煙草
気づいていたけど 気づかないふりをしていた
それが 幸せを守るためだと信じていた
普通を普通として生活するのは難しい
登場人物
姫・・・主人公 35歳 主婦
殿・・・姫の旦那 36歳 自営業
入口に向かって殿が手を振る。
机に向かってきたのは 私より十くらい年下の若い女性だった。
長い黒髪 黒のパンツスーツ 高いヒール。
殿の横に雑に座ると 鞄から煙草を取り出した。
「これ、この前わすれていったやつ」
その煙草を殿に渡した。
煙草は恋の媒
そんな言葉が頭をよぎり 煙草をじっとみた。
「あ。煙草 吸わないですか?」
「そうですね。家では吸ってないので・・・
挨拶が遅くなりました。
初めまして、妻の姫です。よろしくおねがいします」
ありきたりな挨拶をした。
その後は 殿と川村夏菜の掛け合いをただ茫然と眺めていた。
不思議となんの感情もなく ただ 目の前の光景を受け入れている自分がいた。
それぞれがコーヒーを飲み干すと 夏菜が
「これから用事があるから」
と席を立った。
「お忙しいのに、お時間とっていただきありがとうございました」
私は頭を下げて なるべく丁寧に挨拶した。
そして 店をでていく夏菜を見送った。