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魔術侯爵家の幼馴染み  作者: 伏綸子
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王都へ〜中半〜

 アリスに()()()()、貴族馬車に連れ込まれたレンは休みなく疾駆する馬に揺らされていた。

 意外にも馬車内で気不味くなるというレンの不安は的中せず、彼は彼女に王都のことやこれからの予定を訊ねていた。


「今日は何時まで走るんだ?」


「何処まで」では無く「何時まで」、レンは距離ではなく時間を訊ねた。


「予定としてはこの森を抜け町を三つ経由しクラーク領で最も繁栄している町――アテシュヌで家が持つ貴族用宿泊施設(ホテル)までよ」


 だがアリスはレンの借問に距離で答えた。

 それでも問題は無い。

 レンも両親から教育は受けている。村周辺の地理やクラーク領の各町までの距離等。その程度の事はレンも知っていた。


「……と言うと夕方頃には着くのか」

「うん。そんなところね」


 レンの推測し出した答えにニッコリと笑顔でアリスはそう言い肯定した。

 アリスの可愛らしい笑顔に安堵したレンはまだまだ続く長い旅の道程を窓から見よう頬杖をつこうとした時ふと、アリスの言葉が頭を()ぎる。


(ん? 貴族宿泊施設(ホテル)だって?)


 貴族宿泊施設(ホテル)はその名の通り貴族の宿泊施設だ。

 貴族が泊まる施設なので当然、施設内では貴族の行儀や作法が採用されている。

 しかし貴族について全く知らないレンは食べる時のマナーや会話の仕方等をどうすればいいのか分からないのだ。


「おい、アリス貴族宿泊施設(ホテル)に泊まるなんて聞いてない……」

「――あ! レン彼処(あそこ)に羊がいるよ!」


 アリスがレンの言葉を遮りまた満面の笑みでそう言う。

 だが、今回の笑顔は先程と違う。

 目が笑っていないのだ。


「アリス〜? 何誤魔化そうとしてるんだい〜?」


 今度はレンが心の無い笑顔でそう言うのであった。



 〇 〇 〇



 アリスとレンが話している頃アテシュヌ中心に位置するクラーク家の屋敷では二人の男が会話をしていた。


「隣国の動きはどうだ」

「はい、アルベルト様。偵察部隊の報告によると帝国――セヴィオでは兵力の増強の為か徴兵令が出されたとの事です」


 アルベルト様と呼ばれた男はクラーク領の領主でありアリスの父だ。

 今年で四十六歳になるが筋骨隆々としていて歳を感じさせない身体をしている。


 そのアルベルトの話相手は執事長ケレス・ノヴァクレム。数時間前、アリスを馬車に乗るよう促した執事――セトディンの三歳上の兄だ。


 そして彼らが話しているのはこの国の南東に位置するセヴィオと言う帝国についてだった。


「帝国はやはりまた戦争を始めるつもりか……」


 アルベルトの言葉に「また」が付いていたのは言うまでもないが、かの国は過去に何度も隣国と戦争をしている。


 セヴィオ帝国の皇帝――アスク皇帝陛下は帝国主義者で且つ冷酷で残虐な人だった。

 近くの国を滅ぼしては二度と抵抗出来ないよう見せしめに数百人もの民衆が集まる広場で打首、串刺し、火炙り等様々な手段を用いてその国の民を恐怖で塗り潰した。


 その国が再び動き出したのだ。

 センテルズ王国の侯爵階級であるクラーク家もそれは無視出来ないことであった。


「帝国が次は何処と戦う気なのか調べさせておけ」

「承知しました」


 そう言いケレスはアルベルトの書斎を出て行った。

 ケレスが部屋から出ていくのを見届けたアルベルトは窓のカーテンを開け眉を顰めながら深い溜息についた。



 〇 〇 〇



 レンとアリスの談笑(顔は笑っていたので談笑ということにする)の後、馬車は順調に疾駆し早くも一つ目の町を走り越えもう少しで次の町に差し掛かっているところだ。


「……アリス、どうしたの?」

「……な、何でもないわ」


 レンが心配して声を掛けた理由は先程からアリスが両手を股で挟みモジモジし始めたからだ。

 普通の人ならこれは「トイレを我慢しているんだな」と解釈するだろう。


 だが残念なことにレンはあまりこういった場面の遭遇した経験は無い。それによりレンはアリスが何故変わった動きをしているのか分からないのだ。

 それに何よりもその行動が妙に可愛いのだ。

 アリスが可愛いのは誰もが知っている事だが彼女を見慣れたレン以外の人が見たら思わず勘違いし告白してしまうだろう。

 今の彼女はそれ程までに可愛らしいのだ。

 そんなアリスを見詰めていたレンに突然、彼女から声が掛けられた。


「ねぇ、レン? 一旦馬車を停めるよう御者に言ってきてくれないかしら」

「……どうしてだい?」

「……」


 レンの問い掛けに俯き無言になったアリス。

 あまりにも不安な空気になって来たところでレンは訊くことを諦め、御者に馬車を停めるよう指示した。

 馬車が止まると共にアリスは馬車を降り近くの茂みに駆け込んだ。


「あ〜、そういうことか」


 ここでやっとレンはアリスの不審な行動の理由を理解した。

 きっとレンはこれを教訓に今後は女心をもっと学ぼうと思ったであろう。

 出来ればそうであって欲しい。

  二人の会話を少しだけ聞いていた御者はそう思ったのだった……。


 茂みから帰って来たアリスが馬車に乗る。

 それと同時に馬車は再び走り出そうとした。

 だがその時、ゴォォン!! と言う衝突音と共に馬車が急停止する。


「――うわぁぁ!」


 突然の停止にレンは座席から投げ出され向かいに座っていたアリスに飛ばされる。


「きゃぁぁ!」

「うぅ……。」


 頭を打ってしまったレンは失神とまでは行かないが多少朦朧としながらも立とうとする。

 すると、


(うん? なんだ、これ。柔らかい……)


「きゃぁぁぁ!」


 次は先程より長い悲鳴。

 急に耳元で叫ばれ驚いたレンは後方へ尻もちをつく。

 意識が徐々に回復してきたレンは手に残った柔らかい感覚の正体が何なの気になり目を開けると恥ずかしそうに顔を赤くしたアリスがこちらを睥睨していた。


「あ……」

「何処触ってんのよ!」


 アリスの言葉と一緒に平手打ちレンの頬がくらわされたのだった。


 レンはアリスに「外(の様子を)を見に行きなさい!」と怒鳴られ頬に赤い手形が残ったまま馬車を降り、様子を見に行った。

 先程の衝突は車輪が岩にぶつかり起きたものだった様だ。

 幸い車輪は走れなくなるほど破損はしておらず「このまま旅を再開する」との事だそうだ。


 出発する前に乗っていた馬車に戻ろうとするレンだが……。


「気不味いなぁ……」


 嫌な雰囲気になるだろうと確信していて乗りづらかった。

 とは言え他の馬車に乗るのも嫌だと思ったレンは後者を諦めアリスの乗る馬車に乗り込んだ。

 すると……


「お帰りレ〜ン〜」


 明らかに無理矢理な笑顔をしたアリスが「待っていたぞ」とでも言うような口調でレンの名前を呼ぶ。

 まさかの第二波。

 レンも先程のビンタ一つで終わるかと思っていた、これは予想外だ。


「あ、あはは……」


 レンは何かを悟り空笑いをしながら覚悟を決めた……。


 その後はレンの想像した気不味い雰囲気とはかけ離れた怖い雰囲気に囲まれ、レンは「どっちみち嫌な旅になるのか……」と胸の奥で溜息を付いたのだった。



……。

………………。

す、すいませんでしたぁぁ!!

今度こそは一週間以内に仕上げようとしていましたが、ついつい目の前のゲーム機に目が眩んでしまいまた一週間をオーバーしてしまいました…。


と、私事はここまでにしておいて〜。(反省せんかい!)

最後まで読んでくれた皆さん、

読んで頂きありがとうございました!(*´▽`*)


出来れば評価等して頂けると幸いです!


次回は後編に移りますが(そもそも今回の中半って言葉初めて見た)出来れば一週間以内に出そうと思います!

それでは!


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