再びイプシロン基地へ
再びイプシロン基地へと戻ったミハルたち。しかし、旅程はいつもより時間がかかっていた。といういのも、地球圏で製造されていたオリンポス基地の部品が多く運ばれていたからだ。
「まぁた基地建設でも始まるのかな?」
「衛星も近くに寄せられてたね? たぶん軍部も色々と動いているんだよ」
イプシロン基地に着くやいなや、変化を感じている。
ゲートのずっと裏側にあった衛星パンドラがゲートの直ぐ脇にまで移動していたのだ。
加えてシャトル内の放送でも、建設部品搬入のため通常より遅れると案内があった。新たな局面を迎えていることくらいは二人にも察知できている。
「ミハルはいつから異動なの? あたしは明日から部隊に顔を出すつもりだけど」
キャロルが言った。
ミハルは目を細めている。配属早々に愚痴を零していた彼女はもういない。過去三戦の全てに出撃したキャロルは今や立派な戦闘機パイロットのよう。
「いや、まだ全然。グレック隊長も言ってたけど、401小隊は全滅しちゃったからなぁ。キャロルの部隊に混じっても良い?」
現状で分かっているのは二人だけなのだ。隊長とデリク一等曹士しか判明していない。
「聞いてみるよ。まあミハルなら301小隊に入った方がいいと思うけど?」
「どうせ同じドックでしょ? 必要なら301小隊に入るけど、私はもう異動が決定しているし、同じ最前線の部隊に混じるのは混乱するだけだよ」
キャロルの部隊は正式にライン内の配備になり、これまで301小隊の専用ドックだった第八ドックにそのまま入っていた。
「それもそうか。じゃあ、オジさんたちを揉んでやってよ。トップシューターのフライトを見せつけてやってちょうだい」
キャロルも乗り気のよう。ずっとミハルの後衛機を希望しているのだ。成長した姿を見てみたいし、逆に見てもらいたかった。
「キャロルのハーレム部隊に行くのは憚られるけど、しょうがないね!」
「ま、あたしは811部隊の姫だから!」
爆笑する二人。既にミハルはドックで何人かと挨拶していたし、何の問題もないようだ。
部屋に行く途中、級にミハルのギアが音を立てた。それは司令部からのメールであり、シャトルの到着を知って送信されたものに違いない。
「あら? 早速と呼び出しだわ。悪いけど、荷物は部屋に持っていってくれない? 訓練については私から言ってみるし」
「おおぅ、司令部から直接メッセージがあるなんて、どんだけ出世してんのよ?」
「アハハ、みんな良い人だよ!」
言ってミハルは駆けていく。勝手知ったる我が家のように。
司令部へ行くというのに、彼女の足取りは軽かった。




