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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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昼食の折り

 ミハルは落ち着かない日々を過ごしていた。


 イプシロン基地に配備されていたパイロットは全員がパンドラ基地へと異動したものの、慣れない設備や施設の配置に右往左往するばかりだ。


「ミハル、お昼はどうするの?」


 此度もルームメイトはキャロルであった。それだけが心の拠り所とも言える。さりとて、それはキャロルも同じであったことだろう。


「食堂は一カ所しか開いてないしなぁ。今の時間だと滅茶苦茶混んでるよ……」


 今もなお、建造中のパンドラ基地はまだ全てのエリアが稼働していない。戦闘要員を優先したため、娯楽施設どころか食事を取る場所もろくに選べなかった。


「じゃあ、売店で何か買おっか?」

「それがベストだね。晩ご飯の分も買っておこうよ」


 イプシロン基地であればデリバリーまであったのだが、パンドラ基地はその状態となるまで、ほど遠い感じだ。どうにも計画的に配備したとは思えない現状である。


 二人は自室を出て、売店のあるエリアへ。食堂と隣接した場所であったから、ここにも大勢が行き交っている。


「ミハルは何にするの?」

「うーん、そうだなぁ。ラテとサンドイッチ!」

「あたしも同じのにしようかな……」


 とりあえず、行列に並ぼうとする。しかし、不意にミハルは声をかけられていた。


「ミハル!」


 現れたのは光皇連の皇子殿下。ベゼラがパイロットスーツを着込んだまま現れていた。


「ベゼラ、どうしてパイロットスーツ?」


 唖然とするキャロルを余所に、ミハルは返事をしている。


「いやぁ、アイリスは恐ろしい!」


 思わぬ話に眉根を寄せる。

 どうしてアイリス少尉の名前が出てくるのかと。


「ひょっとして、アイリス少尉が教練してるの?」


 そうだとしか思えない。以前に811小隊の教練を行ってから、アイリスはなぜか指導熱が帯びていた。誰彼構わず、首を突っ込んでは扱き下ろす毎日である。


「そう! アイリス、めちゃくちゃ恐ろしい!」


 ミハルは長い息を吐く。異星系の皇子様にも変わらぬ文句を並べていると知って。

 姉弟子ながら申し訳ないと思う。


「まあ腕前は超一流だからさ。それで上手くなった?」


「かなり数値は良い。アイリスに怒られないの優先してる」


 思わず笑ってしまう。歯に衣着せない物言いは誰であっても震え上がるものだ。

 それこそ811小隊はアイリスのおかげで、意識的にも技量的にもかなり改善されたと感じられていた。


「ねぇ、ミハル……」


 ここでミハルは脇腹をつつくキャロルに気付く。

 どうやらキャロルは自己紹介してもらいたいのだろう。


「ベゼラ、紹介するわ。私の親友であるキャロル・ウォーレンよ!」

「おお、ミハルの親友! 可愛いね!」


 いきなりの台詞にキャロルは顔を赤らめた。面と向かって可愛いだなんて初めて言われたかもしれない。しかも相手は皇族だというのに。


「キャロルです! あたしは異星系に興味があるので、またお話しさせてください!」


 ペコリと頭を下げる。遂に念願のゲート裏へと辿り着いたキャロルだが、聞いていたように白色矮星が浮かぶだけで、何の面白みもなかった。


 こうなると遙か彼方にある異星系の生活が知りたくなっている。


「またミハルと来て! 話しよう!」

「言葉、凄いですね! ミハルが教えていると聞いて不安だったのですけど」

「キャロル、私だって不安だっつーの」


 ここで三人は大笑いをする。

 普通に会話できるベゼラに安心するやら驚くやら。努力もさることながら、元々頭が良いのだと思う。


「私は201小隊に入った」


 ここで聞かされたのはベゼラの配備について。

 まだ先のことだと考えていたけれど、ミハルは先日の演説を見ている。軍部が許可するのであれば、配備される実力を持っているのも分かっていた。


「ベゼラの覚悟を見たよ。頑張ってね?」

「頑張る。アイリスが前衛機!」


「マジなの? それでしごかれてるってわけか……」


 201小隊の隊長であるアイリスはミハルが抜けたことで前衛機に戻るらしい。加えて、ジュリアが木星へと異動したことにより、その位置にベゼラが入っていた。


「アイリスは凄い。でも私はついていく」


 圧倒され続けているのかと思いきや、ベゼラはそんな風に言った。

 ミハルは思う。彼はやはり一流のパイロットになれるはずと。相手の実力を認め、それでも向かっていけるのならば、それは絶望していない証拠。上を向くパイロットが成長しないはずはなかった。


「隊は違うけど、同じドックだからいつでも声をかけてね?」


「分かった。ミハルも頑張れ!」


 何だかよく分からない激励を受けてしまう。しなしながら、ミハルは言われずとも立場を分かっている。


 頑張るだけ。戦争終結に向けて彼女は戦うだけであった。


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