10(ウォーライフ)
車の運転を兄と代わる。
「全く……タイヤの山が大分減ったぞ?」
「廃タイヤならネットで安く買えるよ」
「ガソリン代だって」
「お巡りが来る前に帰ろうよ」
「えっ!? 警察来るの!?」
兄は急いで車を発進させる。
「どう? どこも壊れてないでしょ?」
「最初の約束を覚えてるか?」
「何だっけ?」
「1日、スカイラインを借りたら、1日、働くって」
「今日はほんの30分じゃん。サーキットで本格的にドリフトする時に1日借りるよ」
「それはダメ」
「じゃあ働かな〜い」
「バカ野郎……」
――俺のアパートに着く。
「柔道が労働労働って言ってるけど、いずれ働く事になるぞ?」
「さて、何の事やら。じゃあお休み〜」
俺は自分の部屋に入り、フライドチキンを食べる。ちょっとヌルい。骨なしだけど6個も食べられないな。半分は明日に取っておこう。
俺はベッドで横になるが、なかなか寝付けない。円書きの興奮が止まらない。対戦ゲームとはまた違った快感だ。
疲れたから、対戦ゲームをする気力はない。じっと目を閉じる。眠ったのはおそらく4時頃だろう。目が覚めたのは11時だった。
朝イチ、一発目の対戦。ログインすると、画面に『来月をもって配信サービスを終了とさせていただきます』と書かれていた。
いつか来るとは思っていたが、来月で終わりか……。高校生の時からあるゲームだ、仕方ない。他に替わる物を見付けないとな。
その日はたくさんのユーザーと戦った。底辺のEランクから自分と同じSランクまで。100戦くらいした。
――次の日、原付バイクで近所の家電量販店へ行く。新しいネトゲを探しに。
何だか店内が騒がしい。
「何か珍しい物でもあるの?」
「お客様、VRゲームですよ。1台どうですか? 来月から配信予定のゲーム、“ウォーライフ”がセットですよ」
「それはどんなゲームなの?」
「戦争モノで対戦型シューティングアクションですよ」
面白そうだな。
「すぐに配信終了にならないよね?」
「メーカーのサイバーブロッサム社はバージョンアップを含め、5年保証ですよ。どうです?」
「まずは体験してみないとな〜」
「では、お客様、こちらへどうぞ」
俺はマッサージチェアみたいな椅子に案内されて、ヘッドマウントディスプレイとオモチャの銃を渡された。
俺は椅子に座り、ヘッドマウントディスプレイを装着する。
「どうやって操作するの?」
「念じて下さい」
「念じてって!? あっ! 動いた」
鬱蒼としたジャングルのステージだ。チュパカブラみたいなモンスターが次々と襲い掛かって来る。俺はモンスターの攻撃を避けながら銃で撃つ。
「脳波を読み取り、フィードバックする仕組みなんですよ」
「ほう、面白いな」
体験版が終わる。
「お客様は筋が良いですね。体験版をクリアしたのは、お客様が初めてですよ」
俺は装備を外す。
「いくら?」
「筐体とソフト、税込40万円です」
「高いな」
「筐体のレンタルなら月に6800円からです」
「一括キャッシュで買うよ。その代わりに安くしてよ?」
俺はこのウォーライフに懸けてみようと思う。




