思わぬ侵攻
ミハルは早朝の警備を終え、詰め所で仮眠を取っていた。正午にアイリスが放免されるや、連携飛行をする約束である。寝不足によって酷評されては敵わないと万全の態勢で挑むつもりらしい。
何時間寝ていただろうか。ミハルはけたたましいサイレンとギアの呼び出し通知により目覚めている。何が起こったのか分からなかったけれど、ギアを見るや疑問は解消した。
【ゲートより大艦隊が侵攻。第一戦闘配備】
時間を見ると朝の八時である。ミハルは二時間ばかり寝ていたようだ。今朝の偵察から僅か三時間で本隊が突入してきたらしい。
「嘘でしょ……?」
パイロットスーツのままであったし、詰め所であるから移動する必要はない。しかし、多くの隊員たちは自室へ戻ったはず。まだ出撃命令は下っていないけれど、艦隊が押し寄せて来たのなら、早々に出撃となるだろう。
「まだ無人機部隊で何とかなるのかしら?」
この度もアルファ線は無人機が陣取る。決められた順番に出撃していくのだが、パイロットを必要としない第一航宙戦団と第二航宙戦団は襲来と同時に出撃したはずだ。
程なくベイルが詰め所に飛び込んできた。やはり寝ていたのだろう。髪はボサボサであり、飛び起きてきたとしか思えない。
「ミハル君、早いな」
「私は詰め所で仮眠を取っていたので……」
次々と隊員たちがやって来る。全員がろくに休めなかったはずだ。数時間前に交戦があったばかり。全員が疲れたような表情である。
「全員揃ったな。これより出撃となる。アイリス隊長は残念ながら参戦できないが、それは以前も変わらない。我々ならベータ線を守護できるはずだ」
ベイルの号令があり、301小隊はドックへと走る。各々が自機へと乗り込んでいく。
ミハルはセッティングが終わったばかりの新型機へと搭乗。やってやるんだと意気込んでいる。
「規模は前回ほどじゃないって聞いたし、きっと大丈夫だ……」
二度目の大戦であるけれど不安はあった。始まってしまえば気にならないのだが、出撃前の空気は彼女を緊張させている。なぜなら、この度は結果も求められるのだ。生き残るだけではなく、前回のような戦果を彼女は期待されているから。
『ミハル君、先に出てくれ。その方が段取りが良い』
真っ先に出撃となるようだ。どうやら整備の関係でミハルの機体はクレーンに近い場所へ移動させられていたらしい。ミハルは了解と返事をし、発進デッキへと移動するクレーンの予約を済ませた。
本日二回目の出撃である。発進デッキに到着したミハルは管制からの応答を待っていた。
『セラフィム・ワン、発進してください』
聞き慣れた声が聞こえ、ミハルは一つ息を吐く。いつもと何も変わらない。そう自分に言いきかせて、ミハルは管制に発進を告げる。
「セラフィム・ワン、発進します!」
ミハルの機体が宙域へ飛び出す。二度目の銀河間戦争。もう気持ちは切り替えている。彼女には戦う以外の選択肢はない。
「幾らでも相手になってあげるわ――――」
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