共闘の様子
ミハルたちが戦線に復帰してから二時間が経過していた。既に十分といえるほど、戦線を押し返している。それを証拠にジュリアの脱出ポッドは救出班により回収されていた。
「ミハル、よくやった! あの愚弟を救ってくれたこと。本当に感謝する!」
「まったく姉馬鹿もいい加減にしてくださいよね?」
「フハハ、焼くなよ。貴様も可愛い妹弟子だからな!」
アイリスは笑顔で語っている。よほど嬉しかったのだろう。まだまだ戦闘は続くというのに、彼女は晴れやかな表情であった。
「まあでも良かったです。この分だとジュリアがいなくても十分にしのげそうですし……」
「油断は禁物だぞ? アイリス・マックイーンが砲撃手であるとはいえ、支援がない状況なのだ。いつ窮地に陥るか分からん。よって貴様は全力機動を続けろ!」
現状は割と優位にある。しかし、アイリスはミハルを戒めるように言った。戦場は僅かな綻びにより、一転してしまうのだと。
了解しましたとミハルが返答するや、
『全機に告ぐ! ゲートから新手の航宙機四万! 続いて艦船が三千五百! 通達した補給は延期! 最優先ターゲットを撃墜せよ!』
司令部より通信が入った。たった今、ゲートから大艦隊が進攻したらしい。
「ミハル、私は艦船を狙う! 照射ラグは自分でなんとかしろ!」
「わ、分かりました!」
重イオン砲であればゲートまで届く。アイリスは早速と狙いをつけている。
「エイリアンが! 地獄へ落ちろォォッ!」
宙を割く一筋の光。それは瞬く間に艦船へと命中し、巨大な爆発を起こす。
ミハルは息を呑んでいた。まだミハルにできることはない。宙域に残る第二陣の掃討くらいしか仕事がなかった。自分も重イオン砲を操れたならと思わず考えてしまう。
「どんどんいくぞ! 進路を教えてくれると助かる!」
「了解!」
まるで水を得た魚のよう。喜々として砲撃を繰り出すアイリスにミハルはそんな感想を持った。かつてグレックが見せた精密な射撃を彷彿と思い出す。爆散させぬよう撃ち抜く技術をミハルは彼から学んだのだ。
「やはり姉弟子なんだ……」
自分よりも確実に精度が高い。ゲートまでは千キロ以上もあったというのに、事もなげに撃墜していく彼女はエースパイロットの資質を誰よりも持っている。同じ真似ができそうにないミハルは感服するだけだ。
程なく大軍がアルファ線を抜けてくる。しかし、ミハルは笑みを浮かべていた。散々見せつけられたあとだ。絶対に負けられないと思う。アイリスが艦船を一撃必中としていくのなら、自身は航宙機を確実に仕留めていくのだと。
何事もなく終わるはずがなかった。この戦いは銀河間戦争である。異なる星系に生まれた知的生命体同士の争い。一つしかない安住の地を奪い合う戦なのだ。
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