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Solomon's Gate  作者: さかもり
最終章 未来へ
215/226

最後の戦い

 一ヶ月が経過していた。

 人類初となる異文明との接触は残念ながら戦いが待ち受けている。


 既に光皇連のユニック群を確認できる宙域まで到達していた。双方が睨み合うような位置にあり、いつ交戦が始まってもおかしくない状況である。


 しかし、GUNSは先制攻撃をしない。光皇連の電波を再びジャックし、強制的な降伏勧告を行うことにしている。


「皆の者、久しぶりだ。ベゼラ・リグルナムが再び故郷へと戻ってきたぞ!」


 メッセンジャーはベゼラである。

 しかし、パイロットスーツを着込んだ彼は勧告に応じないことを分かっているかのよう。


「ダグマ・レブ・カザイン、聞いているか? 貴様は楽な死を迎えられない。母星ゼクスの住民を見殺しにしたこと。戦争反対派をことごとく戦場へ送り込み亡き者にしたこと。食糧プラントを兵器生産施設としたこと。貴様の罪は数え切れないほど多い。光皇の資格どころか、貴様には人としての価値もないのだ」


 憎しみが込められた声。この映像を見た者は全員が彼の怒りを感じ取っていただろう。


「一応は勧告してやる。どうも太陽系の人々は優しすぎてな。貴様のような罪人にも慈悲を与えるらしい。十分だけ待ってやる。投降し、皇都を明け渡せ。さもなければ、これより総攻撃を仕掛けることになる」


 言って勧告は終了。ベゼラは急いで第一ドックへと向かう。

 意味のない演説に長い息を漏らしながら。



 ◇ ◇ ◇



 ミハルたちはスタンバイしていた。

 本当に最後の戦いが始まろうとしている。


 予想される敵機は推定三万機。僚機は有人機だけで八万という数があり、間違っても負けることなどないという試算が出ていた。


「少佐、いよいよですね……」


 ミハルもまた出撃が回避できないと分かっている。既に五万という無人機が射出されているし、死罪が確定しているカザイン光皇が降伏するはずもないのだと。


「驚いたことに、俺はまるで緊張していない。全部お前のせいだぞ?」


 結局のところ、グレックはミハルの後衛機を続けることになった。さりとて、グレックもそれを望んだ結果だ。慣れぬ相手と飛ぶくらいならば、無茶をするミハルの方が安全だと言って。


「良いことです。是非とも視野を広く持ってくださいね?」

「言ってろ、馬鹿者が……」


 かつて散々言いきかせた話を逆に指示されてしまう。

 まあしかし、こんな今もグレックは落ち着いたままだった。


「恐らく基地にいるより、お前の後方を飛んでいた方が安全だろうな」

「手を抜かないでくださいよ? 今回も一発だって無駄にしないつもりなのです」


「ああ、任せろ。充分な支援をしてやる。トップを取ってこい」


 言って二人は搭乗していく。最後の一戦を前に意気込みながら。


 五戦目を迎える銀河間戦争。それは意外にも光皇連の本拠地で行われる。

 一年前には誰も想像できなかった場所での戦いが始まろうとしていた。



 ◇ ◇ ◇



 約束の十分が過ぎた。

 ところが、応答はない。それどころか皇都レブナに隣接するアルバから、数多の戦闘機が射出されていた。


『管制より全機に。既に無人機が交戦に入りました。これより出撃準備が完了した機体から射出します』


 管制からの通知。とはいえ、既にミハルは発進デッキへと運ばれている。

 よって考え事をする暇もなく、発進許可が下りていた。


「ハンターツー、発進します!」


 ミハルはスロットルを踏み込んでいる。最後の戦いに勢いをつけるかのように、全速力で基地を飛び出していった。


 順番に射出されていく。程なく101小隊は全機が勢揃いし、無人機が奮闘するエリアへと向かう。


「いけぇぇっ!!」


 早速とミハルは重イオン砲を撃ち放つ。

 基本的に民間のユニックを撃ってはいけないことになっている。従って敵機だけでなく背後にある建造物も頭に入れておかねばならない。


 とはいえ、宙域の抵抗粒子濃度は低く、中性粒子砲であっても方向さえ合っていたのなら、ユニックまで届いてしまうことになった。


「ミハル、民間のユニックは狙うなよ?」

「分かってます! マーカーのあるユニック方向にしか撃っていません!」


 カザイン光皇が皇都のどこにいるのか判明していない。生け捕りを命じられていたものの、そこまで考えながら飛ぶのは難しかった。よってミハルは気にしない方向で考える。戦争に勝つことだけを優先事項として機動を続けていた。


「私はこの先も負けられないのよ!!」


 漏れ伝わった通信から、ミハルの意気込みが感じられている。

 グレックは安堵していた。先の防衛戦にてトップシューターに輝いたこと。それは一定以上の満足感を与えたはずで、ミハルのモチベーションダウンに繋がる気がしていたから。


「ミハル、最後の戦いにするぞ! 全力で攻めていけ!」

「了解!」


 今もまだ限界に挑むかのような鋭い機動。本当に成長を感じる。教練を始めた頃、ちょっとしたことで集中を欠いていた彼女はもういないのだ。


「大戦を何度も生き残った結果か……」


 成長を期待して送り出したこと。ゲートへの出向をアイリスに委ねたことは間違いではなかった。予想を遥かに超える成長を遂げた愛弟子は人類のために戦うエースパイロットに他ならないのだから。


「まったく癪に障る弟子たちだな……」


 グレックは操縦桿を握り直す。

 ミハルに花を持たせようとしていた彼だったが、スロットルを踏み込んでいる。


「いくぞっ、ミハル!!」


 積極的に前へ出て行く。後衛機だからと自重していたグレックだが、自身の言葉にあるべき姿を思い出していた。


 最後の戦い。銀河間戦争はこの一戦で幕を下ろすかもしれない。そうすると弟子たちに挑む機会が多く残されているとは考えられなかった。


「やっぱトップにならねぇとなぁぁっ!!」


 持論を口にして撃墜を始める。ミハルに出遅れた格好であるが、彼は攻めていこうと決意を固めた。


「少佐!?」

「ミハル、支援はしてやるが、俺は挑みたくなった。現状の実力を試してみたい。お前たちを指標として、どれだけできるのかを知りたいと思う」


 思わぬ話にミハルは驚きを隠せないが、気持ちはよく理解できた。

 パイロットならば、当たり前だろうと。高みを目指す者ならば、二番手以降に甘んじるなんてできないことを。


「了解です。撃墜優先と考えて良いのですね?」

「当たり前だ。それを考慮して飛べ。俺は俺のために飛ぶ」


 ミハルは何だか面白くなっていた。グレックが撃墜優先とするならば、間違いなく彼女は不利になるというのに。


 けれど、尊敬するパイロットの一人。育ててくれた人の本気を見たいと心から思った。

 だからこそ、ミハルは弾むような声で返している。正々堂々と競い合えるようにと。


「結果が楽しみです!」

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