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Solomon's Gate  作者: さかもり
第二章 星系を守護する者たち
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銀河間戦争

 ソロモンズゲート支部イプシロン基地は早朝から慌ただしかった。


 司令室にはクェンティン・マクダウェル大将の他、基地の視察に訪れたデミトリー総長の姿もある。けれど、総長の視察によって慌ただしいわけではない。


「遂に来たか……」

「開戦準備が整ったのかと思われます」


 デミトリーが呟くとクェンティン大将がそれに返した。

 既定路線であった銀河間戦争。しかし、戦争の始まり方は誰にも分からなかった。突如として攻め込んでくるのかと思いきや意外にもカザイン光皇連は通信回線に乗せてメッセージを送ってきたのだ。


 その内容は従属を迫るもの。同意するならば人類の身分はカザインが定める最下層クラスとなる。また星系に関する全ての権利はカザインに移譲し、人類は全ての主権を失ってしまう。返答の猶予は太陽系時間にして約二ヶ月。返答がなければ以降は予告なく攻め込むとの内容だった。


「これが……カザイン……?」


 メッセージを最後まで見届けたデミトリーは息を呑んでいた。だが、それは想定内であった内容についてではなく、メッセージを伝えたカザインの容姿に問題がある。


「まるで……人類そのものじゃないか……?」


 カザインからのメッセージと聞いていなければ分からなかっただろう。彼らの容姿は人類と酷似していたのだ。目、鼻、口、表情に至るまで何もかもが同じだった。髪の色味に少し特徴があったけれど、それが人種的なものであるかは定かではない。


「どうされますか?」


 クェンティン大将が聞いた。彼はイプシロン基地の司令官である。歴戦の軍人らしく毅然とした態度であった。


「この内容では議会にかけたところで否決されるだろう。奴隷に落ちてまで生き延びたいという人間がどれほどいようか……」


 開戦するものと考えてくれとデミトリー。メッセージを太陽系の全域に公表した上で議決を取る予定らしい。さりとて彼は得られる結果を分かっていた。


「デミトリー総長、どうかご安心ください。必ずやこの星系を守り抜いてみせます。我々とて戦闘準備は万全でありますから」


「それは心強いな。必ずや勝利してくれ。人類の未来は君たちにかかっている。我々は吉報を待つしかできないが、できる限りの支援をさせてもらうつもりだ」


 デミトリーは少し表情を和らげ、そのように話す。

 現状ではイプシロン基地を抜かれると人類の敗戦が濃厚である。ほぼ全ての戦力をここに割いていたのだ。木星や火星には如何ほどの戦力も残されていない。


「それではパイロットの増員はどうでしょうか? 基地に配備された半数以上が無人機ですから些か不安に感じます……」


「パイロットか……。それが一番の難題だな。長く平和を享受した報いかもしれない。パイロットの数は大将も知る通りに不足している。これからの主な供給先はレース協会だ。既に数多のレーサーが軍事訓練を始めている。またパイロットの待遇向上に関する法案も可決したところだ。各航宙士学校には軍部を勧めるようにとの通達も出した。随時増えていくと思われるが、今しばらくは現状のまま戦って欲しい」


 要望は受け入れられたようで実のところ却下されたようなもの。人的資源が原因となっているため、直ぐにどうこう出来る状況ではなかった。


「いや、了解であります。元より与えられた戦力で勝利するのが至上命令。過ぎたことを申しました。我々は勝利致します。人類の未来を担う重責に必ずや応えて見せましょう」


 力強いクェンティンの言葉が有り難かった。負担をかけているのはデミトリーも重々承知している。あらゆる手段を講じ、彼らに報いなければならない。


「議会が落ち着けば、また視察させてもらうよ」


 言ってデミトリーは司令室をあとにする。


 視察を終えたデミトリーは思いを新たにしていた。軍部に所属する者たちがカザインと戦うのであれば、デミトリーの戦場は議会に他ならない。軍部の負担緩和に向けた議論を活発化させ、彼らが戦いやすくなるよう働きかけていく。ゲートへ配備された以外の人間は未来を彼らに託すしかなかったのだ。

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