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奴隷から始まる異世界マネーウォーズ   作者: 鷹司鷹我
帝都騒乱編
37/110

悲壮

「シャルーナさんの・・・・師匠?」


僕は驚いて聞き返した。しかし、シャルーナさんの答えは変わらなかった。


「そう。私の師匠」


「それは・・・ご愁傷様です」


師匠がテロの主犯になるなんて、それはなんとも・・・



「気を遣ってもらわなくていいわよ。あの人ならきっといつかはこんな事をするだろうって思ってたしね」


「さようですか・・・」


シャルーナさんは笑っていたが、その本当の心境はわからない。


自分の師匠がテロを起こそうとしているなんて、それがどんな気持ちなのかは僕にはわからない。それでも少なくとも、いい気分でないことは確かだ。


シャルーナさんはほんの先日、長年の仲間を失ったばかりだ。にもかかわらず、次は師匠を“失った”。その心境は一体いかほどの物だろう。


「お誘いがあったのは二日前、私がエバンスとブレイのお墓に行っていたときよ。そこに師匠の使いが来て、『弟子のお前に手伝って欲しい』って言づてられたの」


「二日前・・・最近ですね」


「そうね。でも、それより問題なのは爆破の時間よ。なんと5日後だって言うじゃない。聞いた時は内心、かなり慌てたわ」


「2日前から5日後って・・・・・・あさってじゃないですか!」


「そう。だから私は急いでギルドに連絡に行ったわ」


「・・・え、ちょっと待ってくださいよ。なんでギルドなんですか? ここはどう考えても帝国でしょう?」


僕の素朴な疑問に、シャルーナさんはクスリと笑った。


「ええ、普通ならそうね。でもこの件は普通じゃないの。なにせ、事件の首謀者は私の師匠、ギルドでも有数の権力者なんだから」


「・・・ああ」


なるほどね。それは、帝国に知られるわけにはいかないな。


帝国とギルドの間の仲はそれほど良くはない。と言うのも、帝国からしてみれば一人で兵士何十人分の強さを誇る冒険者達を囲うギルドは、いつ反乱を起こしてもおかしくない危険分子だからだ。


帝国は、もし何かあればすぐにでもギルドを国有化してやろうと狙っている。



「そんな帝国に、ギルドを徴発する大義名分を与えるわけにはいかないでしょ? だからこの件は水面下で、こっそりと、金等級以上の実力者だけで処理されることになったのよ」


「なるほど・・・話は大体わかったんですけど、やっぱりわからないのは、なんで僕たちが呼ばれたかです。まだ僕たち銀等級ですよ? 間違えてませんか?」


僕は受付嬢に確認した。


「それは・・・」


受付嬢はまた、シャルーナの方を伺うように見る。


「私が頼んだからよ」


「シャルーナさんが?」


「ええ。だってあなたたち、間違いなく金以上の実力があるんだもの。今は人手も足りてないし、使わない理由はない。違う?」


「それはそうですけど・・・」


それでもやっぱり、規則を破るのはどうかと思うんだけれど・・・・


そんな僕の様子を見て取って、シャルーナさんは提案をしてくれた。


「それならこう言うのでどう? 今からあなたたちは金等級(仮)。それでもし、この依頼を成功したらそのまま金等級にランクアップ。これならいいでしょ?」


「そんなこと出来るんですか?」


「出来るわよ。ねえ?」


シャルーナさんはそう言って、受付嬢の方を見た。しかし受付嬢は答えに困っているように見える。

本当は出来ないだろそれ。


受付嬢はしばらく困っていたが、観念したように


「・・・はい・・・出来ます」


と答えた。





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「あの・・・ちょっといいですか?」


僕は部屋を出て行こうとするシャルーナさんを呼び止めた。


「なに?」


「えーっと・・・なんて言うか・・・変わりましたよね。雰囲気とかが」


初めて会ったとき、シャルーナさんはなんというか・・・今ほど明るくはなかったように思える。仲間を失ったのだから当然ではあるが、だからこそ、数日でのこの変わり様は、かえって心配だった。


シャルーナさんは最初、僕の言葉の意味を図りかねていたようだったが、すぐにわかってくれたようだった。


「・・・・・・そうね。変わったわ。いえ、変えたの。そうでもしないと、とてもじゃないけど耐えきれなかったから」


「・・・・・・」


『耐えきれなかった』その言葉の重みがずっしりと僕に襲いかかった。彼女はやはり僕の心配通り、大丈夫などではなかったのだ。



「でもね、くよくよしてられないじゃない。死んだ二人の分も、私は生きていくだけよ」


『生きていくだけ』その言葉もやはり、僕には何か悲しげに思えた。


でも、僕にはたいしたことは出来ない。優しい言葉をかけたり、そんなことしか出来ない。


でもきっと、それは逆効果だろう。だから僕は、彼女に向かって言う言葉が一つしか見つからなかった。



「もし、この依頼が終わって僕たちが金等級になったらチームを組みませんか?・・・といっても、僕たちは時々しか仕事に行けないんで、たまにしかチームを組めないんですけど・・・」


僕からの提案を聞いて、シャルーナさんは驚いたようだった。

しかし、すぐに笑って


「そうね、考えておくわ」


そう言って、部屋を出て行った。


先日気がついたのですが、第31部「作戦」をアップし忘れていました。誠に申し訳ありません

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