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Solomon's Gate  作者: さかもり
第四章 母なる星 
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初めての交戦

 数分後、ドックにグレックの大声が響き渡る。いち早く着替え終えた彼は整備士のファーガスに整備具合を確認しているらしい。


「なんと、新人を連れて行くのか? 上級曹長の機体はセッティングし終わっておるが、ルーキーの機体は登録が済んだだけだぞ? 複雑なAI機動はできん」


「飛べるんだったら構わないですよ……」


 ここで着替え終えた三人が戻ってくる。大声で交わされる会話の内容は聞くつもりがなくても耳に届いてしまう。


 フィオナは一歩前に出た。整備がまだであれば、出撃を回避できるのではないかと。


「グレック大尉、あたしは……」


 辞退を申し出ようとしたそのとき、


「何も問題ありません。どうせ何もできない。職場見学のようなものですから……」

「ああ、そういうことか。ならば出られるぞ。エネルギー充填は完了しておる」


 言葉を飲み込むフィオナ。期待されての出撃ではないと知らされてしまう。職場見学だなんて馬鹿にされている。何もできないと断言するなど、フィオナには認められない話だ。


「大尉、早く出撃しましょう!」


 フィオナは怒りに任せて言い放つ。こうなったら自分の目で見極めようと。偉そうな上官の腕前。自身は後衛機であるし、いざとなれば戦線離脱も可能だ。それに言われたままでは癪に障る。少しくらいは見せ場を作ってやろうと思う。


「全機搭乗しろ!」


 グレックの号令により各機にパイロットが乗り込んでいく。これより未認証機群の殲滅任務へと赴くのだ。


『ハッチオープン、ハンター隊出撃してください』


『ハンター・ワン了解、濃いめのコーヒーでも用意しておいてくれ……』

『はいはーい! 私の儲けで買った高級品を淹れておきまーす!』


『余計な事をいうな。出撃する!』


 グレックとシエラの通信にフィオナは眉根を寄せた。これから未認証機との交戦が待っているかもしれないというのに、まるで悲壮感がなかったからだ。寧ろおつかいに行くかのような軽い雰囲気である。


 宙域に飛び出すと、直ちに超高速航行モードへの移行指示があり、フィオナは命令通りにモード移行をする。宙間航行機ならではの機動も既に習得済み。卒業式の出席を取り消してまで練習した成果である。


 しばらく進むとレーダーに反応が現れた。アンノウンと表示された八機の反応がメインモニターに映し出されている。


「これが……敵なの?」


 ゴクリと唾を飲むと、グレックの声がコックピットに届いた。


『未認証機に告ぐ。直ちに宙域管理局へと向かえ。以降の忠告はない。応答するか進路を変えぬのなら覚悟することだ……』


 とても民間機に通信しているとは思えない内容。彼らはまだ宇宙海賊であるとは決まっていないはずなのに。


『全機、戦闘態勢。交戦が決定した……』


「えっ!? 嘘でしょ!?」


 まだ通達から十秒しか経っていない。けれど、隊長であるグレックは戦闘指示を出している。


『ハンター・シックス、お前は俺についてくるだけでいい。できるな?』


 戸惑うフィオナに通信があった。まだ現状の把握すらできていないというのに、次の指示なんて考えられない。


「あたし……」

『死にたいのなら好きにしろ。生き残りたいのなら、俺の機体を見失わないことだ。いくぞ!』


 グレックが声を上げた瞬間のこと、未認証機群が反転する。宙域管理局方面へと向かうことなく彼らはハンター隊へと向き直っていた。


「えええ!?」


 いきなりビーム砲が直ぐ脇を抜けていく。まだ距離があったというのに未認証機群は躊躇なく撃ち放っていた。


『バゴスさんはSW方向から。俺たちはUEから切り込む!』

『了解じゃ!』


 瞬く間に宙域が戦場となった。フィオナは呆然とし操縦桿を握っている感覚すら失ってしまう。


『フィオナ、しっかりしろ! 死ぬぞ!』


 大声により一応は意識を保つ。こんな今も飛び交うビーム砲にフィオナはスロットルを踏み込めない。


『クソ! バゴスさんはフィオナのフォローを頼む! マイは俺につけろ!』


 急な方針転換となっている。動けないパイロットが出てしまってはどうしようもなかった。


 即座に隊列の変更がなされ、グレックとマイが未認証機群へと向かう。


『落ちろっ!』


 的確なグレックの一撃は一機を行動不能とする。隊長である彼は立場に似合った戦果を上げていた。


『US02及びUS08フォローします!』

『US07シュートだ!』


 淡々と進んでいく。フィオナを余所に戦局は足早に転換していった。八機あった未認証機群は瞬く間に数を減らしている。


 気付けば未認証機はあと一機。それも既にグレックが後方を取っていた。次にシュートとの掛け声が届けば、この任務は完遂となる。


「どうやれば……戦えるの……?」


 今もフィオナは第三者のように客観的な視線で交戦を眺めるだけ。彼女は該当宙域に存在しており、交戦の当事者であったというのに……。

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