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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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次なるフェーズへと

 旗艦ガナハの制圧は三日を要して遂げられていた。


 以降もGUNSの艦隊が宙域に居残り、再び光皇連の部隊が集結することを阻止している。


 本日は臨時的な非公式通信会議が行われていた。軍規改定を強行したデミトリー総長の発案によるものだ。


「急な会議で申し訳ない。議員たちはあらゆる方面から罵声を浴びていると思う。しかし、私たちは間違っていない。これからも侵略者に毅然と対応していく。此度の会議はその意思確認の意味合いもある」


 デミトリーが言った。

 やはり人権団体の圧力が凄まじく、議論もないままに決定した彼は連日のように意見書を受け取っている。


「木星では賛否両論様々です。概ねマスコミはプラスに考えているようですけれど、侵攻計画は予定通り行うのでしょうか?」


 木星圏代表であるマンセルが聞いた。


 ゲート裏の残存勢力は、そのまま脅威となり得る。従って、その排除に関しては軍規改定時よりも反応は抑えられていた。しかし、基地をゲート裏に建造するとなれば、穏やかに済むとは考えられない。


「変更はない。即座にパンドラ基地の移送を行う。歴史に残る罪人と罵られたとして、それが我ら人類の歩むべき道だ」


 デミトリーは疑っていない。

 どれだけ対話を求めたのかも知らぬ者たちに批判する権利などないと。どれだけの人命が戦争により失われたことを棚に上げる者たちには耳を貸すつもりなどなかった。


「地球圏は問題ない。現状、地球人たちは怒りを覚えている。何万という同胞が一瞬にして失われたこと。侵攻は確実に民意と合致しているな」


 ゴードン首相が意見した。

 地球圏は此度、何万という人員をイプシロン基地に送り込んでいる。士気の高さはどの星系よりも高い。


「地球圏の多大な支援に感謝する。人員だけでなく、装備や金銭に至るまで。地球圏の人たちの協力には、これ以上なく勇気付けられている」


 デミトリーは謝辞を伝えたあと、参加してもらったクェンティンに声をかけた。


「少しの被害もなくゲート裏を制圧してくれたことには、どのような賛辞の言葉も霞んでしまう。本当に良くやってくれた」


「ああいえ、我々は立案しただけでありまして、二人の女神が仕事をした結果でしかありません。正直に殲滅までは考えていなかったのですけれど、これで計画を安全確実に遂行することができます」


 クェンティンが返す。彼女たちならと考えていたけれど、事もなげに成した二人には頭が下がる思いだ。


「おかげで余計な波風が立たずに済んだ。ゲート裏に居座った艦隊の巨大さも脅威を与えるに充分だったな」


「あの船は改修して使おうと考えております。構わないでしょうか?」


 制圧した旗艦ガナハ。クェンティンはそれを軍部の所有物にしようとしているらしい。


「それは構わない。どうするつもりだ?」


「ええ、捕虜がかなり増えましたので、居住棟にしようかと。武装は全て解除して、管理する予定です」


「それは人道的で良い案ですね! 隔離もできますし」


 捕虜の扱いは難題である。人数がかなり増えた現状で、敵艦をそのまま使えるのであれば問題は最小限。人権団体にもアピールできるポイントとなるだろう。


「あと既に連絡しておりますが、司令官級二名と光皇連の後継者を捕らえました。軍部としましては有効に活用したいのですけれど、どうでしょうか?」


 クェンティンが続けた。

 重要人物は三人。有効活用とは当然のことながら、交渉に使うという意味合いだ。


「光皇連が捕虜引き渡しに応じると考えるのだろうか?」


「分かりません。何もしないより、声明を出すべきかと。ただし、軍部が考える交渉は問題の団体が騒ぎ出す可能性が高いのです」


「ほう、何を考えているというのだ?」


 司令官級は兎も角として、実子であれば交渉に応じるかもしれない。だが、集まった面々はクェンティンが話す問題を察知できなかった。


 徐にクェンティンが口にする。軍部内で話し合った結論を。


「交換条件としてカザイン光皇の首を求めます」


 全員が声を失っていた。

 カザイン光皇が戦犯とされる人物であるのは周知の事実だが、流石にその条件では成立など考えられない。


「いや、クェンティン司令、我らは素人だが、流石に結果を予想できるぞ?」


「もちろん、拒否されるでしょう。しかし、その過程が政権打破の大義名分となり得る」


「どういうことだ?」


 ゴードンは眉間にしわを寄せる。カザイン政権の打破といわれても、戦争に勝つしかないように思う。


「亡命を果たしたベゼラ・リグルナムに交渉させます。彼は皇位継承権を持つ正当な皇子殿下。彼が真実を伝え、交渉することで戦争の正当性を明らかとします。戦後処理も随分と楽になるでしょう」


 確かに侵略していくのであれば、光皇連の住人が受け入れてくれるはずもない。明らかに人類は敵対していることだろう。


「言わんとする内容は理解した。しかし、団体の機嫌を損なうほどの話だろうか?」


 ゴードンが聞いた。軍部の立案は同意できるものであり、特に問題点はないと思われる。


「それがベゼラ・リグルナムが発案者でして、彼は電波をジャックし、公開でエザルバイワを拷問にかけると口にしております」


 ざわつく会議室。通信会議であったものの、隣り合う者同士が視線を合わせている。


「静かに! クェンティン司令、軍部はその要望を呑むつもりなのか?」


「良案だと思いました。我らの本気を伝えられる。もう防衛に徹するのではないと。徹底的に戦う用意があることを知らしめることができます」


「むぅ、しかし拷問とはな……」


 事前に聞いていたように人権団体が黙っていないだろう。犯罪者にまで人権を求める彼らは捕虜の扱いに声を荒らげるに違いない。


「ベゼラ君は本気です。なぜなら、彼のご家族は皇都レブナに捕らわれている。拷問は同じことをできるという意思表示。彼のご家族を救う手段でもあるみたいですね」


 真相を聞いた議員たちは頷いている。全て了承したわけではなかったが、亡命した彼にも事情があることを知った。


「クェンティン司令、その件については後日改めて。今はゲート裏にパンドラ基地を移動させることが先決だ。それまで口を挟んできたのなら、全てが台無しとなる」


「承知しました。軍部でも細部を詰めておきましょう」


 これにて急な会議は閉幕。意見交換は結論持ち越しという形となっていた。

 しかしながら、方向性に変更はない。GUNSは侵略戦争を続けるつもりだ。

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