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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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部隊長会議

 パンドラ基地では部隊長会議が開かれていた。

 それは防衛に関するものであり、現場の意見を聞くためである。


「とどのつまり、また防戦となる可能性が高い。我らは侵攻軍として配備されたけれど、光皇連は既に侵攻準備を開始している」


 クェンティンの説明は光皇連の反応についてから。

 ベゼラの演説によって、現状が導かれているという内容だった。


「戦闘は早くて三週間後。一ヶ月以内に起きる事象となった。従って、防衛戦の設定を行っている。小隊ごとに確認してくれ」


 ゲートを越えたことで、方角も新たに設定されている。

 カザインの母星ゼクスをN方向とし、ゲート側をS方向としていた。防衛ラインは以前と変更なく、無人機部隊が最前線へと陣取り、ブロック分けは混乱がないように以前と同じに設定されている。


「司令、手ぐすね引いて待っているだけか?」


 アイリスが手を挙げた。

 ここでは最年少である彼女であるが、質問に躊躇するような性格ではない。


「いや、旗艦ガナハに搭載されていた砲台の使用許可を得た。反物質ミサイルの製造拠点を撃ち抜く予定だ。まあ効果については抵抗粒子の散布濃度次第だがな」


 意外な返答にアイリスは目を白黒させた。いつもであれば煮え切らない回答しか得られないのにと。


「それは良いことだ。して、我らの宿り木であるプロメテウス要塞の配備はまだなのか?」


 アイリスの質問が続いた。

 プロメティア要塞とは建造中の前線基地に他ならない。侵攻計画に含まれるそれの配備を彼女は求めているらしい。


「それはまだ先だ。よって防衛戦には再び反物質ミサイルの危険が付き纏う。AIの精査によると前回撃ち放たれた内の三発は黄金の機体に照準が合っていたらしい。充分に気を付けてくれ」


 不満げにアイリスは長い息を吐く。

 どうやら期待した回答ではなかったらしい。心配事が増えただけであった。


「司令、一つよろしいですか?」


 ここでグレックが手を挙げた。彼にも作戦における疑問点があるようだ。


「守護エリアは概ねイプシロン基地と変わらないとのことですが、基地は衛星に守られておりますし、何より直径百キロというゲートが存在しません。連軍は侵攻範囲を拡げて来るのではないでしょうか?」


 グレックの疑問は一つ。前大戦とは状況がまるで異なるのだ。しかし、軍部が示した防衛計画では同じ陣形で挑むという。


「まさに頭を悩ます問題だな。正直に次戦は中央の機影が濃いとは言い切れない。寧ろ外へ外へと回り込んで来るかもしれないと考えている」


「見直す予定があると?」


 進路が明らかなゲートからの侵攻ではないのだ。つまるところ、防衛線の薄いところへ回り込む機動が考えられる。


「戦団長とも意見交換をした。結論としてはゲートの役目を艦船によって成す。艦船の照射により、陣形外への侵攻を妨げる狙いだ。加えて無人機を艦船の外側に配備することで、漏れ出しを最小限に留める計画となっている」


 一応は考えられているらしい。

 密度を薄くするのは防衛上好ましくない。そもそも隊列を乱すと、戦術が機能しなくなる。よって司令部は基本的に以前と同じ防衛線を敷くことに決めた。


「抵抗粒子の散布も開始している。司令部としては何とか凌ぎきってもらいたいところだ。何にせよ、我々は銀河間戦争において、初めて優位に立っている。ここで競り負けては元も子もないからな」


 司令部としては自信があるように感じる。どう精査すれば有利なのか不明だが、クェンティンはそう語るのだった。


「どうして優位にあると?」


「分からんか? 光皇連の焦りを。大戦を終えて二週間ばかり。通常であれば補充もままならぬ時期だ。しかし、光皇連は出撃準備をするしかなかった。エザルバイワが捕虜となったこと。新たな皇子の謀反とも取れる演説。明らかにカザイン光皇の求心力は低下している。大戦を目くらましにするしかないほどにな」


 準備期間がないのはお互い様であったけれど、光皇連は仕掛ける必要性に迫られていたとクェンティンは言う。


「向こうに余力があるという可能性はないのですか?」


「それは前回のゲート裏一掃時に調査を終えている。研究チームが残した記録によると、生産のたびに戦闘機が配備されていたらしい。ただ皇都には余剰戦力があると判明もしている。恐らく、その辺りの戦力を投入してくるのだろう」


 クェンティン曰く、進軍は五万機程度か、それを下回るとのこと。問題は航宙機よりも、搭載する艦船の不足が原因のようだ。


「なるほど、承知しました。元より、与えられた任務を遂げるだけ。戦闘機パイロットは敵機を撃墜していくだけですから」


「助かる。何もかもが手探りだが、次戦を乗り越えられたのなら、いよいよゴールが見えてくる。今一度、君たちの奮起に期待する」


 このあと、各ラインごとの説明があり、役割分担が細分化されていく。


 小隊長たちは、本日の内容を持ち帰り、隊員たちに説明していかねばならない。

 侵攻時期すらも分からなかった時代を考えると、光皇連の手の内が分かるだけ動きやすいとも言える。


 何にせよ、戦場が変わっただけであり、すべきことは何も変わらない。

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