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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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謎の熱源

 皇都レブナでは着実に侵攻の準備が進められていた。


 謁見の間にて指揮を執るのはカザイン光皇。右腕であるデリナを処刑した彼は全ての報告を受けることにしている。


 指揮系統は明らかに人材不足だ。べゼラの演説に同調した者たちは軒並み処刑されてしまったのだから。


「まだ準備が整わんのか!?」


 声を張るカザイン光皇に部下たちは揃って頭を下げる。


「機体の製造が間に合わず、申し訳ございません!」


 本来ならデリナが的確な指示を出していただろう。しかし、今の連軍はカザイン光皇のみに指揮権があった。つまるところ、問題が発生してからしか対処できないでいる。


「現状では何万機になる?」

「せいぜい四万といったところです」


 最低五万機を命じていたのだが、進捗状況は思わしくない。


「反物質ミサイルの用意はどうだ?」


「そちらは充分な数が揃っていますが、発射する手段がございません……」


 反物質ミサイルは砲台を専用の艦船としていた。誘導機能のないそれは艦船がなければ意味をなさないらしい。


「兵器用アルバは戦闘機生産に回せ。エザルバイワが捕らわれているのだ。反物質ミサイルは使い道がない」


 無差別な大量破壊を生み出す反物質ミサイルの使用は躊躇われていた。後継者たるエザルバイワが捕虜となっている現状で、それを撃ち放つなどガザイン光皇には選べない。


「光皇様! 光皇路方面より熱源を感知しました!」


 ここで新たな問題が噴出。光皇路から謎の熱源が接近中らしい。


「何事だ!? 距離はどうなっている!?」


「到達まであと一日です! 熱源は超高エネルギーの照射であると思われます!」


 光皇路方面であれば、間違いなく太陽人の仕業である。これまで戦争に消極的だった彼らは、まるで豹変したかのように攻勢を強めていた。


「どうして、その距離まで気付かなかった!?」


「探査網の大半は星院家の所領を見張れと、光皇様が……」


 造反を恐れたガザイン光皇の指示。オペレーターはそう返すので精一杯だった。


「回避を試みろ! 抵抗粒子の散布を急げ!」

「不可能です! 予測地点はまだ確定しておりません。全域に散布を始めたとして、確実にアルバ群まで到達します!」


 抵抗粒子の散布はずっと続けていなければ、濃度を保てない。ビーム砲の威力を減衰させるのであれば、相当な範囲が必要だった。


「姿勢補助程度の移動力しかアルバにはありません。皇都レブナであろうとも、それは変わりません……」


 あと一日。狙いも定かではない現状において、予想範囲外まで移動するのは不可能であった。


「熱源はこの皇殿を狙っておる! 全ての区画を切り離せ! 皇殿だけでも移動させろ! あらゆる手段を講じて、範囲外に移動させるんだ!」


「承知しました!」


 何もかもが悪い方向へと進んでいる。

 カザイン光皇は長い息を吐いた。軍を統括する者を失っただけでなく、内政までこなす右腕を失ったのだ。光皇一人で処理できるはずもない。


「儂は間違ったのか……?」


 ここで初めてカザイン光皇は過去を悔やんでいる。権力の維持に努めた結果が現状を招いたのではないかと。


「ああいや、今更だ。光皇の加護があるのなら、天命は儂にあるはず」


 後悔など意味はないと思い直す。現状を憂えるのではなく、現状を改善していくしか道などないのだと。


「次の一戦さえ勝利したのなら、光皇連はまだ戦える。リグルナムの小童さえ、始末できたなら……」


 太陽人が攻勢を始めた背景にべゼラがあるのだと思えてならない。

 つまり彼を亡き者にすれば、また太陽人は大人しくなるはず。


「目にもの見せてくれよう……」


 カザイン光皇はクックと笑う。

 何を思いついたのか、光皇連の未来を見たような気になった。


「兵よ、決戦の時は近い! 奮起せよ!」


 力強い声が謁見の間に響く。それこそ失策を覆い隠すかのような大声。勝利を思い描いたカザイン光皇は揺るぎない決意を声にしていた。

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