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P18~P20 約4800文字 いつから共犯者と錯覚していた? の巻

っていうことで始まるよ。


有為子が匿っている脱走兵は金剛院にいる。そして、その金剛院は、高丘親王が植えた栢や名工がたてた三重の塔がある名刹。


ちょっと、よくわからない名詞が出てきたからから調べてみた。


かえとは、常用針葉樹の総称とのこと。

名刹とは、名高い寺のこと


とまあ、そんな感じで金剛院の描写が細かく書かれている。引用すると長くて大変って感じるぐらい。で、やっぱり色の描写も結構ある。白い穂、白い階段、横顔だけが白い、白い木組み、紅葉、黒い洋服、黒い髪、石灰石とか。そして、金剛時の金。


「紅葉は、月の光りに黒ずんで見えた。」←引用


紅い物が違う色に見えるということは何か物事の多面性とか、逆に、本質をとらえられていないということとかを意味してるのかな。って、思った。


あと、溝口が通勤する有為子の前に飛び出してしまったときは、夏だったんだ。明記されていないけど藪蚊がいるって書かれていたから。で、欅が沢山出てきたってことを俺は言ってたんだけど、今回は杉。丸っこい欅と針っぽい杉。なんとなく、静かな、寒い季節の空気みたいなもののなかで有為子が白く輝いてるみたいなイメージをしたよ。


季節や気候を書かなくても藪蚊とか紅葉とかで読者に季節をイメージしてもらえるんだね。


あ、そういや俳句に季語ってものがあったね。小説にも使えそうだね。


本文に戻るけど、事件の舞台というか、どんな場所かの説明があるのね。丸木橋を渡るとこの金剛時というお寺の土地にはいる、という作りになっていてそこからさらにいくと百五段の石段があるというものなんだけど。


溝口が語るには、一度、憲兵が一行の歩みを止めたんだって。そこはかつて、仁王門があったところだとわざわざ言っている。これも意味といいうか目的があるんだろうな。ちょっと、その仁王門の説明がとってつけたというか、思い出したかのように、というか、すこし、文章の流れを止める感じだったんだ。


だから、仁王門調べてみた。お寺を守るために、門のところに仁王という半裸の神様二人組にバディを組んでいてもらってる、ってことらしい。


てことは、神様はかつていたけど、有為子の裏切りの日の時点でその門はなくなっていたから、守り神がいないから悪い奴もは入れるみたいな意味を持たせた?


それとも、いなくなってもなお、憲兵に、一行の歩みを止めさせる効果があったということなのか?


でも、単純に憲兵は寺に隠れている脱走兵に見つからないように一行に注意を促したという意味なのかもしれないし。でもそれなら、わざわざ仁王門があったことを書く必要なくね? とか思うんだよなぁ。


まあ、俺的にはこう思いたいかな。溝口的にはこう感じたんじゃないのかなって。


「神は死んだ。そして、俺の裏切りアイドル、有為子はこの丸木橋を、先に見える石段を、脱走兵に弁当を届けに、そして、たぶんいちゃラブするために通ってたんだ。うん、神は死んだな。こりゃ」


あと、この場にいた有為子以外の者たちを証人と呼んでいる。


「つまり、われわれ証人と一緒にこの世界に住み、この自然を受け容れることだった。彼女はわれわれの代表者として、そこを昇っていったのである。」←引用


たぶん、裏切りの共犯者と感じたんだろうな。溝口は。だからこそのこれ。


「裏切ることによって、とうとう彼女は、俺をも受け容れたんだ。彼女は今こそ俺のものなんだ」←引用


これ、思いこみ激しいよね? でもそれでよし、とも思うんだ。俺の心情的には必死な溝口に報われて欲しいなあって思っちゃう。ただ、フツーに考えたらキモいってのもわかる。特に有為子の立場だったら。


どっちの気持ちも想像できるんだけど、それまでの文章で三島に溝口に肩入れするようにうまいこと乗せられちゃったんだろうな。


それがどんな方法か考えるってことが大事だよね。


まず読者が溝口に共感できるか? 


共感には相手と同じような体験や心境を味わったことがあるかが重要だよね。


そのために、溝口が目にした物の中に景色の描写をしているのかな? だって、出来事を伝えるだけなら欅とか杉とか別にいらないじゃん?


だけど、読者が溝口が見た景色を想像できれば暮らしぶりを想像しやすいし、それができれば溝口も同じ人間だと思えて、共通するところを探しやすくなるって効果があるのかもしれないね。


有為子は溝口のことなんて眼中になかったんだろうけど、溝口視点の有為子の描写と、あのきつい一言で、それも深く印象づけられたよね。


少なくとも普通に、有為子は溝口のことなど眼中になかったというよりは強く残るよね。なろう小説にくらべると、金閣寺って会話文が少ないんだけどキャラをイメージさせるのに会話文を、必ずしも沢山入れる必要もないんだなって思ったよ。


はい。


っていうことで、今回の終わりが近づいてきました。


美しい情景、夜のお寺というめったにない状況、そして、有為子が男を憲兵にさしだすために、騙して隠れ場所から連れ出すからって、溝口はその場にいたっていうだけで勝手に仲間意識を持っちゃったっていうことでしょ? 


そりゃ、これから始まる男の独りよがりが産み出す悲劇の予感がビシバシですな。


んじゃ、またね。

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