予想されるのは……
ミハルたちは持ち場である[βE1・M1・B]で戦っていた。そこは以前と同じ宙域であり、ゲートのど真ん中である。両サイドや上下が抜かれると簡単に孤立してしまう危険なエリアであった。
直ぐ隣はW側となる。そこは401小隊のエース部隊が担当していた。本来ならミハルはそちら側で戦っていたことになる。
まだ序盤であったけれど、多くの敵機が抜けて来ており、ミハルたちは忙しなく戦闘機動を繰り出していた。
「ホント、無人機って役に立たないわね……」
「そういうな。無人機がいるからこそ、俺たちはゲートから距離を取っていられるんだ」
ミハルの愚痴にジュリアが返す。実際のところ彼の話は的を射ている。戦力としては頼りないかもしれないが、無人機部隊のおかげで矢面に晒されることがなくなっていたのだ。
先のマッシュルームにしても迎撃できたのはゲートから距離があったからである。仮にゲートへ張り付いていたとしたら対処しきれなかったことだろう。
『こちらセラフィム・ツー、レンドンが墜ちた。四班は五班と持ち場を交代してくれ』
早速と犠牲者がでたらしい。レンドンは新しく配備されたパイロットであった。ガンマ線の部隊から抜擢されたパイロットであり、乱戦は初体験であったようだ。残念ながら彼は持ち堪えられなかった模様である。
「まだ一時間も経っていないのに……」
届いた訃報にミハルは唇を噛む。先ほどの交戦だけでなく、今現在の大戦も光皇連のパイロットは拙い操縦をしていたけれど、それは自軍にも当て嵌まるのだとミハルは理解した。明らかに全体の練度が低下している事実を彼女は知らされている。
「ジュリア、思ったより厳しい戦いになるわ……」
ふと漏らすようにミハル。彼女はこの大戦の結末まで予想しているのかもしれない。
「そうだろうな。戦力が低下しているのはカザインだけじゃない……」
ジュリアも気付いたらしい。仮にも301小隊に異動してきたパイロット。早々に撃墜されてしまうのは以前と同じような精鋭揃いではないからだと。
ジュリア自身も他人事ではなかった。もしも前衛機がミハルでなかったのなら、今頃は同じように宇宙の塵となっていたかもしれない。
「きっと休憩は先延ばしになる。そのつもりで……」
「そうなるだろうな。お前は無茶をするな。長丁場であると想定して戦え……」
「偉そうに……。言っとくけど私の方が上官だからね?」
そういえばそうであった。ジュリアは今更ながらにミハルが昇進したことを思い出している。隊の全員が以前と同じように接していたから、すっかり忘れていた。
「三等曹士の仰るままに!」
「それよそれ! 敬意を示しなさい!」
こんな今も全開機動だ。やはりミハルの腕前は他と一線を画する。常に狙いは的確であり、彼女に任せているだけで、攻め込まれる事態は避けられるのだ。
「DAC567シュート!!」
此度も彼女は一機も抜かれないのかもしれない。ジュリアはミハルの機動にそんなことを思う。撃墜すべき順番を決して見誤らない。正確無比な射撃もまたそう感じさせる要因であった。
「CFA106チェック!」
僚機の消失に不安を覚えていたジュリアだが、ミハルの機動に思い直している。余計な事を考える余裕はない。適切且つ的確な機動をすべきであり、今は一機でも多く撃ち落とすことが求められることなのだと。
今は僚機の何機が失われたなんて気にする場面ではなかった……。
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