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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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戦争の展望

 パンドラ基地の真新しい司令部ではクェンティンやアーチボルトだけでなく、デミトリー総長の姿があった。


 一応は基地の安全が確認されたとして、視察と激励に訪れたらしい。


「一悶着起きるのかと思えば、意外と受け入れられて肩透かしだよ」


 乾いた声で笑うのはデミトリーである。

 此度の強攻策は大戦後にしか不可能であった。ゲート裏の敵艦が増えると作戦は実行困難であり、少なからず被害がでていたことだろう。


「映像を公開しましたからね。ゲート裏にあった光皇連の基地にさぞかし驚いたことでしょう。あれほどまでの巨大艦船がゲート裏に隠れていたと知れば、誰も文句を言いますまい」


 クェンティンが返す。ユニックと呼ぶべき巨大艦船の存在は民衆の意識を明確に変えていた。侵略ではなく、侵略される側であったことを知らしめていたのだから。


「敵艦の改修や、プロメテウス前線基地の建造など尽力いただき感謝しかありません」


「いやいや、我らは助けてもらっているのだ。できることをしていかねば、人類に未来はないよ」


 大勢の技術者が今もなおゲートまで集められている。パンドラ基地の増築だけでなく、前線基地として使用する衛星プロメテウスの要塞化、更には光皇連が残した旗艦ガナハの改修工事と技術者は幾らいても足りなかった。


「しかし、この先に文明があるのだな……」


 デミトリーがしみじみと言った。

 映像では色々と確認したけれど、実際に踏み込んだ今は感慨もひとしおである。


「一見、平穏に見えますが、我らの動きに呼応して戦争の準備を行っている模様です」


「またか……。どちらかが力尽きるまで続くのだと分かってはいたけれど」


 嘆息するデミトリーにアーチボルトが頷きを見せる。彼は光皇連の行動を詳細に把握しているのかもしれない。


「先日行った電波ジャックの影響です。事前にベゼラ君が秘匿回線を用意してくれていましたので実現しました。エザルバイワ皇子が捕虜となった事実は確実に光皇連を混乱させていますね」


「彼は無計画に亡命したわけではないのだな? 今のところ、ベゼラ君が思い描いた通りになっているわけか」


「彼は本当に素晴らしい人材です。光皇連の人間でないのなら、育ててみたくなるほどに。思慮深いだけでなく、実行力も持ち合わせている。加えて、前線で戦いたいというのですから、英雄と呼ぶべき存在でしょうね」


 手放しで褒めるアーチボルトに、デミトリーは笑みを浮かべた。

 敵軍の皇族を登用することに関しても、議会は強攻策にでていたからだ。彼が矢面に立ち、活躍していくことで批判の噴出は抑えられるだろう。


「アーチボルト准将、貴方は次戦がどうなると考えている?」


 ここで話題が転換される。長く前線で参謀を務めるアーチボルトの意見をデミトリーは知りたいようだ。今後の議会運営にも関わることであると。


「残炎ながら現状では防戦から始まることでしょう。エザルバイワ皇子の救出。光皇連は早急に戦力を整えてくるはずです。我らは現状の布陣で防衛戦を敷く必要がございます。無人機の輸送を願いたいところです」


 大戦が終わったばかり。まだ補充を始めた直後であり、艦隊の補修や無人機の補充は先送りとなっていた。


「前大戦と同規模になると?」


「流石に下回るでしょう。これまでの大戦から計算すると、生産能力は互角。工場を増設している分、GUNSが上回っていると考えたいところですかね」


 試算では五万機規模の進軍になるのではとアーチボルト。しかし、その試算も光皇連が防衛に裂く兵力を考慮していないものであり、実際はそれよりも少なくなる可能性があった。


「航宙機の製造に関して、入札を取り止めにしたこと。検査を通過した機体は全て買い上げている。それでも足りないというのか?」


「現場からすると同数では心許ない。せめて新型の無人機を二万。旧型を含めて五万機程度欲しいところです。準備期間を含めると最短で三週間。光皇連は再びゲートを目指して侵攻するはずです」


 デミトリーは溜め息を吐く。強硬策は戦争を終結させるための手段に他ならないが、次戦を前倒しとしてしまっては成功かどうか分からない。その次を見据えた準備が圧倒的に遅れているのだから。


「地球圏からのパイロット志願者の中で使えそうな者はパンドラに送れるよう手配する。無人機や防衛設備に関しても早期に着手しよう」


 攻め込んだはずのGUNSだが、現状は窮地にあるままだ。三ヶ月という準備期間がなくなった今、双方の戦力は底を突くのを承知でぶつかり合うしかない。


「できれば、押収した中性子砲の使用許可をいただきたい」


 ここでクェンティンが意見した。進軍までは許可されていたけれど、遠距離攻撃には触れられていないのだ。


「戦争準備を攪乱するだけでなく、あわよくば兵器製造施設を破壊できます。光皇連は防衛を考えていませんでしたので、効果があるかと」


 デミトリーは非常に悩ましい選択を迫られている。


 通常であれば世論の反応を伺う彼であったけれど、此度は今ここで判断すべきだと思う。

 無差別に撃ち抜くのではなく、軍事施設を狙うならばと。


「民間施設に撃ち込まないのなら許可しよう」


 この許可がパイロットたちの負担を軽減するのであれば、許諾するしかない。

 一人でも犠牲者が減るのであれば、即決すべき提案だった。


 この訪問は有意義な時間となっている。司令官たちは希望を伝えられたし、デミトリーは喫緊の問題を知れた。


 神のみぞ知る結末を好転させるために、双方が全力で動いていく。

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