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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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ミハルが見た宇宙は……

 相も変わらず、ミハルは無人機の照射範囲内で戦っている。


 モニターには砲身の向きを示す赤いラインが張り巡らされていたけれど、常に稼働するそれを頭に入れつつも、思い描いたように飛べた。


「ジュリアじゃこうもいかなかったよね……」


 ポツリと漏らす。モニターの状況はとても見せられたものではない。自分を信頼して飛ぶグレックが見たとすれば、絶対に信用などできなかっただろう。全無人機の機動をリンクしているものだから、スペースを見つけることすら困難であった。


「照準までリンクしてもらったのは正解かも」


 無人機の照準が敵機に合うと、赤いラインが太い青に変わる。つまり青いライン上を選ばなければ、重イオン砲を浴びる心配はない。


「少佐、アイリス少尉は大丈夫なんでしょうか?」


 ミハルは秘密裏にセンサーの変更をダンカンに頼んでいた。まさかアイリスまで範囲内に入り込むとは考えていなかったから、どうにも心配になってしまう。


「ああ、それな。ダンカンがお前の機体だけに細工をすると思うか? 間違いなく全て筒抜けだ。あとで怒られるのは嫌だからな……」


 グレックの説明にミハルは眉根を寄せた。

 ミハル自身が考えて、自機のモニター設定を弄ってもらったのだ。


「いや、ダンカンさんは無人機の発射準備が整うと青色で表示するように提案してくれたのですよ!?」


「それはアイリスの思いつきだろう。お前たちの機体は同じ設定だよ。だから、憂えることなく全力を出し切れ。アイリスもそれを望んでいる」


 何だか踊らされた気がしてしまう。

 ライバルであるアイリスを気遣っていたミハルだが、何の問題もなく照射範囲内に入った彼女は同じ設定であったらしい。


 少しばかり腹が立った気もするが、ミハルの心は穏やかなままだ。こんな今も彼女は大量の敵機に囲まれていたというのに、完全に落ち着き払っている。


「少佐、私は凄く見えているんです。自分でも驚くほどに……」


 設定についての真相を知ったミハルはそんな風に語る。理由は分からなかったけれど、ミハルは宙域全体が見渡せているという。


「どこまでも見える。なぜでしょう? このまま敵艦のいる場所まで行っても構わないですか?」


「それはやめろ。まあ、俺も驚いている。ミハルが選ぶラインは常人に見出せるものじゃない。いや、お前は作り出しているんだろうな」


 グレックが返した。彼もまた自分自身に驚愕していたのだ。制止したくなるほどの敵機が迫る中で、落ち着いて支援していることについて。


「作り出す?」


「平たく言えば、俺を信用しすぎだ。お前、俺の撃墜まで計算してるだろ? 不確定な事象に縋るな。自分じゃない誰かを過度に信用するのは間違っている」


 ミハルの機動はグレックの射撃に依存していた。グレックが狙いを外すと、ミハルの連続攻撃はそこで途絶えてしまう。


 自虐的にも聞こえるグレックの話に、ミハルは小さく笑みを浮かべた。


「ここまで外しましたか?」


 皮肉ではなかったものの、グレックには好意的に捉えられない。完全に利用されている状況を彼は理解していたから。


「外してないでしょ? だから確定事項です。私はストレスなく飛べています」


 言ってミハルは重イオン砲を撃ち放つ。照射ラグの間に撃つそれは毎度のこと宙域に幾つも爆発痕を残した。恐ろしく感じる精度もまた、ミハルの中では確定事項として処理されているのだろう。


「屁理屈をいうな。流石に突っ込みすぎだ。少し戻れ」


 ミハルが敵陣の中にいることで、後方に迷惑をかけている。101小隊ならば下手なことにはならないと考えるが、飛来する敵機が増えるのは良策ではなかった。


「少佐、私は勝てますよね?」


 ここで質問が返される。とても端的な問いが向けられていた。

 グレックは一瞬考えるも、直ぐさま彼女に返答している。


「これで負けているとか考えられん。不安要素があるとすれば、敵機の密度が違うことだろうな」


 現状を考察すると、結果は明らかだ。ミハルは間違いなく三秒おきに撃墜しており、もしも差が生まれるとすれば、重イオン砲による多重撃墜の数だけである。


「それなら下がります。敵機を撃墜しながら」


「それで良い。お前の望みが叶うことを俺も望んでいる。アイリスの鼻が今以上に伸びるのは好かんのでな」


 グレックの返答にミハルは笑っている。全てを懸けて戦うと決めていた彼女だが、これほどまでにリラックスして戦えるなんて想定外であった。


「まだまだ序盤です。少佐は集中を切らさないようにしてくださいね?」

「言ってろ、バカ者が……」


 大きく旋回した二機。事前に話していたように、適切な撃墜を加えながら、戦線を後退していく。


 五万近い数が押し寄せた銀河間戦争第四幕はGUNSが優勢である。

 周囲に配置した重イオン砲装備の無人機が想像以上に機能していたからだ。加えて、基地周辺には抵抗粒子が巻かれており、攻め手である連軍にはその恩恵がない。


 有利に事を運ぶ要素は多く、このままGUNSが押し切ってしまいそうな雰囲気であった。

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