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Solomon's Gate  作者: さかもり
第六章 新たなる局面に
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最終確認

 ミハルたちが木星を発つ頃、GUNSの緊急的な通信会議が行われていた。

 主な議題は今後の戦闘について。どうやって長引く戦争を終えられるかだった。


「なるほど、やはり光皇連の皇子殿下を旗印とするしかないというわけか……」


 軍部からの説明にデミトリーは頷きを返す。

 まるで終着点が見えなかった戦争だが、亡命者の存在により動きが活発化していた。


「彼は既に反乱分子になり得ません。奴隷ともいうべき扱いですら受け入れております。彼が望むもの。それは光皇連の解放であり、カザインという圧政者の排除だけなのです」


 亡命した者の名はベゼラ・リグルナム。十二ある星院家の皇子殿下である。

 会議に参加したクェンティンは彼の人となりと立場を伝えていた。


 ベゼラの首に取り付けられたセンサーは犯罪者に使用されるもの。ボタン一つで即死に至る猛毒が体内へ注入されるというものだ。

 生殺与奪を権利を握られた彼が人類に牙を剥くことにはならないのだと。


「ゲートへの侵攻は彼の意志。我らは人道的に攻め入り、圧政に苦しむ者たちを解放するというシナリオです」


 明確に風向きが変わっていた。

 オリンポス基地の消失だけでも、反対派の声が小さくなっていたのだ。それに加え、敵国の皇子が亡命し、高い志を見せたのなら、法案の改定もスムーズに運ぶと思われる。


「団体が如何に強固な姿勢に出ようと、私はもう折れるつもりなどない。戦争はいち早く終わらせるべきだ。軍部の提案を全面的に支持し、法の改定とする」


 力強いデミトリーの宣言であった。

 やはりオリンポス基地が一瞬にして消え去った事実は軽視できない。同じことがイプシロン基地でも起こり得るからだ。


「戦闘員だけでなく、従事者までもが一分先の生死も分からぬ状況だ。彼らの死に報いるためにも、我々は停滞ではなく前へと進むことにする」


 デミトリーが続けた。彼がこれ程までに明言したことはない。如何なる障害も関係なく、議題を進める覚悟のよう。


「何人たりとも異論は認めん……」


 最後の言葉に各所の代表者たちも頷くしかできない。

 元より彼らも分かっている。敵国の人権まで考えるなんて馬鹿げていることを。同族たちを守るために、矢面に立っていかねばならないことを。


「改定法案はこの今より施行。これよりGUNSはゲートを抜け、侵攻が可能となる。当然のこと反発も予想されるが聞く必要はない。光皇連まで赴き、和平を結ぶ役目を果たせないのなら、黙っておけと言えば良い。偽善者はどうせ何もできん」


 デミトリーの発言に拍手が返されていた。

 太陽系全域で戦争への不安が満ちた今こそが動くべきとき。この会議は基本的に密談であって、公開される予定もない。だからこそ、彼は強い口調で言った。全損害の原因が人権団体であるかのように。


「デミトリー総長、ならば我ら軍部は命を賭して戦います。亡くなった全ての兵たちのため。ご遺族のため。果てには未来に生きる子供たちのために」


 続けられたクェンティンの話に更なる拍手が送られる。これにてこの会議の意義は達せられた。

 この集まりは意思確認でしかないからだ。軍規改定を強行する上で、反対者がいないかどうかの最終確認に他ならない。


 本日の決定により、銀河間戦争は新たな局面を迎える。果てしない戦いに終止符が打たれるのかもしれない。

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