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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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反応速度

 飛行レッスンのつもりが本気を出してしまったミハル。結果として、ベゼラをぶっちぎってしまったものの、今もまだ戸惑いを覚えている。


 昇降機から飛び降りるや、ミハルはダンカンに駆け寄っていく。


「ダンカンさん、今のデータを見せて!」


 確認したかったのは間違っても自分のデータではない。見たいデータは後ろを飛んでいたベゼラの飛行詳細に他ならなかった。


「ああ、かなり良いデータが取れた。イケメンは腕前も男前だったらしい」

「つまらないこと言ってないで早く表示してよ!」


 渾身の冗談も聞き流されてしまう。

 頭を掻きながらダンカンは端末を操作し、モニターに得られたデータを表示する。


 一応はミハルのデータも表示したけれど、生憎とミハルは自分のデータに興味がないようだ。彼女は一心にベゼラのデータだけを見ていた。


「これは……?」


 てっきりど素人だと考えていたのに。

 ところが、どう見ても一定の基準を超えている。操縦入力の正確さもさることながら、彼の反応速度は稀に見るものであった。


「遅延0.08Sって……」


 遅延の評価だけが突出していた。それは後衛機のみに判断される項目であり、前衛機の機動に対する反応速度のことである。


「うむ、アイリス少尉でもこの数値は滅多に出ないぞ?」


 一流とされる時差平均は0.5秒以内。0.4秒を切るパイロットは殆ど存在しなかった。加えて、超一流の壁である0.1秒を切っているなんて、どうにも信じられない。


「他のデータはどうでしたか?」

「概ね良好だったな。まあしかし、入力操作でもB判定だから、今のところ特筆すべきは反応速度だけだな」


 異様な追尾機動は全て反応速度であったらしい。AIの判定でトリプルA。これ以上の評価は存在しないものであった。


「これって設定を詰めていけば伸びます?」

「煮詰まっていけば、恐らく改善するだろうな。入力操作に関しては努力しかないだろうが……」


 溜め息が漏れてしまう。

 なぜなら彼は亡命者。幾ら高い数値を出そうとも戦線に投入されるとは思えない。


「ミハル?」


 ここで降機したベゼラがやって来た。

 彼にもデータの精査をしていることくらいは分かったはずだ。


「ベゼラ、凄いよ。私、びっくりしちゃった。貴方ってとても良いパイロットなのね?」

「本当か? 私は戦える?」


「充分! まあ、立場的な問題があるけれど……」


 そういえば皇子様だと聞いている。

 益々、彼が戦線に配備される可能性はないとミハルは思い直していた。


「ダンカンさん、このデータって司令部に?」


「そういう命令だからな。ミハルも時間があれば来て欲しいと連絡があったぞ?」


 やはりミハルは司令部に踊らされただけらしい。

 少しばかり腹立たしく思うも、ミハル自身にだって言いたいことがあった。


「ベゼラ、悪いけど部屋まで一人で帰ってくれる? 私は用事ができた」

「分かった。また会いたい」


 どこまで本心か分かりかねるのだが、思わぬ返答にミハルは顔を紅潮させた。

 単語で話されると、どうにも勘違いしてしまいそうである。


「ごめんね!」


 誤魔化すようにドックを去る。


 今は意見するだけ。自分をダシに使った司令部に文句を言うだけであった。

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