初めてのイプシロン基地にて
三日が経過していた。
通知があったまま、大勢がイプシロン基地へと配備されている。
ミハルはステーションまでグレックを迎えに来ていた。
「少佐! こっちです!」
乗客の大半が立ち往生していたのには笑ってしまう。
かつては自分もそうだった。セントラル基地よりも遥かに大きなこの基地はステーションからして案内板だらけ。迷う以前の問題である。
「ミハル、迎えに来てくれたのか?」
「司令部に連れてきてくれって頼まれていますので。私は忙しいのですけどね?」
「ほざけ。さっさと案内しろ」
ステーションは巨大な基地のS方向側にある。安全を考慮した結果なのだが、部隊が陣取るエリアとは正反対なのだ。従って初見で目的地に辿り着くのは至難の業であった。
「こっちに行きましょう!」
「おい、ナビは真っ直ぐだぞ?」
「みんなそっちに行くでしょ? 昇降機待ちで何時間も費やすつもりですか?」
私はベテランなんですとミハル。得意げにグレックを案内していく。
「閑散としたエリアだな?」
誰も歩いていない通路。それもそのはず、ナビゲーションの指示に逆らうようにミハルは進んでいるのだ。流石に間違っているのではと疑問を感じてしまう。
「ここはオリンポス基地に異動した裏方さんが住んでいた場所なんです……」
誰もいない理由がミハルから語られた。
グレックはオリンポス基地が消失した結果しか分かっていない。けれど、その背景には幾多の人生が含まれているのだと知る。
「そうか。銀河間戦争だもんな……」
グレックは手を合わせた。名前も顔も知らない一般従事者に。命を擲ってまで人類に貢献した人たちのため。
「俄然、やる気が湧いてきた……」
これまで正義感とか露わにしたことなどない。だが、無差別に人を抹殺した光皇連に対しては魂が震えている。絶対に許すべきではないのだと。
「ミハル、俺が支援機を務めるんだ。一機も逃すんじゃないぞ?」
思わぬ台詞にミハルは驚くけれど、元よりそのつもりだ。
善悪云々はともかく、職務を全うするつもりである。
「もちろんです。人類の勝利にて、この戦争は終わらせます」
司令部へと赴くのは割と気が重かったグレックなのだが、今は戦う決意を新たにしている。
勝利するために、ここまで来たのだと……。




