暴露
「とりあえず僕たちの役目は帝国のパーティーに参加して、中で爆弾を探すことだね。聞いた話では、僕たち以外に6人の金と白金の冒険者がパーティーに潜入するらしい。そして、潜入しているシャルーナさんと他2組がエヴォルダ教の帝都本部を攻撃、教祖の身柄を確保する。ここまではいい?」
フォートとソーマは、二人が冒険者として滞在している間借りているホテルに帰って、作戦の確認を行っていた。
フォートからの確認に、ソーマは少し不思議そうに尋ねる。
「それなんだけどな、なんで今すぐ捕まえないんだ? 今すぐ行って爆弾を仕掛けさせなきゃいいだけの話だろ?」
「いや、聞いた話ではもう爆弾は設置されてるみたいなんだ。今すぐ行ったら最悪、遠隔操作できるタイプならその場で爆破されかねない。ヤケクソでね。だから、僕たちはパーティーに潜入して速やかに爆弾を発見、処理しなきゃならないんだよ」
「なるほどな。ところで、発見はいいとして、処理はどうするんだ? 俺には無理だぞ?」
「そこは君、簡単な話だよ」
フォートは自信ありげに答える。
「へえ、どうやるんだ?」
「見つけたら即、爆弾を抱えて海の方に走るんだ。そいで、海にポーン!」
「・・・・・・」
ソーマはあきれたように頭を抱える。しかしあきれていたのは、フォートにではない。
フォートはこんな時につまらない冗談を言う男ではない。つまり、この作戦が間違いなく最善の方法だと、フォートは確信しているのだ。
そしておそらく――これまでの経験から言って――フォートの確信は大抵正しい。ようするに、自分たちはこんなアホな方法で爆弾を処理しなければならない。彼はそのことにあきれたのだ。
「ぶっちゃけちゃうと、爆弾処理の専門家でもない僕らが出来ることと言ったらそれくらいだよ。ま、持ち運んでる最中に爆発しないことを願っているよ」
フォートの「願っているよ」という言葉に、頭を抱えていたソーマは「ん?」と反応する。
「ちょっとまて、俺が爆弾を運ぶのか?」
「え、だって君のほうが身体能力高いでしょ?」
「確かにそうだが・・・」
『頼みかたってもんがあるだろう』と思ったが、彼は押し込んだ。しかし、フォートは頷いてわかった風にする。
「大丈夫だよ。僕も一緒に行くから。死ぬときは一緒さ!」
「・・・・・・俺は死にたくないんだが」
「まあこの話はこれくらいでいいでしょ。それで、次は潜入の仕方なんだけど、パーティー会場自体には簡単に入れる。ギルドのコネでね。ドレスコードに沿った服も貸してくれるらしいよ」
「それはありがたいな。パーティー用の服なんて持ってねえし」
「ただ、パーティー会場には男女一組でしか入れないみたいなんだ」
フォートの言葉に、ソーマは顔をしかめた。
「男女一組・・・」
今度はあきれてではなく、本気でソーマは頭を抱えた。
彼には一緒にパーティーに行ってくれるほどに親しい相手などいない。相手を今から見つけるのは、爆弾を見つけて処理するよりも遙かに難しそうだ。
それに対して、フォートは特段悩んでもいない風だった。
「ま、これについてはお互い大丈夫だね」
「・・・・・・は?」
フォートのこちらの意思を汲まない発言に、ソーマはあからさまに機嫌を悪くする。
「お互いってどういうことだ? 馬鹿にしてんのか?」
「・・・・・・ん?」
「『ん?』じゃねえ。お前はどうやら女には不自由してないみたいだけどな、俺の方はそうもいかねえんだよ」
「えーっと・・・話が見えないんだけど?」
本当にわかっていないかのようなそぶりを見せるフォートに、いよいよソーマの怒りは爆発した。
「だーかーら! 俺には一緒に行く相手がいないって言ってんの! バカにすんのも大概にしろよな!?」
「いやいや、そうじゃなくて。ほんとに君はなにを言ってんの?」
フォートは不思議そうにソーマを見て、そして
「僕の相手は君だよ?」
そう言った。
フォートの爆弾発言に、しばらく固まっていたソーマだったが、しばらくしてようやく意識を取り戻した。
「・・・・・・そっち系?」
最初に口から出た言葉はそれだった。そっちというのは、もちろんあっちのことだ。
「いやいや、そうじゃなくて」
「お前が女装すんのか?」
「いや、しないから」
「・・・ああ、オカマ」
「でもない。確認だけどゲイでもないからね?」
「・・・じゃあなんで」
「はあ?」
今度はフォートがあきれたようにソーマを見た。
「だって君、女の子でしょ?」
やっとこの話しかけたあ~




