかった。二戦続けての敗戦を喫したハニエムは次戦の結果を進退問題だと考えているようだ。
「あれから随分と経つ。生産ラインは何をやっているのだ?」
「申し訳ございません。私の管轄外でありますが、着手すべき問題が多すぎるようです。特に問題となっておるのは生産ラインの確保であります。新たなアルバの建造も並行しておるために計画通りには運ばないらしいのです。加えて現存のアルバを戦艦化するプロジェクトまであるのですからどうしようもありません」
宇宙空間における恒星エネルギーの効率性は群を抜いており、それを失った彼らは窮地に立たされている。ブラックホールからのエネルギー抽出を考えていたから尚更であった。
現在は前時代的な原子核反応による発電設備をフル稼働し、最低限のエネルギーは確保できた。しかし、それでも惑星ゼクスを救う手段はなく、限られたアルバ内で彼らは全てを処理しなければならない。
また人類が思わぬ抵抗を見せたのも誤算であった。二度に亘る交戦はいずれも敗北している。未だに戦闘機の生産ラインに場所を取られている彼らは必要なものすら製造できないでいた。
「掃いて捨てるほど人員はいるというのに歯がゆいものだ。とにかく人員を消費せよ。劣悪な環境に長くおれば、それだけ反感を生むだろう。少しでも減らせるのなら減らしておけ」
「ならば手配致します。恐らく準備に数週間かかるでしょう。また進軍は戦果を期待しないということでよろしいですか? 今の条件では勝利など望めません」
「勝敗は問わぬ。余が戦えと言っておるのだ。ゼクスの人民が死に絶える前に交戦を始めよ。太陽人に時間を与えるよりも、攻め続けることだ……」
ハニエムは静かに頷いている。勝敗が問われないのであれば、命令に背く必要などない。前線で戦うものは価値のない人民。放っておけば死に絶えるだけの者たちである。
「承知しました。であれば、エザルバイワ皇子の出撃は先送りでよろしいのですね?」
「当然そうなる。勝てる見込みがある戦いにのみエザルバイワを出撃させろ。それ以外は認めん。戦果は全てエザルバイワに。前哨戦にはゼクスの民を使え……」
カザイン光皇はあくまで臣民の数を減らす方針のよう。国力の低下よりも地位を盤石とするために動いている。彼には長期的な戦略などないように思えた。
「直ぐさま交戦の準備に取りかかります……」
残念ながら進言する家臣がカザイン光皇にはいない。しかし、それは自業自得であるとも言えた。彼を取り巻くのは首を縦に振る者しか選ばれていないのだから……。
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