的確な支援
ミハルたちはアルファ線にて戦闘を続けている。此度は十分すぎる支援があり、ミハルの機動を阻む障害は何もなかった。
「ミハル、Wラインに入れ! 密度が上がっている!」
「了解。DN方向より進入します」
ジュリアは圧倒されたままであった。途中から声掛けがなくなり、ミハルは思うがままに飛び続けている。しかしながら、アイリスは的確に支援を行っていたし、ミハルも文句を口にしない。加えて機動に困ったり、裏を取られるような場面は一度として訪れなかった。それはつまり完璧に前衛機と後衛機が機能していることであって、アイリスがいるだけでミハルは自由に飛び回れることを意味している。
淡々と撃墜していく二人。ジュリアはその都度支援を行っていたけれど、正直に役立っているようには感じない。アイリスのようにミハルの機動を先読みしきれなかった。
「これがトップパイロットの世界……」
目に焼き付けておかねばならない。記憶に深く刻みつけようと思う。どうやってアイリスがミハルの機動を読んでいるのか。どうして狙いが重なってしまわないのか。
機動の全てを特等席にて観覧できるジュリアは支援よりも二人の機動に集中していた。
「ジュリア、何をやっている!? 敵陣の真っ只中だぞ!?」
アイリスが怒鳴りつけるも、ジュリアは返事をしない。ただミハルの軌跡を追いながら、アイリスの機動を確認していた。
「ちっ……ミハル、もうジュリアは使えん。私が愚弟の分も支援するから許せ!」
「別に平気です。支援は頼みます……」
ミハルは気にならなかった。アイリスが常に先を読んでくれたから。声に出さずとも意図を察し、反撃の隙を与えない。それどころか彼女はジュリアと違って、毎回確実に敵機を撃墜してくれるのだ。
「私……成長してるのかな?」
そう思えて仕方なかった。グレックの支援も同じように的確なものだったはず。しかし、今はずっと楽に思える。敵機の数が少なかったことや自身の技量不足もあるだろうが、声出しなどなくてもアイリスの機動が予測できたし、ストレスに感じることは少しですら存在しない。
今ならば、はっきりと理解できる。仮に同じ世界が見えたとしたら、機動を口にしなくても伝わるのだと。
支援機の経験が乏しいミハルに同じようなことはできなかったけれど、アイリスは事もなげにそれをやってみせた。
「やっぱ凄い人だ……」
改めてミハルはアイリスというパイロットがどれ程に優れているのかを認識させられている。大軍を相手に戦えているのは彼女がいるからだ。アイリスの支援なくして、それは成立しない。重イオン砲を操る余裕まで生み出すなんて他の誰にできるものかと。
「フハハ、いいぞミハル! 突き進め!」
ミハルの心情を知ってか知らずか、アイリスは大声を張った。誰よりも自信家。誰しもが認める腕前。加えて彼女は決して現実を悲観しない。
「エイリアンを絶望の淵に案内してやれ!――――」
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