02(イカれた親)
――しばらく熱中してると、母が部屋に入ってきた。
「保育園に行く時間よ。用意して」
「今日は休む」
「何バカな事を言ってるの! ゲームがしたいだけでしょ!?」
カチッ。ゲーム機のスイッチをオフにされる。
「あ”ー!」
「さっさと、ご飯を食べなさい」
「……ネグレクト」
「なんですって!? もう一度言ってみなさい!」
「……キチガイ」
「そういう言葉ばっかり覚えて! もう知らないわよ!」
「ほんとの事じゃん」
それから1日もブロック崩しを続けて、気が付いたら朝だった。
居間に行くと両親が口論をしていた。
「アナタがあんな物を買ってくるから、二谷はおかしくなったのよ!?」
「お前の教育がなってないだけだ!」
「こうなったら“先生”にお願いするわ!」
「先生ってただの霊媒師じゃないか! またあんな霊感商法に騙されに行くのか!?」
「もう! 煩いなー!」
「二谷……いつから聞いてたの?」
「どうでもいい。腹が減った」
「二谷、よく聞いてくれ。建谷と一緒に柔道クラブに行かないか? そしたら、好きなだけゲームをしていいから」
「ほんとに!? 行く行く!」
「アナタ!」
「良いじゃないか、ゲーム以外に熱中出来るものがあるのは」
――それから土曜日の19時から21時は柔道クラブの時間になった。しかし、観たいアニメも観れず、ゲーム機は母親が管理して満足に出来なかった。
俺は腹が痛いと言ってサボろうとするが、トイレに逃げ込んでも、「早く出てきなさい! 先生を待たせちゃ悪いわ」と言って30分粘っても親は待ち構えていた。これが世間体を気にするってやつか。
サボらしてくれた日には泣いて喜んだ。兄の携帯ゲームを涙を流しながらプレイした。この幸福感は何事にも変えがたいものだった。
何度も柔道クラブを辞めたいと訴えたが、「自分で決めた事は最後までやり通さないとダメだ」と、両親は意味不明な持論を展開させる。
子供心に思った。両親は親失格だと。
――俺は小学生になると下級生をいじめるようになる。エアガンで顔を撃ったり、トイレに閉じ込めて打ち上げ花火に火を着けて投げ込んだり、ストレス発散しないと自分が壊れそうだった。
弟は柔道をやらない。だから、包丁で刺してやろうとした。
未遂で終わったが、両親は俺を責め立てる。人格否定されてるだけにしか思わなかった。
1つ年下の幼馴染み、伊藤翔と翔の家でテレビゲームをするのが精神安定剤だった。
翔にはハンデを貰わないと勝てない。
負けると悔しいが、負ける理由を考える。解らない。