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Solomon's Gate  作者: さかもり
第五章 動き始める世界
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大量破壊兵器

 ミハルたちが戦線に戻ってから二時間ばかり。彼女たちはまだエネルギーに余裕があったけれど、他の機体は補給を受ける時間帯に差し掛かっている。


『司令部より全機に。最優先目標がゲートより現れた。合計五隻。周囲を艦船によって何重にも囲われているため、重イオン砲による撃墜は困難となっている。撃ち放たれるミサイルを迎撃されたし』


 作戦の一つが失敗に終わったらしい。ゲートから現れるや撃ち落とそうとしていたものの、ミサイルを搭載した船は進攻した大艦隊の中心である。重イオン砲を意識したのか、N方向からの攻撃を阻止するかのような編隊であった。


「ミハル、撃ち落とすぞ!」


 即座にアイリスが声を上げた。ゲート裏に設置された重イオン砲が撃ち抜けないのならば、正面にいる自分たちが成すべきだと。


「少尉が頼みの綱だと思います。激しい機動を控えますから、必ずや撃ち抜いてください……」


「無論だ! 外すつもりはない!」


 一発も撃たせないのは不可能だった。しかし、全てを一射で撃ち落とせたのなら、発射される数は最小限に抑えられるはず。数発で済めば、防護壁で何とか凌ぎきれるだろうと。


「落ちろォォッ!!」


 マーカーが更新されるやアイリスは撃ち放った。宣言した通りに彼女は最初の一撃を艦船に命中させている。


「もう一隻っ!」


 照射ラグが回復するやアイリスは二隻目を撃ち抜く。敵艦が方角を固定するまでに、一隻でも多く撃沈しなければならない。


「えっ!?」


 次の瞬間、ミハルは気付いた。

 アイリスが撃ち抜いた艦の向こう側。全艦がオリンポス基地を狙っているように見えたけれど、爆発痕の奥にある一隻だけがイプシロン基地方向を向いていることに。


「少尉! 一隻だけイプシロン基地を狙ってます!」

「なんだと!?」


 どうやらアイリスは気付いていなかったらしい。直ぐさま狙いを変えるも敵艦はハッチを開いてミサイルの発射準備に入っていた。


 最高速度に達してしまえば、撃ち落とすのは困難だ。狙いがつけられる間に撃墜せねばならない。


「ミハル、オリンポス基地には悪いが先に迎撃するぞ!」

「了解です!」


 ミハルも機首を直線上へと向け迎撃態勢に入る。ロックスライドを外して照準を表示した。


 重イオン砲の照射ラグは約四秒。発射され最高速に達すれば、恐らくアイリスには何もできないだろう。だからこそいち早く艦船の撃破を目標としている。アイリスもまた照準を覗き込んでいた。


「撃たせるかぁぁっ!」


 アイリス渾身の一射は惑うことなく一点を目指す。ところが、敵艦は既にミサイルを発射したあとだ。三発の大量破壊兵器が撃ち放たれてしまう。


 放たれた内の一発を撃ち抜きつつ、重イオン砲が敵艦に命中。大爆発を起こすも発射された二発は進路をイプシロン基地方向とし、加速し始めていた。


「ミハル!?」

「黙ってください!」


 ミハルは集中していた。マッシュルームよりも速いと聞くミサイルは照射ラグを考えると通過までに一発しか撃てない。だからこそ彼女は考えた。


「一発で二つを……」


 直進のみであると聞いたのだ。従ってミハルは二発の進路を予想する。たった一射で二発を仕留められるポイント。有効射程内に到達する時間を逆算して……。


 最大ズームでポイントを映し出す。よもや自分が狙われているとは知らない彼女だが、一発ですら逃すつもりはなかった。


「必ず仕留める……」


 即座にポイントを決定し、タイミングを計る。小さく息を吸った直後、


「撃ち抜けぇぇえええっ!」


 ミハルは躊躇いなくトリガーを引く。射程ギリギリにある予測ポイント。そこでなら二発を打ち抜けるはずと。


 あとは発射された中性粒子砲の到達点を見守るだけだ。真っ直ぐに伸びていく黄白色の輝きをミハルは信じていた。


 全ては彼女の推測にすぎない。ミサイルが予想する速度のままであること。進路を変えずに進んだという仮定であったというのに……。


 刹那に視界の彼方で爆発が起きた。そこは狙ったままの場所。重なり合うような二つの爆発痕はミハルが望んだ未来に他ならない。揺るぎない信念を裏切ることなく彼女は一発も逃さなかった。


「良くやった、ミハル! あとは任せろ!」

「お願いします!」


 アイリスはどうしてか笑みを浮かべていた。なぜならミハルが放った一射に対抗心を覚えていたから。だからこそ自分も命中させようと……。


 危機的状況にあっても、胸が躍って仕方がなかった。限られた者にしか見えない景色。まさか自分以外のパイロットがそれを見せつけてくるなんて。


 あのような射撃はごく一部の感覚者にしか不可能だ。明確な判断基準が一つもない状況で、それをやって遂げるなんてことは……。


「私は絶対に外さん! 外せんのだぁぁっ!」


 アイリスはまたも一発で敵艦を仕留めた。既に何発か発射されたあとであったが、正確無比な一撃によって艦船を爆散させている。しかし、四秒という照射ラグは彼女の腕前をもってしてもどうしようもない。


「ええい、もどかしい! 早く回復しろっ!」


 対抗心はアイリスを苛立たせる。次々と華麗に撃墜する様を見せつけたかったというのに、四秒という冷却時間がそれを許さない。


 アイリスは可能な限りの砲撃を放った。全てを一射で撃ち抜いたのだ。しかし、最初の一発が発射されてから、全ての艦船を撃ち抜くのに要した十二秒は長すぎた……。


 宙域には合計二十二発という光速ミサイルが発射されている――――。

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