18(女って解らん)
――20分後、結果は27対11で勝利した。俺の戦績は20キル1ダイ。
フィールドに戻ると、またスマートモンキーが待っていた。
『やりやしたね。200連殺してたハリーを4回も殺るなんて』
「間抜けな死に方したけどね」
『金銭がかかる以上、チートを使ったら何らかのペナルティがあるでしょうや。相手のペースに引き込まれない、ブレない戦い方やしたね』
「そうか、ありがと。一旦落ちるから、またな」
俺はログアウトする。目がチカチカする。これにも慣れなきゃな。
ピンポーン。チャイムが鳴る。防犯モニターを見ると、ゆう子さんだ。
「こんにちは〜」
「今出ますね」
ドアを開ける。
「二谷さんって本当にクレイジーモンキーなんですか?」
「ああ、さっきイギリス人プレイヤーと対戦して初黒星ですよ、アハハ」
「観戦してました。凄く強いですね。敵陣に突っ込む戦い方はクレイジーセオリーなんて呼ばれてますよ」
「案内AIのスマートモンキーに色々教えてもらったからね」
「えっ!? 案内AIが付いてるんですか!?」
「付いてるってか、皆に付いてるんじゃないの?」
「選ばれた人にしか案内AIは付きませんよ。過去のネトゲの戦績とかを元に割り振られるってインフォメーションに出てましたよ」
「そうなんだ、知らなかったな」
「今は休憩ですか?」
「うん、まだ慣れなくて」
「ある意味凄いですね、フフフ」
「まあね……仕事は休み?」
俺のバカ! 不躾な事を聞いてしまった。
「夜勤ですよ…………でもそろそろ退社かな?」
「辞めちゃうの? 勿体ない」
「水商売なの」
「ウォータービジネス!?」
「なにそれ、フフフ。兄が高校生の時に通り魔に殴られて右腕が使えないの」
「そりゃ災難だね」
「兄の為に少しでも頑張ろうとしたけど、昼の仕事はどうやら元本割れね。真っ当に働くわ」
「ウォーライフで稼ごうとしたの!? いくらニートの俺でもそこまで楽観的じゃないよ?」
「ニートなのね」
「あっ、子供の頃に強制労働させられて……、トラウマなんだ」
「ありがちな理由ね」
何、急に怒りっぽくなるんだよ? 女って解らん。
「……鍛えてやる。俺がゆう子さんを稼げるようにしてやる!」
「もういいの。ありがたい申し出だけど。二谷さんの戦いぶりを観て悟ったわ。私には向いてない、無理ってね」
「そうか、諦めて軌道修正するのも大切だからね」