経過報告
光皇路に停泊する巨大戦艦の一室。そこはグリダル局地司令が指揮を執る司令室であった。
彼はハニエムから受けた命令をほぼ完遂している。光皇路に運んだ全機を出撃させろという話も、勝利してはならないという指示も。
「グリダル局地司令、どうやら光皇の槍は新造基地へと突き刺さったようです……」
「やれやれだな……。これで大見得を切って報告できるというもの。難題を押し付けるのは、これっきりにして欲しいものだ……」
第一目標であったオリンポス基地を陥落させたことはグリダルにとって吉報である。勝ってはならない戦いに戦果を求めるという矛盾した要求に応えたのだ。少なくとも文句を聞くことはないと安堵の息を吐いた。
「ただ第二目標であった金色の機体は撃墜できなかったようです……」
「どういうことだ? 念のため五番艦は一番最後に出撃したはずだが?」
グリダルは眉間にしわを寄せる。三発で仕留めるために一番最後の出撃としたのだ。新造基地を狙う艦船の奥から金色の機体を撃墜しようと。
「それがいち早く気付かれてしまいまして……。命令通りに五番艦は三発を発射したのですが、金色の機体は平然と撃ち落としてしまったようです……」
その報告は正直に受け入れ難いものであった。光皇の槍は発射されてから数秒で光速域に達する。航宙機の砲身が連射できないことは分かりきっていたし、三発あれば確実に仕留められると考えていたのに。
「幸運なパイロットだな? 流石に狙っては撃ち落とせんだろう……」
「そう思います。運良く連鎖的に誘爆してしまっただけかと……」
どう考えても狙ってできる射撃ではない。だとすれば、それは天運が味方しただけだ。かつて存在した光皇の如き輝きが幸運を引き寄せただけであろうと。
「金色の機体については報告書を上げなくていい。元より、それは指示にないものだ。我らは新造基地を撃破した。それだけの戦果で十分だろう……」
言ってグリダルは席を立つ。ハニエムに此度の戦果を報告するつもりらしい。残された任務は敗戦するだけである。従って指示する内容は何もなかった。
「撤退は許さん。出撃した者は勝利するまで戦えと通達しておけ……」
後を部下に任せ、彼は司令室をあとにしていく。もう自身に課せられた責務は何もないのだと。不敵な笑みを浮かべる彼はこの後の展開を予想し終えている。
辛くも太陽人が連軍を退け、互いが消耗しただけの結果であるはずだと……。
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