仕切り直し
アイリスを先頭にしてミハルは縦列編隊を組んでいた。ようやくとガンマ線を越え、ベータ線へと入る。
「おいジュリア! 無事か!?」
アイリスが真っ先に声をかけたのは、やはりジュリアだった。姉馬鹿であるのは知っていたけれど、こうも心配なら退役させればいいのにとミハルは考えてしまう。
『姉貴!? 出撃可能になったのか!?』
「当たり前だ。謹慎は正午まで。もう私を縛るものはない。さっさと後ろにつけろ!」
所属していた部隊の都合も考えず、アイリスはジュリアを急かす。しかし、ジュリアとしても緊急的に合流させてもらった以上は説明を果たさねばならない。
しばらくしてジュリアから応答がある。小隊長の許可を得られたこと。アイリスの命令であっては拒否できなかったという話を。
「ミハル、後衛機の経験は?」
ベータ線を抜ける途中にアイリスが問う。どうやら、このままの編隊を維持するつもりはないらしい。
「配属してから一度しかありません……」
ミハルが答えた。彼女は最初の出撃こそ後衛機であったけれど、それ以降はずっと前衛機を務めている。
「そうか、なら私が最後尾に入る。ジュリアは中央。後方は私が見る。だからお前は出来る限りの支援をミハルにしてやれ……」
三機編成では縦列編隊より前衛機に二機の支援がつくというのが基本である。ところが、アイリスはトレイルとういう縦列編隊を選択し、編成を変えるだけで挑むという。
『姉貴、俺のせいか……?』
「気にするな。お前は後方視野が甘い。そこを私がカバーするだけだ。お前は以前と同じようにミハルの支援をすればいい……」
いつも通りであるのはジュリアにとって機動しやすい提案だ。しかし、それは同時に実力不足を指摘されていることであり、受け入れ難い話でもある。
「分かった。俺は絶対にミハルの狙いを外さない……」
ところが、ジュリアは受け入れていた。先ほどの不甲斐ない機動が思い出されて反論などできなかったのだ。今できることを精一杯に。命を懸けてミハルを支援しようと思う。
「それでこそ我が弟だ。あの世で父も喜んでいることだろう……」
「父さんはまだ生きてるけどな?」
ブラックジョークに思わずミハルが笑っていた。それはジュリアに伝染し、最終的にアイリスまで笑い声を上げている。
いよいよアルファ線へと突入していく。情けない結果に終わった先ほどの恥を雪ぐかのように、ミハルはスロットルを踏み込んでいる。
ミハルを先頭にして中位にジュリア。最後尾をアイリスが担当していた。
万全の布陣であるとアイリスは考えている。ミハルと自身が異なる機体に乗るだけで戦況は一変すると確信していた。
「さあ、そろそろエイリアンにはご退場願おうか!!」
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