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Solomon's Gate  作者: さかもり
最終章 未来へ
218/226

見えてきた最後

 司令部は俄に騒々しくなっていた。

 急に現れたゼクス解放軍だけでなく、終結に向けての切り札であるベゼラが被弾したからだ。


「アーチボルト、ベゼラ君の具合はどうなんだ?」


「テレンス大佐からの報告によると怪我はないようです。ただ皇都にタッチしていたため、帰路が不安ですね……」


 接近するまで稼働しなかった皇都レブナの砲台が急にビーム砲を撃ち放ったこと。司令部としても想定外であった。


「前線の無人機は皇都にある砲台を狙う設定に変更しろ。動かぬ的を撃ち抜くのには最適だろう」


「そうですね。直ちに実行します」


 言ってアーチボルトは手元のマイクで指示を出す。無人機の攻撃を全て、アイリスたちの支援に回すことを。


 こうしている間にも敵機の密度は下がっていく。それは明確にゼクス解放軍に戦力を割いたからであったが、自軍の奮闘ぶりもかなり目立っている。


「これほどまでに落ち着いて指示を出すのは初めてだな……」


 現状からの予測では戦闘終結まであと四時間。もっとも戦闘が進むに連れてAIの予測はズレていくものだが、それでも先が見えない戦いを強いられていた頃を思い出せば随分と余裕があった。


「司令、アイリス少尉には休憩するように伝えました。戦況から考えると、もう出番はなくても構いませんよね?」


 指示を伝え終えたアーチボルトが言った。彼は戻ってきたアイリスに待機を命じたという。


「まあベゼラ君を出す必要はないな。支援機もなく出撃する状況でもあるまい」


「ミハルさんが傑出した戦いをしていますし、お役御免ですかね……」


 速報値を見ると、撃墜数一位はミハルであった。アイリスも撃墜率は100%であったけれど、皇都に取り付くことを重視した彼女は重イオン砲での撃墜数で劣ったらしい。


「頃合いを見て、ミハル君にも休息を入れてくれ。ここから光皇連が息を吹き返すことなどあるまい」


「承知しました。最後くらいは楽をしてもらいましょう」


 まだ数万という航宙機が蠢いていたから、ミハルの帰還はまだ先の話。しかし、敵軍の増援がない状況で孤軍奮闘してもらう必要もない。よって、早々に帰還を促すことになるはずだ。


 終始GUNSペースで進む銀河間戦争第五戦。勢いのまま敵地の制圧が成されるのかもしれない。



 ◇ ◇ ◇



 戦闘が始まってから四時間が経過していた。

 練度に勝るGUNSの猛攻が続いている。既に皇都の砲台は全て無効化しており、白兵戦の準備が着々と進んでいた。


「ミハル、Eブロックは制圧したといえる。移動するぞ」

「了解!」


 一応の割り当てを殲滅し、ミハルたちは機影の濃い宙域へと向かう。だが、他の宙域も随分と機影が減っており、誰の目にも終わりが近付いていると分かった。


「少佐、この戦争が終われば何をするつもりです?」


 不意にミハルが聞いた。彼女自身はアイリスの話を好意的に捉えており、師であるグレックの去就が気になってしまったらしい。


「ああ、お前たちはレーサーになるんだったな?」

「あれ? アイリス少尉に聞いたのですか?」


 知っていたのなら、一言あってもいいのにとミハル。知らないと思ったから、話を始めただけなのに。


「俺も勧められたんだが、俺はレース協会と一悶着あってな。流石に推薦はもらえない。一般受験する年でもないし、軍部に残ろうと決めている」


 予想した話ではなく、ミハルは残念に思う。グレックならきっと登り詰めると考えていたものだから、特例を利用しないのは意外だった。


「まあ、佐官ですしね……」

「そういうこった。出世街道に乗っちまったんでな。世界平和に貢献するつもりだ」


 佐官にまで出世したのなら、現場を離れるかもしれない。概ね指示を出すだけの楽な仕事となるだろう。少尉でしかないアイリスとは明確に立場が異なっている。


「だから俺はこの一戦で奮起しようと考えた。でも、これくらいの戦闘じゃ、お前たちに勝つのは無理だ。大乱戦になれば支援機でも対等な結果が残せると考えていたんだが……」


 意気込んでいたグレックであったものの、肩透かしに終わっている。ミハルの機動を追う必要がある彼はミハルの撃ち残しくらいしか戦果を加算できなかったようだ。


「すみません。ま、弟子の二人がトップシューターなんですから、胸を張ってください。私は今回も自信ありますので」


「そういや、アイリスは待機組になったらしいぞ? 何でも支援機が被弾したとかで……」


 ここでミハルは知らされている。

 アイリスが既に戦線から離脱していること。ベゼラが被弾したことまで。


「ベゼラは無事なんですか?」


「それは触れられていないが、まあ問題なかろう。アイリスがそこまでやらかすとは思えん」


 それもそうかと思い直す。この戦闘における敵機の密度は今までと比べて低い。防衛線を広く敷いた連軍の布陣ではアイリスを撃墜できなかったことだろう。


「ちなみに俺たちもお役御免だそうだ。エネルギー残量が一割になった時点で帰還することになっている」


 どうやら司令部は戦況を見極めたらしい。アイリスだけでなく、ミハルまでもを下げられるほど余裕があるらしい。


 エネルギー残量は残り21%。しかし、グレックの機体はもっと少ないはずであり、ミハルが戦場を飛び交う時間は幾ばくもないはずだ。


 あと少し。ミハルは今一度、集中をして敵機を撃墜していく。

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