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P12~P15 約8000文字 女。汝の名は有為子。 の巻。

ブクマしてくれた方。ポイント入れてくれた方。ありがとうございます。


おかげさまで、この文章がより多くの方の目に触れるチャンスが産まれました。


また、他の読んでくださってる方々も本当にありがとうございます。


底辺も長いので、読んでくださるありがたみが身にしみるようになりました(笑)


今回も楽しんでいただければ嬉しいです。


「この無意味な大きな真暗な現実は、私に与えられ、私に迫っていた。」←引用


長い。ざっくり8000文字。


溝口が人生、官能、裏切り、憎しみと愛、あらゆるものに、直面した事件、それの登場人物でもあり、図らずも、溝口に、とある行動を引き起こさせてしまった女についての説明部分って感じ。


っていうか、溝口、夜中にいつものように、近所の美人看護婦、有為子さんのことを考えてたら眠れなくって、勢いで、夜明け前の月が沈んで暁闇と呼ばれる一番暗いその時間、通勤する彼女を欅の木に隠れて見つめたった。


それだけなら、まだよかったんだけど、思わず自転車に乗ってる有為子の前に飛び出しちゃった。結局、目の前に立ったけど、なにも言えなかった。そしたらきつい一言。


『「何よ。へんな真似をして。吃りのくせに」』←引用


しかも、そのことを叔父にチクられて大目玉。


だから、溝口は、恥を消し去るために、有為子の死を願うことにした。そしたら、有為子、マジで死んじゃった。


で、設定として目を引いたのが、有為子19歳、看護婦、溝口の家から二軒へだてただけのご近所。溝口の推測としてこの当時の有為子は恋人がいたことがない。っていうか、本人に知られたら「ふーん。そんな風に見てたんだぁ」って言われちゃう案件でしょ。これ。


あと、有為子を説明するために使われていた言葉がこれ。


美しい、目が大きく澄んでいる、家が物持、権柄ずく態度、一人ぼっちで何を考えているかわからない、舞鶴海軍病院の特志看護婦。嫉妬深い女から石女と噂


あ、ちなみに権柄ずくって、ネットで意味を調べてみたら、権力で人を押さえつけようとすることなんだって。


これって現代風に言うと、美人のツンデレを期待させる感じってことだよね。


美人は、美しい、目が大きく澄んでいる。


ツンは家が物持で権柄ずくな態度、一人ぼっちで何を考えているかわからない。


デレは、特別に志願して海軍病院の看護婦になったということ。


そして、他の女に嫉妬される女という言葉が総合的に女カースト上位であることを伺わせている。


なるほどねぇ。いい女を表現するのに、他の女が嫉妬しているっていうのはわかりやすいよね。


あと、重要な描写だと思ったのが、これ。


「行動が必要なときに、いつも私は言葉に気をとられている。」←引用


溝口の場合は、吃りゆえ、言葉が上手く出ない、言葉さえ上手く使えれば、っていう希望というか呪いというか、そう言う考えに囚われている。


だけどさ、あくまでも俺は他人事だがから言えちゃうことなんだろうけど、自分の内側と外側が繋がるっていう目的だったら他の手段もあるよね。他の五感を使う、できるのなら第六感も使えばいいじゃない。みたいな。


まあ、あえて言ってみるけど、パンがなければケーキを食べたらいいじゃない、という恵まれた人じゃないと言えないようなことが思いつかないっていうことが溝口のつらいところだよね。


それでさ、これって、俺は一人称だからこそできる、三島が用意した読者に溝口に共感してもらう方法なのかなって思ったよ。吃りのせいで、自分の内側と外側が上手くつなげられないから孤独を肥らせてきたって言ってるわけじゃん? 溝口って。


でもさ、吃りの人がすべてそうなるわけじゃないよね?


そういう読者からの突っ込みを控えさせるのに効果があるかもしれないって思った。


ちなみにだけどこんな風に思ったのは、昔一回、金閣寺を読んで、最近、模写し始めて、この文章の下書きを書いて、その下書きを読んで、やっと気がついたというか思いついたことなんだ。


この連載って模写そのものの効果を伝えられていないなと思ってたんだけど、俺の場合はそこまでやって始めて三島の意図のなかで想像できることがある、っていうことだよね。読んでるときもなんとなく考えていたのかもしれないんだけど、言葉にして人に説明できる状態にまで自分の考えをまとめられるっていうのは模写をしたからだと思う。


それじゃ、話しを本文の方に戻すね。


溝口は行動を、光彩陸離、という言葉で呼んでるのね。俺、意味わかんなかったからネットで調べたら、光が乱れ輝いて美しいさまとか、物事が他と比べて際だってすばらしいさまとかを言うんだって。


ってことで、夜明け前の月が沈んだ一番暗い時間、暁闇に、隠れてりゃいいのに、思わず、有為子の前に飛び出しちゃって、言葉を探していたと。だけど、そこは、言葉じゃなくって、光が乱れ輝いてうつくしい光彩陸離な行動が必要な場面だった、って溝口は振り返ってる。で、言葉を探してる自分の口をこう表現されている。


「暁闇の中に、無意味にうごめいている、つまらない暗い小さな穴、野の小動物の巣のような汚れた無格好ぶかっこうな小さな穴」


ダーク イン ザン ダークネスな、吃りで言葉を出せない溝口の口、そして、ありえたかもしれない光彩陸離で電光石火な行動の対比。


あと、やたらと欅が出てくる。模写してる俺が漢字で書けるようになっちゃうくらいあった。


欅も何かあるのかな。ネットで調べたら、幹を描いておおきな丸をつけたような、葉の豊かな木だった。確かにトゲトゲした感じの杉の木とかとイメージちがうよね。頭に浮かんだときに。


とりあえず、三島は映像をイメージさせる文章で、溝口の、やっちまった感を出そうとしたんだろうな。


 俺は、今、小説を書く練習としてこれを書いてるから、他人事みたいな感覚が大きいけど、これ、溝口に感情移入してたら強烈な部分だろうな。似たような経験があったりとかしてさ。


あと、気になったのはこの部分。


「他人はみな証人だ。省略 他人がみんな滅びなければならぬ。省略 世界が滅びなければならぬ・・・・・・」←引用


ここ長いから引用を省略したけど、6行程度のこの部分に他人って言う言葉が10個も出てきたんだ。

溝口、どんだけ他人を意識してんだよ? ってことなんだけど、ここで溝口は、自分の口を見つめていた有為子の目の背後に他人の世界があって、自分が太陽へ顔を向けるには世界が滅びないと無理ってこと言ってるのね。


溝口は、さんざん暁闇とかさ、目とか黒をイメージさせる言葉を出しながら、最後の方に太陽を出してきた。ここも対比で強烈なイメージが浮かんだよ。俺はろうそくで翼を作って太陽に向けて飛ぼうとしたイカロスのことを思い出した。まあ、俺はイカロスのことは、そこしか知らんけど。


でも、ここで溝口は他人と仲良くなりたいとかではなくて、太陽に顔を向けるには他人が滅ぶことが必要だ、自分の恥を知っている有為子が消えてくれれば自分の恥は消える、そんなことを言ってるんだわ。


これも、溝口の孤独が肥ってしまった結果なんだろうね。他人と繋がる、自分の内側と外側が繋がる体験が少ないから、自分の内側と外側が繋がったっ結果として、第三の存在というか感覚というか考え方みたいなものが産まれるという発想をしにくいんだろうね。


で、そこは孤独を感じている読者は感情移入できるところなんだろうな。


俺も模写することで冷静に考えられてるみたいだけど、昔読んだときは一気に読んだような気がするからそのときはハマってたんだろうな。


それじゃ、今回はこのへんで。


まったねー。

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