届いた吉報
セントラル基地にもGUNS勝利との一報がもたらされていた。
隊長となったマンセル上級曹長が速報を読み上げるや、全員が胸を撫で下ろしている。
「嬢ちゃんはやりおるのぉ。これで三戦連続でトップシューターじゃな!」
「バゴスさん、ミハルちゃんなら当然ですよ。今回はグレック少佐が支援機ですし!」
何気ないマイの一言であったけれど、全員が思い出す。ここには後衛機の前任者がいたことを。
「あああっ!? ジュリア宙士長、他意はございませんので!」
即座にマイが取り繕うけれど、ジュリアは苦笑いを浮かべていた。
「いや、構わない。この結果を俺は真摯に受け止めている。俺が支援機じゃ絶対に不可能だ。90分の飛行時間で二千機以上を撃墜だなんて、俺の支援なら絶対にできないことだよ」
「単純に撃てる弾数を超えておるからのぉ。グレックも骨が折れたに違いない」
バゴスがフォローするように言った。
A-DUO戦闘機でなければ、不可能な数字である。重イオン砲を使いこなして初めて達成できる数なのだ。
「あたしの支援もろくにできないジュリアさんでは無理ですって!」
バゴスの慰めにも似たフォローであったものの、残念ながらフィオナが台無しにしてしまう。
誰もが居たたまれない思いだ。分かりきっていたことを明確に告げられてしまっては……。
「みんな、気を遣わなくていいです。フィオナが話した通りだ。正直に俺はミハルの足を引っ張っていた。今回の結果でそれは明らかになっています」
才能を見せつけられた気がする。ミハルだけでなく、グレックの結果についても。
支援機が二時間弱で千機近い撃墜を記録するなんて、ジュリアには想像もできない。加えて、その前衛機はあり得ない数値を叩きだしてトップシューターに輝いているのだ。
「ま、まあジュリアはまだ若い。精進していけば、きっと上手くなる」
マンセルが綺麗に纏めるように口を挟む。隊を任された彼は隊員のメンタルにまで気を配っているらしい。
「しかし、凄いのぉ。アイリスもまた驚異的な数値を出しておる。どちらを先に見ても、圧倒的トップシューターじゃと疑わない内容じゃぞ」
「本当にそうですね! 撃墜率100%ってエスパーか何かでしょうか?」
トップシューターの二人は飛行詳細まで閲覧できた。
共に非の打ち所がない。完璧といって差し支えないものである。重イオン砲まで使用した結果が全射命中とか意味不明であった。
「しっかし、今ミハルちゃんたちはあの銀河にいるんでしょ? 何だか不思議な感覚よね」
シエラがモニターに銀河を映し出して言った。
メシエカタログ31番アンドロメダ銀河。250万光年離れた銀河にミハルたちがいる。
ワームホールの形成があったからこそだが、あり得ない距離にある宙域を彼女たちは戦場としているのだ。
「うむ、太陽系から一番近い銀河じゃというが、少しも想像できんの。この銀河のどの辺りにおるのじゃろうな」
もしもゲートが開いていなかったなら、ミハルたちがいる場所は人類が到達出来ない宙域である。モニターに映る時間軸とは異なっているけれど、それでも探してみたくなってしまう。
「ま、戦争が終われば、みんなで研修旅行に行きましょうか! マンセル隊長の奢りで!」
「おいおい、シエラ君……。私はそれほど高給取りじゃないぞ?」
「私って給与の管理もしているんですよ? 知りませんでした?」
ニヤリとするシエラにマンセルは言葉がない。基地の一切合切を泊まり込みで管理する彼女には隠し事などできないようだ。
再び笑い声が木霊するセントラル基地。戦場から遠く離れた場所にいる彼らは勝利を疑っていないし、ミハルたちを信じていた。
だからこそ、戦争後の話で盛り上がることができるのだろう。




