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25(クラッキング)

――ナードどもは帰って行った。俺は蛇口から水道水をグラスに注ぎ飲む。二日酔いの頭痛は痛みが増していた。


 頭が冴えてたら、もっと凹ませるようなことを言えたのに!


 迎え酒に昨日のコーラ割りを飲む。少し落ち着いた気がする。


 俺の携帯電話が鳴る。サイバーブロッサムの小泉さんだ。


「もしもし、どうしました?」

『昨日の話ですが…………』


 まさか、なかった事に!?


「破談ですか?」

『いや、1ヶ月前倒しにしてもらえませんか?』

「来月から新設ステージのボスをやるって事ですか?」

『はい、お願いできないでしょうか?』

「良いですけど急にどうしたんですか?」

『いや〜、アメリカの本社がクラッキングに遭いましてね。株価を操作されてしまいまして』

「株価回復に一役買うって訳ですか」

『新設される火星ステージはサイバーブロッサム肝いりでして、ボスに一定ダメージを与えるのと撃破したプレイヤーには賞金を出すシステムです。勿論、龍熊さんにもギャラと成功報酬を用意してますよ』

「いくらですか? それとボスの操作方法は?」

『ギャラは年俸1億円でどうでしょう? 操作方法は通常のキャラにプラスアルファって感じです』

「拘束時間はどれくらいですか?」

『3日間に最低10戦以上。対戦する時間は龍熊さんの自由で。1回のボス戦は15分で、申込み受け付けに20分です。長く持たせられれば成功報酬1分につき1万円です。3年契約でどうでしょう?』

「小泉さん、凄い権限ですね。その条件を呑みます」

『一応、日本支社の社長をやってますから』

「えっ!? 社長さん!?」

『私もゲームが好きでしてね。やりたい事で稼ぐ、悪い事じゃない』

「好きこそ物の上手なれ。俺は蟻よりキリギリスです。バイオリンの腕を認められた」

『良い心掛けですね。では明後日に部下の者が契約書を持って行きますから。一応、面通ししたいのでテレビ電話にしますね』

「はい」


 俺はテレビ電話ボタンを押す。携帯電話の画面に30代くらいの男性が映る。


『ほほう、なかなかイケメンですね』

「いえいえ、小泉さんはその若さで社長ですか、凄いですよ」

『ハハハ、ありがとう。謎のイケメンボスキャラとして売り出そう』

「アハハ、やめて下さいよ。ただの田舎の芋ですよ」

『では明後日に契約書とボス専用の筐体を運びますから』

「はい、分かりました」

『それでは、グッドライフ』ピッ。

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