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お待たせしました。
街を歩いた俺たちはビターベル家の屋敷に戻り、現在食堂にてビターベル一家と歓談している。
なお、グレン様は帰った模様。
ロイスたちの寄宿舎の話で盛り上がっていると、グレーガス様が突然
「アクト君。君は空間魔法(転移)を使ってみたいと思うかね?」
…は?
「あらあら、あなたったら、突然のことで、アクトさんが驚いていますよ。ふふ」
「おお、すまんすまん。いや、なに、君が(転移)の魔法を使いたいなら、言うといい。私が教えてやるぞ。」
「…グレーガス様が直接ですか?」
「ああ、そのつもりだ。」
「…正直に言って、(転移)の魔法を使ってみたいです。…ですが、グレーガス様が直接教えていただくには…」
「なに、遠慮するな。有能な人材への投資だと考えてくれ。」
「…分かりました。ありがとうごさいます。あの、対価はいくらぐらい必要ですか?」
「いや、必要ない。」
「そう言われましても、困ります。」
「ううむ、そうだな…」
「そういえば、あなた。アクトさんに、あのことを頼めばよろしいのではないのですか?」
「おお!そうだな!流石だ、サーラ!」
あのこと?
「アクト君。君は今冒険者ランクはどのくらいだ?」
「SSランクですが…」
「えっ、アクトさん!SSランクなんですか⁉︎凄いですね!俺なんてまだCランクですよ。」
「ありがとう。…それで、なんの話ですか?」
「それはな、君をSSSランクになってもらう話だ。」
「えっ、どういうことですか?」
「もともと、君に初めて会う前から気にかけていた。若くしてSSランクになった君に興味が湧いていた。この子がうちの国に来てくれたらな、と考えていたら、現実になった。改めて礼を言うよ。」
「いえいえ」
「さて、ネタバラしになってしまうが君の勤務地は冒険者ギルド本部だ。ここに勤めるにはSランク以上の冒険者という条件があるんだ。SSランクでも申し分ないが、SSSランクになるとかなり違う。昇進する速度も違うし、給与も違う。だから、君には是非SSSランクになってもらいたい。」
ええと、
「あの、質問してもよろしいですか?」
「構わないよ。」
「まず、冒険者ギルドってこの国で運営しているんですか?」
「ああ、そうだ。この国から始まり、今では至る所にあるな。」
「ええと、冒険者ギルドは中立と聞いたんですが。」
「中立だ。ちなみにこの国はそもそも中立国だ。」
「次に、SSSランクになる条件です。確か、公爵家2つの推薦が必要と聞きましたが、そこはどうなりましたか?」
「問題ない。2つの公爵家の推薦ならあるぞ。」
「ちなみに、どこの家か聞いてもよろしいですか?」
「ああ、1つ目はネクトルド公爵家だ。君の面接の後、ネクトルド公爵家に打診しておいた。アクト君をSSSランクにするための推薦状を書いて欲しいと。君のことを聞いてネクトルド公爵は喜んで承諾してくれたよ。ああ、そうそう、ネクトルド殿はこう言っていたよ。「息子が世話になった」とね。」
ありがとうごさいます。ネクトルド様。いつかご挨拶に伺います。しかし、それではあと一家はどこだ?
「2つ目はビターベル家、つまりうちだ。…君のことについて調べても問題はなかったし、君と話してみて問題ないと判断した。」
「ありがとうごさいます!」
「さて、他に質問があるかな?」
「…最後に、俺がSSSランクになることでグレーガス様の利益になるのですか?」
「なる。優秀な人材をSSSランクに推薦したという事実はこの家の名誉となる。それに、この国は優秀な人材を求めている。君をSSランクのままにしておくのはもったいないとおもった。」
「わかりました。」
「…さて、納得してくれたかな?」
「はい。」
「よし!それでは夕飯まで教えるとしよう。アクト君、中庭に行こう!そこで教えよう。!」
「はい!ありがとうございます!」
SSSランクの冒険者になる条件
①討伐ランクSSS以上を単独討伐。アクトは学生時代赤竜を討伐済み。よって、クリア。
②公爵家2つの推薦。これもクリア。
③冒険者ギルド本部に来ること。これもクリア。
ちなみに、一番辛い条件が③です。ブレッサム王国に行くには、死の大山脈を越える必要があります。死の大山脈にはSランクの魔物がうじゃうじゃいます。普通に行くのはほぼ不可能です。
読んでくださりありがとうございました。