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奴隷から始まる異世界マネーウォーズ   作者: 鷹司鷹我
紙幣製造編
84/110

明と暗

「それでは、報告させて頂きます。すでに開始から半年が経過しましたが、我々が行っている“サブクレジットローン”は計画通り多大な利益を出しています。貸し倒れも事前に予想されたとおり多数でましたが、しかし担保としていた住宅のおかげで、プラスマイナスでプラスとなっています」


「そうか、それは素晴らしいことだ」


 渡された資料と報告を聞き、オットーフォンは満足げに頷いた。


「ありがとうございます、商会長」


 ファルマンは頭を下げてそう言った。そして『私からは以上です』と言って座った。



「ふむふむ、売り上げは先月比数%増か。素晴らしいな。この調子でいけば、すぐにでもまたミカエル商会に差をつけることが出来そうだな」


 オットーフォンは満足そうにそう言った。その言葉を聞くと、会議室にいた数人の幹部達は「本当にその通りですね!」と肯定する。



「……しかし、よくよく売り上げの内訳を見てみれば、どうやらこの売上増加はファルマンの融資部門だけの力のようだな。他の部門はどれも、むしろ利益を減らしている」


 威圧するような声でそう言ったオットーフォンに、会議室は静まりかえる。


「……わかっているとは思うが、俺は役立たずはいらん。もしもこのまま、売り上げが落ち続けるなら……わかっているな?」


 オットーフォンは幹部達を睨み付ける。その鋭い視線に、彼らは身震いした。


「問題ないですよ商会長。すでに僕が立てた計画が動き始めています」


 静まりかえっていた会議室で、しかしフォートは明るい声でそう言った。


「ほう、本当だろうな? お前はここに来てからと言うもの、“計画中です”とばかり言って、結局何もしていないじゃないか? まさか計画なんて全部嘘で、俺を騙しているんじゃないだろうな?」


「まさか、そんなわけないですよ。だいたい、商会長に嘘をつく勇気なんて、僕にはありません」


「……そうか。まあ何にせよ、俺を儲けさせてくれるのなら何でも良い。しかしそれが出来ないのなら、お前も例外なく……」


「わかってますよ。安心してください」


「……そうか。ならいい。それでは諸君、君たちもファルマンを見習って、我が商会を発展させてくれたまえ」


 オットーフォンはそう言うと、立ち上がって会議室を出て行った。そしてそれに続くように、幹部達も続々と会議室を後にしていった。


 しかしファルマンだけが、何故か一人座ったまま暗い顔をしていた。





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「……やっぱり……まずいぞ…このままじゃ」


 ファルマンは暗い室内で、ろうそくの明かりを頼りにひっそりと、その資料を見ていた。

 それは、彼がフォートから盗んだ計画、通称“サブクレジットローン”に関する最終報告書だった。


「なんでだ……なんでこんな事に……」


「どうかしましたか?」


「!」


 ファルマンは突然に話しかけられたために、持っていた資料を辺りにばらまいてしまった。

 すぐに資料を拾おうとしたが時すでに遅く、自分に話しかけてきた何者かが“絶対に見られてはいけない”資料を手にしてしまっていた。


「……なるほど。これは…まずいですね」


「……フォート! お前か!?」


 ろうそくにてらされたその人物の顔を見て、ファルマンはすぐに気がついた。


「…ッ! 返せ!」


 ファルマンはフォートの手から、その資料を取り戻した。しかし時すでに遅く、その事実はフォートに知られてしまっていた。


「……どうするつもりですか?」


 フォートは、興奮した様子のファルマンに静かに聞いた。しかしファルマンはその問いに答えることはせず、フォートに掴みかかった。


「お、お前の所為だ! お前がこんな計画を考えた所為で……」


「でも、それを盗んで実行したのはあなたでしょう?」


「!」


「言いましたよね? “悪く思うな”、“恨むなよ”って。あんなことを言ったのにまさか、状況が悪くなったら全部人の所為ですか? それって少し、調子が良すぎませんか?」


「……っ!」


 ファルマンは力なく、掴んでいたフォートの服を手放した。そして、床に座り込んだ。


「……俺は……どうすれば……このままじゃ殺されちまう」


「さあ、知りませんよ。自分で考えてください」


ガックリとうなだれるファルマンに、フォートは冷徹に言い放った。



「……お前はどうするつもりだ? やっぱり……商会長に報告するつもりか?」


「ええ、雇われている以上、義務ですからね……と言いたいんですが。やめときましょう」


「!」


「いくら盗まれたとはいえ、この計画を考えたのは僕なんです。そのせいであなたが破滅するのは、正直寝覚めが悪い」


「た、助けてくれるのか?」


「そうですね、助けてあげますよ。ただし、僕が助けたことは秘密にする。それが条件です。いいですね?」


「も、もちろんだ! 助けてくれるなら何だっていい!」



 ファルマンは涙を流し、何度も何度もフォートに頭を下げた。


 しかし、頭を下げ続けていたファルマンは気がついていなかった。自分が頭を下げている相手が、とても邪悪に笑っていたことを。


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