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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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戦闘開始

 宙域に出揃った戦闘機群。各々が所定の位置へと到着していた。

 あとは連軍が攻め入って来るだけ。徐々に迫り来る光皇連の部隊に緊張感が高まっていく。


『中性子砲、発射準備完了。ライン上の部隊は留意すること』


 不意に司令部より通達があった。

 記憶に新しい中性子砲。此度も戦闘が始まるよりも前に撃ち放つつもりらしい。


 カウントダウンが始まる。中性子砲はパンドラ基地の遙かU方向に移動しており、基本的に戦争開始時のエリアと重なってはいない。


『発射!』


 淡々と告げられた言葉とは裏腹に、もの凄い輝きが宙域を突き抜けていく。

 それはまさに闇を斬り裂き、進路にある全てを消失されるのに充分な威力を発揮していた。


「ほほう、司令部も本気だな! 行くぞ、プリンス!」

「了解した!」


 開戦の狼煙となっていた。これにより最前線の部隊は侵攻を開始している。

 アイリスとベゼラの機体が飛び出したかのようにも思えたが、E方向に同じような機体が二つある。


「ミハルのやつも本気なんだな?」


 クックと邪悪な笑い声を上げたアイリスは尚もスロットルを踏み込む。

 我先にと進む妹弟子に対して、アイリスは大声を張っていた。


「売られた喧嘩は全て買い取る主義なのだよ!!」



 ◇ ◇ ◇



 中性子砲が撃ち出されるや、スロットを踏み込んだミハル。グレックの機体を確認してから、W方向を見た。


「やっぱ抜け駆けは無理か……」


 戦闘時間を増やすこと。少しでも長く戦うために、いち早い接触を望んだ。しかし、それは姉弟子も同じであったらしく、ミハルとアイリスは横並びだ。


「撃てぇぇっ!!」


 まだ射程外。しかし、ミハルは中性粒子砲だけでなく、重イオン砲まで撃ち放っていた。

 此度は抵抗粒子濃度がほぼゼロという宙域なのだ。狙いさえつけていたのなら、必ず撃ち抜けると考えている。


 遥か先に爆発痕が幾つも上がった。それは主に重イオン砲の威力に他ならないが、ミハルの思惑通りでもある。


「このままリードしていくのよ!!」


 再び集中し、ミハルは第二射を放つ。このリードをどこまでも守って行こうと思う。

 一度たりとも射撃を外すことなく攻め続けたのであれば、アイリスであってもどうしようもないはずだと。


「いけぇぇっ!」

「おい、ミハル!? もう無人機の照射範囲内だぞ!?」


 侵攻軍において、最前線は決められていない。どこまでも侵攻して構わなかったけれど、移動トーチカとして機能する無人機群の重イオン砲は照射エリアが指定されていた。


 それは戦線の押し上げと共にN方向へとズレていくのだが、交戦が始まったばかりの段階では当初の設定通りである。


「少佐、私は一番を取ります……」


 グレックの問いかけに、そんな返事があった。


 グレックはただ息を呑むしかない。戦果を求めていることは分かっていたけれど、敵機だけでなく無人機の重イオン砲まで気にしなくてはならないエリアに突入するなんてと。


「重イオン砲のデータはモニターにリンク済みです。間違っても被弾しません。少佐の安全は保証しますから」


「いやお前、何万とあるだろう!?」

「平気です。私は全てを見た上で飛んでいます」


 グレックはミハルの本気を感じ取っていた。

 無人機に搭載された重イオン砲の発射ラインなんて、初期設定には含まれていない。ミハルは範囲内への侵入を予め考えており、整備士に情報のリンクを願ったのだろう。


「分かった。好きに飛べ。言っておくが、俺は重イオン砲をフォローしないぞ? 俺はお前が適切に飛べるように支援するだけだ」


「それで構いません。私は一番になるだけ。二番に価値はないもの……」


 思えば、この一ヶ月という期間はミハルにとって地獄にも似た環境であったことだろう。

 グレックは三回続けて後塵を拝したミハルの心情を慮っていた。


「ったく、どこの誰がそんな馬鹿を言いきかせたんだ……」

「どこの誰ですかね? さあ、行きますよ!!」


 戻れなんてグレックには言えなかった。

 ミハルが軍部に入った理由。それを知るグレックには止められない。ミハルの現状を構成する全てと言っても良い要素がアイリスに勝つこと。

 戦争に勝つことでも、トップシューターに輝くことでもない。ただミハルはアイリスに勝ちたいはずだ。


「どこまでも飛んで行け。ミハル、俺は地獄の果てだろうが、支援し続けてやる!」

「ありがとうございます!」


 鋭い機動を繰り出すミハルに、グレックは必死についていった。適切な支援を行いながら、持てる全てを発揮している。


 直ぐ脇を抜けていく重イオン砲は不思議と気にならない。ミハルが被弾しないと断言したからか、グレックは気を取られることなく、機動を続けている。


 ところが、不意にグレックの機体へ通信が届いた。


『第一航宙戦団司令部』


 それは所属する大隊からの連絡である。グレックは聞くまでもなく要件を察していたけれど、応答せずにはいられない。


 グレックは嘆息しながらも通話許可を出す。


『ハンターワン、何をしている!? そこは照射範囲内だぞ!?』


 数分前に自分が話した台詞を聞かされてしまう。

 声の主は第一航宙戦団長のテレンス大佐だった。どうやら、ミハルの機動に文句があったらしい。


 かといってグレックは小さく笑みを零すだけ。面倒な応答であったけれど、彼はどうしてか何も気にならなかった。

 ミハルがやる気に満ちているのだ。彼女の意欲を挫くなんて、教練を担当したグレックにできるはずもない。

 だからこそ、冷静に返す。現場の判断に間違いはないのだと。


「何か問題でも?――――」

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