26(アドバイス)
――次の日は朝から俺はウォーライフ三昧、もう通常の対戦は出来なくなるかも知れない。悔いが残らないように。70戦くらいした。その日の戦績は8千キルを超えた。ダイは11回。様々なステージで対戦した。仲間のチームには歓迎されるが、敵チームはクレイジーモンキーの名に恐れをなしてる。
広いステージでは敵と出会うのに時間が掛かる。
「出会いがねえ、出会いがねえ」と口走ってる。
夜になり、ログアウトする時にスマートモンキーが現れた。
「久しぶりだな、スマートモンキー。晴れてサイバーブロッサムの社員になるよ」
『やっぱり、ダンナは飛び抜けて強いからでさあ』
「お前ともお別れだな」
『今後ともお世話になりやすぜい? セレブリティプレイヤーと案内AIは一蓮托生でさあ』
「そうか。また、よろしくな」
『明日はボス専用の筐体が届く予定でさあね。解らない事があったらいつでも呼んでくだせえ』
「じゃあ落ちるから」
『へい、ゆっくり休んでくだせえ』
――次の日の昼にインターホンが鳴る。モニターを見ると、男性3人、女性1人が居た。
「サイバーブロッサムの方ですか?」
「こんにちは、サイバーブロッサムの吉田といいます。契約書とボス専用の筐体をお持ちしました」
俺はドアを開ける。
「中へどうぞ」
「先に契約書を。よく読んで下さいね」
「筐体はどこに置きますか?」2人で運んできた。
「重いでしょう? すみませんが奥の和室に置いて下さい」
「分かりやした〜」
俺はソファー座り、契約書の隅々まで目を通す。ネット通信料もサイバーブロッサム持ちになる。“フラッシュ”……、これは怖いシステムだな。あとは問題はない。俺はボールペンで名前を書き、印鑑を押す。
「ありがとうございます」
「あの、ウォーライフ以外のゲームはしてないんですか?」女性社員が聞いてきた。
「今のところウォーライフだけですね、モータースポーツとかあればやるかも」
「モータースポーツはサイバーブロッサムの企画段階で止まってます。何か良い案はありませんか?」
「徹底的にリアリティーを追求するのは? ゴーカートなんかじゃなく。実車はクラッチをツインプレートにするだけでもペダルは重くなる、フライホイールを交換するなんてもってのほかだ。ドリフトするにもシム増しや機械式のデフを入れても、いずれは多板プレートの摩擦材がヘタって交換する事になる。ドリフトの“キッカケ”はクラッチ蹴りが基本だ。リアがクネクネと揺れるだけではドリフトとは呼ばない。シートをフルバケットにするのは勿論、シフトノブやステアリングを本物の車と共用にしたり。そういうVRゲームなら売れるんじゃないかな?」
女性社員はメモを録ってる。少しは貢献出来たかな?




