戦いのあと
銀河間戦争の四戦目は圧倒的な結果となっていた。
かといって、プロメテウス前線基地を代償としており、小惑星帯かと思える残骸を残したため、光皇連の残党狩りはそれなりの時間を要している。
終結宣言が出されたのは最前線の部隊が引き上げてから五時間が経過した頃となっていた。
「まあ、何とか殲滅したか……」
クェンティンがポツリと言った。敵戦力のほぼ全軍が爆発に巻き込まれたというのに、開戦から七時間近くを要したのだ。流石に疲労の色は隠せない。
「デブリならば回収も早いのですが、広範囲に散った岩石の除去は骨が折れますね」
スペースデブリは専用の回収艦があったけれど、それは惑星の破片を想定していない。大幅な改造を施して除去していくことになるだろう。
「提案なのですが、しばらくこの宙域は破棄しましょう。今後を考えると除去作業は必要ですけれど」
「そうだな。幸いにもパンドラ基地には推進機があるし、我らは先を見据えて戦わねばならなん」
被害は今までで最も少ない。だからこそ、余計な雑務にも表情は明るい。各隊の補充やら艦隊の修繕を考えるよりもすっと良かった。
「して、司令はこの先をどうお考えでしょう?」
アーチボルトが尋ねた。ゲートを越えて初めての戦いを快勝。詳細を語らずとも、自ずと質問の意味は理解できたことだろう。
「ああ、我らはできる限り早期に進軍を始める。少しずつパンドラ基地を近付けていくぞ」
クェンティンは表情を引き締めながら返す。ここまで来たのなら突き進むだけと。
本来ならプロメテウス前線基地が担うはずであったことをパンドラ基地にて行うらしい。
「ですね……。光皇連には余力がないと見ます。早ければ早いほど、制圧が容易になることでしょう」
アーチボルトも賛成のようだ。プロメテウス基地を失う羽目になったものの、結果としてGUNSは戦力を維持できている。人工太陽を突撃させた計略は失敗に終わっただけでなく、戦力バランスを著しく偏らせる結末を迎えていた。
「あと少しだ、アーチボルト。我らの奮闘が実るまで……」
「明確に最後が見えてきましたね。補給に関して太陽系側と協議してから、侵攻計画を実行に移しましょう」
懸念は食糧や兵器の輸送。ゲート裏に陣取っていたのなら簡単な話であったが、パンドラを前線基地化すると決めたあとでは輸送人員の安全まで保証できなくなる。
「やれるはずだ。人類なら……」
クェンティンの希望的観測にアーチボルトは微笑む。
確かにそうだと思う。これまでと同様に信じて戦うしかないと。
人類は未来を信じて戦い続けていたのだから。




