003話
こんな話にブクマして下さり、ありがとうございます。
遅筆ですが今後ともよろしくおねがいします。
俺の名はカントス、13歳。
辺境の開拓村ジエンドウで暮らす農家の八男だ。
いや、暮らしていただな。
今朝、村から旅立ち町に向けてとぼとぼと街道を歩いている。
旅立つ訳は簡単に言うと口減らし。
農家の八男ともなると受け継ぐ畑もなく、新たに土地を開墾してするのは正直しんどい。
婿養子になるって選択肢もあるけど俺に釣り合う妙齢女性がいなかった。
それになにより村を出たかったし。
今の村には、もう俺のチートによる手助けは必要ない。
俺が幼い頃から影からこっそりと様々な支援等を行ったので村は裕福になって、俺が居なくても余裕でやっていけるだろう。
という訳で町に向かっている。
まずは辺境の開拓村ジエンドウの隣村リナトへ向けて。
開拓村ジエンドウから隣村リナトまでは歩いて1日、そこから町までも同じく1日。
1日と言っても朝に出発したら夕方にはたどり着くって意味。
太陽が真上に昇った頃に小川のほとりで休憩。
こういう水場は街道利用者の休憩場所になっていて、俺の他に男2人が離れた場所で休んでいる様子。
でも休憩場所といっても施設があるわけでもなく、辺り一帯が踏み固められて草木が生えていない開けた場所になっているだけだ。
昼食はイセカイモンで買ったランチパックのたまごとコーヒー牛乳で済ませて、モンダミンでお口をクチュクチュしてたら離れた場所で休んでいた男2人がこちらに向かってきたので、口内のモンダミンを草むらに吐き出して待ち受ける。
「おまえ1人か?」
近寄ってきた痩男が挨拶もなく訊いてきた。
デブ男は後ろでニヤニヤしてる。
「1人かって聞いてんだよガキ!」
俺が黙っていると痩男が苛立って怒鳴ってきた。
しかたなく大げさに肩をすくめて応えてやった。
「見ればわかるでしょ。他に誰か居るように見えますか?」
「1人だそうですぜアニキ」
痩男が後ろに立つデブ男に声をかける。
「そうか、じゃあヤレ」
デブ男はヤレと言う。
何をヤルのか?
「わかりやした」
痩男をそう応えると腰の剣を抜き放った。
あー、ヤレってそういう事ね。
「死ねガキ」
痩男の突き出してきた剣先を体を捻って躱す。
「なっ、何をするんですか。危ないじゃないですか!」
「あっ、糞ガキが、避けやがって」
横薙ぎに払われる剣も後ろに下がって躱す。
「だから危ないですって、やめてください!」
「っ、糞、このガキちょこまかと」
痩男の振り回す剣を躱し続ける。
「ガキ相手になにやってんだよ!」
デブ男が怒鳴っている。
「い、いえアニキ、こ、このガキすばしっこくて」
「グダってないでさっさと殺れ!」
「は、はい、アニキ」
とは言うものの痩男は剣を振り回し続けてヘトヘトになっている。
猿芝居にも飽きてきたので真面目にやることにした。
「あなたたち強盗ですね」
わかりきった事だけど痩男に確認した。
「そ、そんなの見りゃわかんだろっ!」
「そうですか、じゃあ手加減はいらないですね」
「なっ、手加減だと!?」
その言葉を最後に瘠せ男は魔法でその場から消えた。
「えっ!」
デブ男が驚いた顔でキョロキョロ辺りを見廻している。
「次はあなたです」
「おいガリクソン何処に行った!?」
痩男の名前はガリクソンというらしい。
「ガリクソン! 隠れてないで出てこい!」
デブ男はガリクソンを探している。
「探しても無駄ですよ」
「なっ! お前の仕業か! ガリクソンを何処にやったぁ!」
その言葉を最後にデブ男は魔法でその場から消えた。