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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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SOA作戦

 一週間が経過し、ミハルはまたもや司令部に呼び出されていた。


 どうしてか部屋には重鎮の二人だけではなく、アイリスやベイル、更にはベゼラまでもがいる。


「えっと、何の集まりなんでしょうか?」


 ベゼラまでいたことが戸惑う原因。セラフィム隊だけであれば、配属先に関する話かもしれなかったというのに。


「ミハルさん、まあお座りください。以前にもお話しした件ですから」


 以前と言われても、いつのことなのか。割と司令部に呼び出されているミハルには見当がつかない。


「話は301小隊の特別任務についてです。ゲート裏には依然として光皇連の艦隊が陣取っております。SOA計画を実行するに当たり、それを排除しようというものです」


 その任務は確かに聞いていた。かといって、ベゼラの存在は今も不明なままだ。


「じゃあ、どうしてベゼラがいるのです?」


「彼は光皇連の旗印ですからね。一応は我々の計画について知ってもらおうと考えております」


 なるほどとミハル。この先に和平が成立するのなら、ベゼラの存在が大きいのだと理解している。彼を味方に付ける意味でも、計画に同意してもらう必要があるのだと。


「ミハル、簡単に言えば、301小隊だけで残存艦隊を殲滅するという任務だ。まあ、私とミハルだけで充分だと伝えたあとなんだが……」


 アイリスは部隊の必要性を否定したらしい。それはたった一機で殲滅した前回の突入時で得た感覚によるものだ。


「ミハル君、アイリス少尉はこう言っているが、今回は巨大な艦船がゲート裏に潜んだままなのだ。内部にどれだけ戦力を残しているのか分からん。他の艦隊は二十隻程度だが、偵察機はことごとく撃墜されている。戦力把握は依然として、未確認のままだ」


 クェンティンの説明にアーチボルトが頷いている。


「まあそれで偵察も兼ねて部隊を送り込むことにしたわけです。できれば殲滅までいきたいところですが、光皇連の戦力によっては撤退を視野に入れております。特に急ぐ計画でもありませんし」


 聞けば成功ありきの作戦ではないらしい。今回は光皇連の出方と戦力把握に重点を置かれているとのこと。


「巨大な艦船って、どのようなタイプなのですか?」


 ミハルは疑問を口にした。

 艦船はいずれも巨大であるから、わざわざ巨大と付けた理由を知りたく思って。


「移動式のユニックと呼ぶべきもの。光皇連は前線基地がありませんでしたからね。機動力は如何ほどもないと考えますが、搭載される航宙機の数がまるで読めないのですよ」


「ユニックレベルだと破壊は難しいかと考えますけれど……?」


 艦船でさえ大きさによっては破壊などできない。それがユニック級の大きさであるのなら、ダメージを与えるくらいしかできないはずだ。


「ええ、その船については白兵戦を考えております。既に各星系からGUNSの特殊部隊が集結しておりまして、内部から制圧する予定です」


 ここでベゼラが手を挙げた。ずっと聞いているだけだった彼だが、どうやら意見があるようだ。


 今回は肉声ではなく、翻訳機を介している。誤解を生じさせないためだろう。


「旗艦ガナハにはエザルバイワがいる可能性が高い。白兵戦をするのなら捕虜とするべきだ」


 アーチボルトは眉間にしわを寄せた。まあしかし、聞き慣れぬ名前は記憶との照合に時間などかからない。


「エザルバイワとは光皇の実子ですね? 前線まで赴いているのでしょうか?」


「カザインは権力の独占を望んでいる。エザルバイワに戦果を与えようとしているはずだ。ガナハの建造はエザルバイワのためであるという話を聞いている」


 有益な情報であったけれど、相手の顔が分からなくては射殺してしまう可能性が高い。

 アーチボルトは小さく息を吐いてから頭を振った。


「心配ない。私は白兵戦部隊に参加しようと考えている」


 思わぬ話に全員の目が点になってしまう。彼は皇子殿下であり、加えて捕虜ともいえる立場であったからだ。


「ベゼラ君、流石にそれは許可できない。理由は君の存在が全て。亡命者であり、和平の切り札ともいうべき人間を白兵戦になど使えない」


 クェンティンが即座に否定する。ベゼラの命は何よりも優先すべきものなのだと。


「私は太陽系に住む人たちに感謝している。それは部下たちも同じ。決して裏切ることはないし、保護されるためだけに赴いたわけではないのだ」


 ベゼラは決意を語っていく。

 亡命までした彼は安穏と生き延びるために来たわけではないと。


「エザルバイワの捕縛は私に任せて欲しい」


「待ってください! 白兵戦なのですよ? 貴方の首にあるチョーカーはちょっとした誤射でさえも猛毒を注入してしまいます! 考え直してください!」


「アーチボルトさん、それくらいで死ぬのであれば、光皇の加護がなかっただけ。私は最初に述べたはず。光皇連の民を救うために来たのだと」


 顔を振るしかないアーチボルト。SOA作戦に白兵戦は必須であったけれど、このような事態は彼も予想していない。


 さりとて、カザイン光皇の実子を捕らえることは戦局に影響を与えるだろう。アーチボルトはメリットとデメリットを天秤にかけたあと、渋々と頷く。


「分かりました……。けれど、貴方が矢面に立ってはなりません。我々は白兵戦の熟練者を用意しています。貴方はエザルバイワが誰であるのかを指示するだけですからね?」


「まあ、仕方あるまい。承諾しよう」


 思わぬベゼラの参加となってしまったけれど、彼が後方で大人しくしてくれるのであれば、許可するしかないだろう。何しろ、新たな交渉の切り札が手に入るかもしれないのだから。


 作戦は三日後。失敗ありきの計画であったものの、想定よりも重大な任務となっていた。

 戦争を終わらせるため。交渉のテーブルにカザイン光皇が着くようにと。

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