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電脳戦乙女ウイルスブレイカーズ  作者: ライナまさよし
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一五頭を持つ八岐大蛇

 スマホの通信速度は速い。数秒でウイルスがいるとされた動画サイトについた。見たくもないエロ広告が大量にあるいつもの動画サイトだった。ミズキの目からはおかしなところは確認できない。アマテラス他ウイルスブレイカーズ四名は円陣を組み手を合わた。


「電脳の深淵に眠る悪魔よ、その不浄なる身体からだを我が前に表わせ!! ウイルスサーチ!!」


その言葉とともにミズキのスマホの中には一面の草原が広がる。その中には十五の首を持つ蛇が存在した。


「これは、八岐大蛇やまたのおろち!!」


アマテラスがそう呼んだ蛇は目は赤く体色は緑、スマホからだから縮尺はわからないがブレイカーズ達の身長から推測すると全長三百メートルほどはあるのではないか。奴はその巨体を這わせ徐々にアマテラス達に近づいてくる。


「みんな来るわよ。最初から全力で行くんだから!!」


「わーい、つよそー!!」


「あなたの心を打ち抜いちゃうから!!」


「これも鍛錬、全力で参る!!」


アテナとアマテラスは防御態勢で身構える、はしゃぐアーサーにそのちょっと後ろでぶりっ子するドロシー。みんな違ってみんないい。


「キシャーーー」


最初に三本首がアマテラスに向けて襲い掛かった。アマテラスはジャンプでこれを回避し斬りかかる。


「必殺!! 打ち首獄門!!」


「こんなデカブツをどう獄門するのよ!!」


ミズキがツッコミを入れる。正直、ミズキには現状を飲み込むことができなかった。アマテラスの起動、アーサーの襲来、そして撃破、別のユーザーとの出会い、謎のサイレンと緊急警報。すべて一日の、しかも学校から帰ったあとという短い時間の間で起きている。

説明も理解不能でわけがわからなかった。だとしても、いつものつまらない日常が彼女らウイルスブレイカーズによって幾何か面白くなっているのだ。もう半ば理解することは放棄しわけわかんないけどなんかすごいといった感情で見ていることにしたのだった。


 アマテラスが一刀両断しようとした首は斬れていなかった。代わりにアマテラスの刀に小さいヒビが入っていた。


「え? なによこれ!!」


突然の刃こぼれに動揺するアマテラス、次の瞬間、蛇の口から炎のようなものがアマテラスめがけて吐かれた。即回避しようとするが間に合わない。そこに割って入ったのが甲冑の美女、アテナだった。


「大丈夫? 無理はしないでね」


「このくらい大丈夫なんだから!!」


心配するアテナにアマテラスは強がりを言う。震えた声で。


「研究所での訓練の時は刃こぼれなんかしたことないのに」


そう小声でつぶやいた。


「物理攻撃が聞かないなら私の出番ね。萌え萌えキュンキュンマジックでやっつけちゃうんだから!!」


自信満々でドロシーは杖を構え地面に魔法陣を描くと小声でぶつぶつと呪文を唱え始めた。魔法陣と三角帽がよく似合う雰囲気だ。


「煉獄の炎よ、我に対峙せんとする、不浄な魔を祓え!! 業火招来波エクスプロージョンウェーブ


燃え盛る業火の波が八岐大蛇に命中した、と思われたが当たる直前真ん中の頭の先端部分にある赤い宝石のようなものに吸収されてしまった。


「は? ふざけんじゃねぇぞクソ野郎!? ぶっ殺すぞ!!」


驚き慌ててアイドルキャラも忘れるドロシー。怒っていられるのも束の間。先ほどより威力の高い業火招来波がアマテラス達を襲ったのだ。


「みんな!! 伏せろ!!」


アテナが大声で注意を促したその直後、四人の頭上をとんでもない熱気が通って行った。


「なんなのよ!! ドロシーのとは桁違いじゃない!!」


不平を言うアマテラス。


「とてつもなく硬い上に相手の魔法を吸収して能力強化するなんてすごいよね!!」


アーサーは変わらず戦いを楽しんでいるようだった。


 一方、アマテラスが八岐大蛇の特徴から弱点を探そうとする。どうしたらいいのか、頭をひねって必死に考えていたその時だった。


「なんか将棋みたいだよね。堅牢な囲いと敵の駒を使って戦うっていうのが」


ミズキがボソッと言った言葉が停滞していたアマテラスの思考に電流がはしる。どんな囲いにも必ず急所はある。急所になっていそうな場所はどこだ。そして答えが出た。


「ありがとうミズキ。これであいつを倒せるかもしれない」


「え?」


そういうと皆を集めて作戦の説明をすると皆が快諾した。


「まあ、ほかに試す方法もない。君の策に乗とするか」


アテナがそう言うと皆、そうだねと納得した。


 ついに作戦開始の時となった。アーサーが大ジャンプして赤い宝石が付いた首を大剣でたたき落とす。


「でりゃあああ。これでも喰らえ!!」


奴の体には傷一つ付かなかったが体は地面へと叩き付けられた。そこにアテナが矛をつかって首を押さえつけた。


「今だ!! アマテラス!! 宝石をたたき切れ!!」


「風術秘剣 大山風おおやまじ


強力な斬撃と共に草原の雑草の根を抜き、吹き飛ばすようなとんでもない暴風が奴の赤い宝石を粉砕した。


「これで魔法が届くはずよ!! やっちゃいなさいドロシー!!」


あとはぶりっ子魔術師に全てを託した三人。彼女は静かに詠唱を始めた。


「煉獄の炎よ、我に対峙せんとする不浄な魔を祓え!! 業火招来波」


灼熱の業火が八岐大蛇の身を焦がしつくした。魔法に弱く、その弱点を補うために宝石を付けている。アテナにはそれが瞬時に理解できた。そしてミズキの何気ない一言がその考え方に至らせたのだった。

ものの数分で巨大な八岐大蛇は黒焦げ大蛇になった。タレをかけてご飯の上に乗せよう。使用者ユーザーを含めた全員で得た勝利を噛みしめ、皆帰るべき場所に帰って行った。

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