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Solomon's Gate  作者: さかもり
第二章 星系を守護する者たち
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大戦の爪痕

 敵機の殲滅を任された航宙機部隊はゲートより進入したほぼ全てを撃墜していた。


 最前線に陣取る第三航宙戦団第一隊【301小隊】も例に漏れず、任務をほぼ完遂している。


「アイリス隊長、エリア内の敵機はあと二機です!」

「ジュリア、急ぐ場面じゃない! 艦船はまだ生きているぞ! 深追いするな!」


 圧倒的な戦果を収めていたのは隊長であるアイリス・マックイーン。最も敵影の濃い中央エリアを担当していたにもかかわらず、301小隊は後方に敵機を逃していない。被害がないわけでもなかったが、エース部隊と呼ばれるに相応しい戦果を上げている。


「大丈夫です! この敵機だけでも!」


 姉であるアイリスの警告にジュリアは勇ましく答えた。だが、彼の戦果は正直に芳しくない。アイリスの支援機を務めていたこともあって撃墜数は隊員の中でも極端に少なかった。


 ジュリアは少しでも撃墜数を稼ごうというのか、隊列を乱し残存航宙機の排除へと向かう。濛々と粉塵を上げる艦船の脇を抜け、ジュリアはようやく敵機を照準に捕らえた。


「もらったぁぁっ!!」


 ジュリアが叫んだその刹那、突如として艦船が爆散する。放射状に破片を撒き散らしながら、周辺に存在した全てを巻き込む大爆発を起こした。


 全員が息を呑んだ。それは誰も予想できなかった絶望的な場面に違いない。しかし、そのような状況であっても声を上げる者がいた。


「ジュリアァァアアア!!」


 声の主は姉であるアイリス・マックイーンだった。声の限りに叫んだ彼女はジュリアの無事を疑っていない。なぜならレーダーを確認する限り、ジュリアの機体はまだ反応を残している。確実に巻き込まれたはずであるが、【3SP25】という機体反応は消失していない。


「ベイル、指揮を執れ! 私はジュリアと合流する。一旦引いていろ!」

「了解です!」


 戦局がほぼ決定した場面であったはず。残念ながら、すんなりとは終わらなかった。

 アイリスは直ぐさま回頭しジュリア機の元へと急ぐ。


「ジュリア、応答しろ!」


 通信するも返事はなかった。気を失っているのか、或いは通信機が壊れたのか。最悪の想定まで覚悟する必要があった。


「チッ……」


 既に大勢は決しており機体回収には何の問題もなかったはずであるが、アイリスの表情が曇る。

 アイリスは見逃さなかった。ジュリアを挟んだ向こう側に最後の敵機が潜んでいたこと。加えて、その無人機がジュリア機の方に旋回しようとしていることを。


 幾ばくも時間が残されていない事実をアイリスは知った。


「直ぐ行く! 諦めるなっ!!」


 ジュリアの機体は目と鼻の先であったけれど状況は厳しい。一刻を争う事態であったというのに、アイリスの位置からではジュリアが邪魔になり狙撃できなかったのだ。撃墜するにはジュリアよりも前に出る必要がある。


「間に合えぇぇえええっ!!」


 全開機動のアイリスはジュリアの機体ギリギリを通過すると、すれ違った瞬間にビーム砲を放つ。

 その攻撃は敵機よりも少しだけ早かった。アイリスの繰り出した正確な射撃は外れることなく敵機を撃ち抜いている。


「あぁああぁぁっっ!!」


 だがしかし、どういうわけか隊の通信に届いたのはアイリスの叫声だった。敵機は視界の先で爆散しており、二人は助かったはずなのに。


 刹那に全隊員が理由を知らされていた。ジュリア機に近いところ。アイリスの進路であった場所に爆発痕が残されていることを……。


 アイリスと敵機がビーム射撃を放ったのはほぼ同時。初めからそれを狙っていたかのように、アイリスは敵機との間へ割って入り、身代わりとなるべく機体にビーム砲を受けていた。


「た、隊長とジュリアの救出に向かう! 三班・四班は周囲の警護を頼む!」


 指揮を任されていたベイルが慌てて指示を出す。


 アイリスの機体は左側が完全に失われていたものの、辛うじて爆散を免れていた。しかし、それはSBF推進装置が無事であっただけであり、機体は原形を残さぬほど大破している。ベイルが通信を試みるもアイリスからの応答はなかった……。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 初の銀河間戦争はGUNSが圧倒的勝利を収めた。これには太陽系に生きる全ての人間が歓喜し、胸を撫で下ろしたことだろう。


 ただGUNSはエースを失うことになった。緊急手術にてアイリスは命を取り留めたけれど、早期に復帰できるような怪我ではない。戦争が始まったばかりだというのに、GUNSのエースは戦列を離れることになってしまう。


 大多数が喜びに沸き返る中、隊長を失った第三航宙戦団第一隊は全員が浮かない表情をしている。彼らにとって快勝とはいえない苦々しい初陣となった。

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