深夜の警備飛行
早朝というより、深夜と呼ぶべき時間にミハルはドックへと来ていた。それは警戒レベルが引き上げられたために警備飛行の割り当てが増えたからである。
既にカザインの艦隊はゲート裏へと到着しており、いつ大戦が始まってもおかしくはない。従来とは違って複数の小隊が警備に入り、全ての偵察機を撃ち落とすようにと任務を受けていた。
「ミハル、警備飛行だけど、今日こそは合わせてもらうぞ?」
ドックに着いたばかりのミハルにジュリアが一言。ミハルはずっと新型機のセッティングをしていたため、隊の訓練飛行を休んでいた。警備飛行の順番が回ってきたのを良いことに、彼は成長した姿を見てもらおうと考えている。
「ああ、ごめんね! 急いで仕上げてたからさ。あんたのフライトは知っているし、問題ないよ」
笑って誤魔化すミハルをジュリアは睨んでいる。幾ら合わせようと頼んでも断られていたのだ。
「しっかし、姉貴は何て下品なカラーリングにしたんだ。金ピカとか主張が激しすぎる……」
「いやでも、見慣れると格好良く思えてくるから。私は本当にこの機体が欲しいって思ってるの……」
マジかとジュリア。派手すぎる黄金のボディが格好良いとはミハルも姉と同じ感性なのかもしれない。アイリスのファッションセンスを知るジュリアには信じられない話であった。
「ホント、くれないかしら? もうX型には乗りたくない……」
「そこまでかよ? これがそんなに動くとは思えないんだが……」
曇りなく輝く機体をジュリアは眺めていた。どう見ても大きすぎる。加えて機動性を損なうような砲身も疑問に感じてしまう。
汎用機であるSF-X型も最新の戦闘機であるのだが、ミハルは実績のある機体よりも、アイリスが開発に加わったプロトタイプ機を希望している。
「さあ行くぞ。夜中も小規模の偵察機が飛来したそうだ。全機撃ち落としたようだから、再び偵察に来る可能性は高いらしい」
ジュリアは密かに偵察機が来ることを望んでいた。ただの警備飛行では努力の成果が見せられない。ミハルに認めてもらうには実戦が一番であるのだと。
二人は警備飛行の交代時間よりも早く、宙域へと飛び出した。
ジュリアに急かされミハルは発進している。かといって彼女も楽しみだった。セッティングはかなり煮詰まっており、実戦にて試してみたいと考えていたのだ。
腕を撫してそのときを待つ。この警備飛行中に偵察機が飛来すること。可能性が高いというジュリアの話に、ミハルはやってやるんだと息巻いている……。
本作はネット小説大賞に応募中です!
気に入ってもらえましたら、ブックマークと★評価いただけますと嬉しいです!
どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m




