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Solomon's Gate  作者: さかもり
最終章 未来へ
221/226

終戦宣言

 いよいよ終戦宣言が出されようとしている。


 皇都レブナにある光宮殿。ミハルは皇族が儀式に使用する伝統衣装を身に纏って、謁見の間へと招かれていた。


 当初はデミトリー総長のも演説する予定だったのだが、移動を待っているとかなりの日数がかかってしまう。ベゼラの要請によってゼクスの人命救助を最優先としたため、到着を待つことなく軍部主導で終結宣言が行われることになっている。


「司令、デミトリー総長の不在は残念ですが、仕方ありませんね……」


「そうだな。しかし、太陽系のトップが顔を出すことで、真意がねじ曲がって伝わる可能性もある。我々は迅速且つ適切に終結宣言するだけだ」


 GUNSはしばらく全ての領土を支配することにした。当然のこと星系の代表であるデミトリーは出席すべきであったのだが、それは後日改めて行うことになっている。


「クェンティン司令、電波接続が全て完了しました」


 今この瞬間、光皇連に属する全ての居住地に映像が繋がった。

 ベゼラの電波ジャックの折りとは異なり、歯抜けはない。あらゆる場所で強制的に流される映像であり、光皇連の民は嫌でも敗戦を知らされることになる。


「始めようか……」


 言ってクェンティンとアーチボルトはカメラが設置された前へと歩む。


 もう既に受信側では大騒動となっているかもしれない。なぜならカザイン光皇は太陽人を野蛮人だと伝えていたからだ。


「私はクェンティン・マクダウェル。太陽系の代表ではないが、銀河間戦争の責任者である。よって代表に代わって、終戦宣言を行いたい。二年にも及ぶ銀河を跨いだ戦いは我らGUNSの勝利に終わった。カザイン光皇は捕らえており、子息や縁者もまた拘束している」


 まずは現状の報告から。戦争が終わったこと、太陽系側の勝利に終わったことについて。


「二つの星系が繋がった顛末は悲劇しか生み出さなかった。我々GUNSは星系が繋がった当初から、支援を申し出ていたのだ。しかし、戦犯者ダグマ・レブ・カザインは我々を好戦的な野蛮人として伝え、戦争を選んだ。我らの恒星を奪い取るために」


 どこまで信用されるのか分からない。けれども、誇張することなく真実のみを伝えるようにしている。


「我らは開戦から一年以上も侵攻をしなかった。それを好機と捉えたのか、カザインは侵攻を続けたのだ。我らとていつまでも守勢に回るだけではないというのに」


 クェンティンの話が続く。二年にも及ぶ顛末を正確にゆっくりと伝えていた。


「我々がワームホールを越えたのは戦争の転換点となった。ここから我らGUNは攻勢をしかけ、今に至っている。しかし、ただ戦争が終わったわけではない。多大な犠牲を生み出した代償を光皇連は支払わねばならない」


 最後にクェンティンは光皇連の責任を口にした。

 攻め込んだ側であり、敗者でもある光皇連は如何なる賠償にも応じなければならないのだと。


「私の話は以上だ。戦争の賠償については既に調印を終えている。我らはこの地を治めることになるが、代理を立てるつもりなのだ。彼の話をよく聞いて、個々が正しい判断をして欲しい」


 言ってクェンティンが下がり、代わってベゼラがカメラの前へと立つ。

 無精髭は綺麗に剃られ、光皇家の正装をしている。誰の目にも新たな光皇に見えたことだろう。


「私はリグルナム星院家の当主となったベゼラ・リグルナム。開戦当初、私は自爆機に乗せられた。ヘーゼン星院家のクウィズもまた同様だ。しかし、自爆機との情報を得た忠臣によって私たちは難を逃れている。けれど、私たちの代わりに忠臣たちは宇宙の塵となってしまった……」


 ベゼラは自身に起きた話から始めていた。如何にカザイン光皇が策を練っていたのか。非道な策略を実行していたのかを。


「同じように失われた難民たちも多数存在する。ダグマ・レブ・カザインは権力維持のためだけに戦争をし、弱者を使っては食い扶持を減らしていたのだ。許すべきでない暴挙。私は後日、彼とその家族、加えて支援者の全てを処刑するとここに宣言する」


 聴衆の反応が直に分からない部屋。支持されているかどうか不明であったけれど、彼は思いの丈を告げている。


「死んだことになった私は太陽系の人たちに助けを求めた。ダグマ・レブ・カザインを討つしか、光皇連を救う方法がなかったからだ。彼らはしばらくこの地を支配することになる。だが、安心して欲しい。GUNSの人々はとても理性的であるし、好戦的ではない。これは私が星院家の皇子であったからではなく、捕虜となった経験のある者が全員同じ事を口にしているのだ。現状の階級制度を廃止し、正しい方向に光皇連が向き直るまで支援と支配を続けることになっている」


 ベゼラの役目はスムーズな政権交代である。GUNS主導で行われるそれに不満が噴出しないように。


「私はGUNSの協力を得て、しばらく光皇連の代表として職務に就く予定だ。まず最初に行うことは貴族の全財産を没収し、等しく富を分配すること。本来ならGUNSの賠償となる金であるが、支援に使うことを了承してもらっている」


 勝者側になったリグルナム星院家も例外ではない。ベゼラは全貴族から財産を没収し、復興支援に充てる旨を伝えている。


「我らは生まれ変わろう。光皇が消失したこと。異星系へと繋がったのは戦うためではない。我ら光皇の子は新星系の人たちと共に歩むべきだ。光皇はそれを望んでいるだろう」


 裸一貫での出直し。やはり縋るべきは恒星信仰となる。宗教は好戦的にもなるし、我慢を促すことにもなるのだと。


「最後に、我らは手を取り合っていく。隣り合う星系に住む人だ。どうか受け入れて欲しい。本来なら我らは全員が処刑されてもおかしくない状況なのだ。GUNSの寛容な処置により、我らは我らであることができる。感謝はしても、怒りを覚えるのは間違っている。全てを受け入れ、我々は再興するため立ち上がるべきだ」


 ベゼラは訴えていた。自分にできることは復興の旗印となること。もう二度と星系を揺るがすような事態は起こしてはならない。だからこそ、受け入れることだけを望んでいる。


「次に話をする人は私の憧れだ。彼女は私が太陽系に向かった折り、最初に接した女性であり、とても素敵な人。是非とも彼女の話を聞いて欲しい。一般人であり、戦闘機パイロットであるけれど、彼女は戦争に反対であったし、やるべきことをこなしただけ。きっと彼女は世界に光をもららせる。光皇の如き笑顔は終戦の日に相応しいはずだ」


 ベゼラの演説はもう終わりであるらしい。次なる演説者の紹介が始まっていた。


「私は彼女から色々な話を聞いた。とても意志が強いけれど、優しさも持ち合わせている人。彼女を見習うことは今後の助けとなるだろう。よって私は皆に知ってもらいたく思い、時間を割いてもらうことにした。彼女の名は……」


 ベゼラは続く演説に対する説明を続ける。

 できるだけ好意的に捉えられるよう。彼女が光皇連の民に受け入れられるように。


「ミハル・エアハルト――――」

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