戦果
司令部は一応の落ち着きを取り戻していた。懸念された中央部の補給も代替部隊が思いのほか機能し、持ち堪えていたからだ。
「どうやら敵軍の士気は落ちているようですね。積極的に攻め入って来る機体が減っています」
アーチボルトがデータを確認しながら話す。明らかに有人機の動きが悪くなっている。それも何故かオリンポス基地の消失を境として。
「アーチボルト、私はもう光皇連を侮らんと決めたのだ。まだ決めに行く頃合いじゃない。勝負は中央部の補給が完了してからとする……」
「良い心がけです。足を掬われるのは得てして油断が原因でありますから。光皇連が攻め入って来ないのであれば、我らも静観すべきです。今以上の被害を抑えるために……」
許容できる限界値を超えた現状は強気に攻められない。万全を期して戦う以外の方針しか選べなかった。
「それで例のミサイルがまだ残っている可能性は本当にないのか?」
「絶対とは言えませんが、恐らく打ち止めでしょう。宙域には二人のエースが揃っています。先ほどよりも盤石だろうと考えますが……」
アーチボルトの推測にクェンティンは長い息を吐く。こうも心配性であったかと考えさせられていた。
「この大戦で得るものはあっただろうか?」
独り言にも聞こえるクェンティンの呟き。しかし、アーチボルトは参謀として聞き逃さず、真摯にその回答を口にする。
「少なくとも我々は光皇連の支配階級にあった者を手に入れています。彼こそがキーマン。銀河間戦争を終結させる鍵を手にしたと私は考えます……」
そういえば星院家という支配階級の姓を名乗った者が亡命していた。まだ間者の可能性を捨てきれないでいたけれど、武装もせずに乗り込んできた男は疑いの目を払拭できるほど真面目で実直な人柄であった。
「彼が何をもたらせてくれるのか。鵜呑みにはできないだろうが、確かに有益な情報が得られるかもしれん」
今のところ戦果においては失うものの方が圧倒的だ。アーチボルトの返答ははぐらかすようなものであったけれど、そう話すことでしか回答がなかったのだとクェンティンは理解した。
「何にせよ戦うしかないな。逃げるという選択肢がないのだから……」
光皇連が攻め込んでくる以上は戦うだけである。太陽系を捨てて宇宙空間を彷徨うなんて不可能だ。既に人類の規模は全員が移動できる程度を超えている。バースト時に光皇連が星系を捨てられなかった事実も同じことだった。
果てしなく続く銀河間戦争。どちらかが勝利を収めるまでそれは終結を見ないだろう。
本作はネット小説大賞に応募中です!
気に入ってもらえましたら、ブックマークと★評価いただけますと嬉しいです!
どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m




