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奴隷から始まる異世界マネーウォーズ   作者: 鷹司鷹我
帝都騒乱編
46/110

黒幕の影

「あ、やっと見つけた。どこ行ってたんだよレイ?」


フォートはレイを見つけて肩を叩いた。しかし、


「・・・・・・」


レイはボーッとして、反応しなかった。


「・・・? おーい。聞こえてる?」


「・・・あっ、え?」


レイはようやくフォートに気がついた。レイの顔は気のせいか、少し赤かった。


「あ、いたのか・・・」


「いたのかって・・・ずっといたよ」


レイはぼんやりとして、フォートを見た。フォートはその様子から、何かただならぬものを感じとった。


「・・・・・・どうかした?」


フォートが心配そうに尋ねると、レイは今まで見たことがないような優しい笑顔で答えた。


「・・・大丈夫だよ。心配するな」


「・・・あっそ」


レイは間違いなく嘘をついている。しかしフォートは、その嘘を追求する気にはなれなかった。それほどに彼女の笑顔は、どこか悲しげだった。





レイは言葉を続ける。


「それより、爆弾の場所がわかったぞ」


「・・・! 本当に!?」


「ああ。さっき見つけた」


「じゃあ早く処理を・・・!」


「でも、それよりも問題がある」


爆弾が見つかったとわかって興奮したフォートだったが、レイの「問題」と言う言葉に困惑した。


「・・・問題?」


「そうだ」


「・・・それってどんな?」


フォートからの問いに、レイは答えた。


「このままだと、シャルーナ達は死ぬ」






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「他に思い当たるところあるか? ちなみに、俺にはない」


パーティー会場から少し離れた場所にいたカップルの内、男が女に尋ねた。

男からの質問に、女は首を横に振る。


「だよな。正直、もう探せるところは探しちまったよ。本当に爆弾なんてあるのか?」


男は「やれやれ」とため息をついた。


男の名はドーン。彼はタキシードの上からでもわかるほどに筋骨隆々で、その顔には大きな傷があった。そして、彼は冒険者だ。


赤いドレスを着た女の方も冒険者で、名前はデリア。ドーンと2人でパーティーを組んでいる。



彼らはご多分に漏れず、今回の依頼を受けた金等級冒険者だ。そして、ケインズが言っていたように“自分勝手”を地で行く自信家達でもある。


二人は会場にやってくるなり、当然のように集合命令を無視し、二人だけで勝手に爆弾を探していた。しかし、すでに数時間あまりが経過していたが、いまだに発見できずにいた。




「そもそも、俺たちに爆弾探しなんて頼むのがおかしいんだよ。冒険者の仕事は戦うことであって、捜し物じゃないんだからな。そんなのは探偵にでも頼めって話だ」


ドーンはこれだけ探しても爆弾が見つからない苛立ちから、仕事に文句をつけた。


自分が出来ないことがあると、すぐに文句をつける。自信過剰の金等級冒険者にはありがちのことだ。


「・・・そうね」


デリアも、不満そうな顔つきで同意する。



二人が金等級冒険者になってからもう5年以上。ベテランの彼らはまさに『典型的な金等級冒険者』だ。


自分たちの力を信じて疑わず、逆に他者の力を信じることがない。他の冒険者の手を借りるのを何よりの恥と考え、凝り固まったプライドを何よりも大切にする。


どこの世界でもそうだが、こういうタイプの人間は、組織行動において最も邪魔となる。


実際、フォートがこの二人に「調べた場所を教えてください」と頼んだとき、この二人はまるで小馬鹿にするように


『調べた場所を調べてどうするんだ? 調べる物が違うぞボク?』


と言い放った。






「そもそも気に入らねえのは、この依頼を取り仕切っているのが“シャルーナ”とかいう最近になってようやく金等級冒険者になった野郎だって事だ」


ドーンは不満そうにぼやく。彼にとっては、最近になってようやく金等級冒険者になった格下のシャルーナの指示に従うことは、屈辱だった。


そして、それはデリアの方も同じだ。


「・・・どうする? まだ探す?」


デリアはドーンに尋ねた。元々この依頼にさほど乗り気でなかったデリアは、もう仕事を中断して帰りたくなっていた。


「そうだな・・・このまま見つからなけりゃ、最悪俺たちも爆破に巻き込まれちまうしな。そんなのはごめんだ」


「じゃあ、帰るのね?」


「でもなあ、帰ったら帰ったで、後でなんて言われるかわかんねえしなあ・・・それに、爆弾のせいでギルドが帝国に吸収されたら困る」


「じゃあ、探すの?」


「うーん・・・でも死にたくねえしなあ・・・かといって、怒られるのも吸収されるのも嫌だし・・・」



「うーん」とうなって悩み続けるドーンに、デリアの我慢は少しずつ限界に近づく。二人は長い間パーティーを組んでいるが、ドーンの悩み癖のせいでデリアが不機嫌になることはしょっちゅうだ。


「・・・いい加減に決めてよ。探すの? 帰るの?」


「うーん・・・」








「あ! 良かった見つけた!」


悩んでいたドーンと、それを苛立ちながら見ていたデリアの所に、フォートが走ってやってきた。


フォートは息を切らせながら二人に向き合った。


「なんだ、またお前か」


やってきたフォートに、ドーンはあからさまに小馬鹿にしたような態度を取る。


「どうした? また探した場所を教えて欲しいのか? 無駄なのに」


「そんな・・・ハア・・・事より・・・」


フォートは息を落ち着かせる。そして、顔を上げた。


「爆弾が見つかりました」


「!」


二人はフォートの言葉に、耳を疑った。


「見つけた? お前がか?」


「ええ。正確に言うと、僕の連れが」


「・・・・・・」



コイツはほんのさっきまで、他の冒険者達に探した場所を聞いて回っていて、自分はろくに探してもいなかったはずだ。にもかかわらず、これほどの短時間でコイツは見つけた。


「・・・どうやって見つけた?」


ドーンは尋ねた。どうやったかは知らないが、自分より格下だと思っていたフォート達が爆弾を一番に見つけた。そのことは、ドーンのプライドを激しく傷つけていた。


しかし、ドーンからの問いにフォートは言い返す。


「そんなことを聞いてどうするんですか? 無駄なのに」


「! ・・・てめえ」


フォートに悪気はなかった。急いでいるフォートには言葉を選ぶ余裕がなかったのだ。


それゆえ運が悪くも、まるでフォートが、先ほどドーンが言った小馬鹿にした発言を、そっくりそのまま帰すような形になってしまったのだ。



しかし慌てているフォートは、機嫌を悪くするドーンに気がつかずに、話を続ける。


「そんなことよりも! 問題があるんです!」


爆弾をすでに見つけたにもかかわらず、「問題がある」などとほざくフォートに、ドーンの機嫌は一層悪くなる。


「あ? 爆弾は見つかったんだろ? 何も問題ないじゃねえか」


「そうじゃないんですよ! それより重大なことがあるんですよ!」


「重大なこと? なんだよ」


「説明はあとです! それより今は、すぐに向かわないと・・・ついてきてください!」


フォートはそう言って、走り出す。状況を理解できてなかったドーンとデリアも、慌ててフォートの後を追った。


「おい! どこに行くんだよ!?」


「エヴォルダ教の帝都支部です!」


「は!? あっちは別働隊が行っているんだろ!? なんで俺たちまで・・・」


「完全に誤算です! 大誤算です! 戦力分析を完全に誤っていました! いや、それどころか僕たちは本当の敵の存在にすら気がついていなかった!」


フォートは走りながら叫んだ。その必死さから、どれだけ危機的状態にあるかがよくわかる。


「どういうことだ!? 本当の敵!? 何が何だか説明しろ!」


「僕もまだ全貌がつかめているわけじゃないんです! でも、一つだけ言えることがある!」


走りにくいタキシードを脱ぎ捨てながら、フォートは言った。


「エヴォルダ教は利用されていただけだったんです! 黒幕は・・・別にいた!」


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