外出、魔導士との邂逅
外、街灯が、車の前照灯が夜を照らした。繁華街の夜は明るい。屋台のラーメンのいい豚骨スープの匂いがミズキの中枢を刺激した。スーパーまでは二十分程度の道のりだった。だが、空腹なミズキにはその時間は無限に感じられた。
「あーーー、お腹減った!!!!」
ついにミズキは痺れを切らし大声で叫ぶ。夜とはいえそこそこの人通りのある繁華街で。アマテラスは周囲の目が痛かった。だが、ミズキやアーサーは気にする様子がない。
「大勢の人の前で叫ぶなんて恥を知りなさいよ!! 大学生のすることじゃないわ!!」
「そうかな? 仕方ないと思うなぁ、僕もたまにやっちゃうし」
アーサーは自分が批判されてるような気分になったのかアマテラスに反論した。いや、反論というかミズキを擁護した。
「あなたはまだガキじゃない!!」
「なにぃ!!」
アーサーは剣を抜き怒りを露わにした。アマテラスもそれに応えるように剣を抜き構える。
「ちょっと待ったーーーーーーー!!!!」
すかさず、ミズキが止めに入った。この前のようにファイルが消えたりしたら大変だ。当たり所によってはスマホが動かなくなるし画像一枚一枚の安否すらミズキにとって死活問題だ。アレなしでは生きていけない。食事以外のおかずに使う。
そんな会話をしながら歩いているとようやくスーパーが見えた。スーパーの名はディナーちから。ちょっと強めの地震が来たら崩れてしまいそうな、そんな繁華街には似合わない木造の店だった。店に入ると若い男性アルバイトの人と店主とみられるおばあさんが一人。
ミズキはいらっしゃいませの言葉に対して軽く頭を下げると当初の目的通りひき肉ともやしをかごに入れレジに持っていこうとするとアーサーが語り掛けてきた。
「あの飛騨牛ステーキ、半額だって!! 買っていこうよ」
「無理無理。あんた私の財布の中見たでしょ」
そんな会話を交わすと男性アルバイトがこちらに近づいてきた。彼は不思議そうにミズキを見つめるとスマホの中に映るアマテラス達を発見した。それを不思議そうに見つめる。
「あの、なんですか?」
スマホをまじまじと見られて不審に思ったミズキは質問する。
「それ、もしかしてウイルスブレイカーズかな?」
「・・・!?」
言い当てられたミズキは驚いた。自分以外にこんな奇怪なものについて知っている人間がいることに驚愕した。
「なんで知っているんですか?」
「知っているもなにも、僕も持っているからね」
彼は自分のスマホを見せる。そこには白髪で黒い三角帽をかぶって杖を持ったいかにも魔女のような小柄な少女と重そうな甲冑に身を包む金髪長身の大人っぽい女性が一人いた。
「二人とも、自己紹介を」
「はいはいはーーーい。私から行きまーーーす。私はドロシー・グラン!! アイドル魔法使いやってまーす!! 気軽にドロシーちゃんってよんでね!! よろしくおねがいしまーす!! きゃは!!」
きゃは!! の部分でウインクを決めた。甲高くかわいい子ぶった声。ミズキは頭を抱え苦悶の表情を浮かべた。こいつは無理だ、合わないと。
「ああ、弐式で一番面倒な子に会っちゃったわね」
がっかりするアマテラス。
「きゃーーーアマテラスちゃん久しぶり。あえなくてさみしかったよう!! 元気にしてた?」
アマテラスは心底面倒な顔をしてスルー。いつものツッコミも入れずにスルー。
「アマテラスはドロシーって子とあったことあるの?」
「まあ、ちょっとだけね」
「やったーーアイドルだーー!! 僕も戦うアイドルになりたい!!」
アーサーが歓喜する。数十分前には食って遊んで寝るだけの生活をしたいなどとのたまっていたのにこの変わり身。子供は影響されやすいものだ。
「は? ブスがアイドルになれるわけないじゃん。調子乗んなよクソガキ」
とても小さくて聞き取りにくかったが低くどす黒い声、もはや画面を見なければ誰が言っているかもわからないような、そんな声だった。もちろん声の主はドロシーである。
「あーえっと。そろそろ自己紹介してもいいか?」
退屈そうにしていた甲冑の女性が話し始めた。
「私はアテナ・ブライド。参式だ。気軽にアテナと呼んでくれ」
ミズキ含め一同はよろしくっと軽く一礼したその時だった。突然、ミズキたちのスマホから大きな音でサイレンがなり始めた。
「インターネット上、大型動画サイトmuutubeより巨大なウイルス反応を検知。繰り返す、インターネット上、大型動画サイトmuutubeより巨大なウイルス反応を検知。ウイルスブレイカーズは至急討伐に向かうべし」
そのサイレンは日常を打ち壊す徴収だった。
「え? これは?」
わけわからないという顔をしているミズキ。
「説明はあと!! 少し出かけてくるわ!!」
アマテラスもアーサーも武器を構え現場に急行した。皆ウイルスを撃破するために黙々と向かうのだった。